煙草に火をつける。煙が夜風に吹かれて遠くへ行くのをぼうっと見ていた。あのとき。もしもあのとき、ああしなければ。ああしてれば。もう考えても無駄なのにいつまでも考えてしまう。「考え事か?」お前にしては難しそうな顔をしてる、と俺の顔を覗き込んだ兄弟が言う。そう言われて我に返った。ふざけんなと鼻で笑って、短くなった煙草を足で消した。「仕事行くぞ、兄弟」後ろで、おうと声がした。『たそがれ』
10/1/2023, 1:55:38 PM