『すれ違い』をテーマに書かれた作文集
小説・日記・エッセーなど
気付いたら、私たち
すれ違いばっかだったわね。
喧嘩してばっかりで。
私たち、お互いに正しいと思っているものだからね。
黙りこくるあなたと、
しゃべり続ける減らず口の私。
ちょっとぐらい、何か言ってよ。
私のこと愛してるだとか。
俗な言葉でもいいから。
あぁ、もう。
嫌になるわ。
勝手に、死なないでよ。
あなたの言葉が足りないの。
置いてかないで。
ねぇ。先にいっちゃうぐらいなら私も一緒に、
いきたかったわ。
何かあったなら相談して欲しかったな。
辛かったのに、力になれなかった。
こんな事実だけが私に残って。
いつも、いつも。
私になんにも言わないで、
先をいくんだから。
しょうがない人だ。
私はその後を着いてくことしか出来ない。
きっとあなたは着いてったら怒っちゃうかな。
でも置いていったのが悪いんだからね。
来世も愛してるよ。
おやすみ。
なんて言って、意識を手放した。
部屋に死体が2つ。
突然、
仲良しだと思っていた子から
思わぬ、心ないメールが。
私なら、こんな言葉の選び方はしない。
縁を結び直したい気持ちと悲しい違和感の間で、
ぎこちなさが拭えなくて。
何もなかったように、忘れたように、
関わる事もできる。だって、大人だし。
でも、しない事にした。
きっとあの時、私と彼女はすれ違ったんだと
そう思ったら、腑に落ちたから。
学生時代の話になる。
通信のスイッチをオンにして画面を閉じた3DSを持ち歩いていた。それにより遊ぶ事ができる【すれ違い広場】と言う機能が俺は好きだった。その影響だろうか?自分に似せたMiiを拘り抜いて作ったのは、今となっては懐かしい思い出である
誰かとすれ違う度、3DSのランプが黄緑色に光る。それを見る度に俺はドキドキした
(新しい人とすれ違えたかな?)
けれど現実は、よくすれ違うMiiばかり。そんな中でも新しいMiiとすれ違う事が出来た瞬間は嬉しかった
俺は中学・高校と、どちらも電車通学だったから多くの人とすれ違う機会があった。学校へのゲーム機の持ち込みは当然ながら禁止されていた。
校則違反とされる持ち込み物のチェックも抜き打ちで行われたりしていた
けれど、何としてでも3DSを持ち込みたかった俺は、自分のお小遣いで3DSが入るサイズの弁当箱を1つ買い、3DSを弁当箱の中に入れて学校に持ち込んでいた。また、弁当箱の中から3DSがぶつかる音がしない様、弁当箱の中心の3DSの四隅にはスポンジを詰めて偽装した。それが母にバレた時は「何しに学校に行ってるの?」と、呆れた顔で言われたのを覚えてる。それに対して俺は大きな舌打ちをした(母さん。あの時はごめんなさい)
ちなみに持ち込み物チェックだが、朝練による空腹から休み時間に早弁をする生徒もいた為、弁当箱が2個有っても疑われる事は一度も無かった。無論「弁当箱を開けろ」なんて言われる事も無くやり過ごせた
そんな3DSだが勿論ゲームも出来る。ちなみに俺が好きだったのはポケモンだった。3値(種族値・個体値・努力値)と性格補正を知った事で、ポケモンの奥深さにのめり込んで、俺が提案した同じ方法でゲーム機を持ち込んでいた仲間と対戦や交換に明け暮れた
やがて時が経ち、その3DSは今、レコチョクでダウンロードした音楽を聴くだけの機械になっている。サービスが終了し、今はもう新しい曲をダウンロードする事が出来ない為、少し残念に感じる時もある。ただ、気分転換に今でも使ったりする
そんな3DSもバッテリーが寿命なのか、最大まで充電しても直ぐに充電が無くなってしまう。
すれ違い 作:笛闘紳士(てきとうしんし)
推し活。
それこそが私の生きがいであり、
存在価値なのです。
私は2次元にしか推しを作りません。
スマホでもなんでも
オリジナルグッズが作りやすいからです。
推しは多ければ多いほど
私を満たして幸せにしてくれると思ってます。
推しカラーは常に身につけるし、
推しが嫌いなものは私も嫌いです。
私の中心は推しなんです。
推しのために毎日生きているのです。
こんな私の考え方は
家族に否定されていると思っていました。
お金使いが荒く心配していてくれた両親。
好きなことにお金を使うなと言われたと思った私。
私の勝手な解釈で
すれ違いを起こしてしまったんです。
その事を知ったのは
両親が亡くなった数日後でした。
家が遠くて
お葬式に出られなくてごめんなさい。
車運転出来ないし、
電車も無くて、
徒歩で行こうとも考えたのですが、
姉に止められてしまいました。
涙が溢れました。
自分の推し活のせいで、
両親を何度も傷つけてしまったと思いました。
初めてこの泣いているところを
部屋に飾ってる推しに見られたくないと、
同じ空間に居たくないと思いました。
一度全てのグッズを押し入れに入れて
戸を閉めた時、
本当に私は何にも大切に出来ないんだと
また涙が溢れました。
この涙を拭ってくれるのは
もう姉しかいません。
立ち直るまで多くの時間がかかりました。
夜になると
夢の中で両親が私の喉を潰しに来ます。
怖くて怖くて
毎晩姉に泣きつきました。
そんな時姉が読み聞かせてくれた漫画。
その一言目に私は惹かれました。
なので姉はその一言を
いつも最後に言ってくれます。
"Good Midnight!"
と。
魔法のような言葉です。
この言葉を聞くと
両親が微笑みながら
話しかけてくれる夢をみれるのです。
私は当分推し活ができないでしょう。
推しは悪くないのですが
今はお金すら見たくありませんね。
なので姉が頼りなのです。
姉が居なくなったら
私…私……。
頭がおかしくなっちゃいそうです。
すれ違い
何時からだろうね…
あんなに、一緒に過ごす事が、当たり前の事だったのに…
気が付くと、お互いに、何となく、距離を置くようになっていた…特別、喧嘩した訳でも、別に好きな相手が見つかった訳でも無いのに…同じテレビを見ているのに、一緒にいる感覚も無くて、ただ、同じ空間にいるだけ…
本当は、もっと近くで、もっと抱き合っていたい…この、気持の距離を、早く無くしたい…
すれ違い
よくあることよね、思い違いで。
考えすぎで、気をつかいすぎて、すれ違ってはじめて自分との価値観の違いを感じたり。
あの時、手をつかみとっていたら、とか。
後悔はしたって時はもどらないからもう考えるのはよそう。
「すれ違い」
トンカツを作ろうと思っていたらパン粉が無かった
調理中に気付き、慌てて帰宅途中にスーパーに寄っているタイミングの良い夫に「パン粉買ってきて!」とお願いした
無事パン粉を購入した夫は「パン粉どろぼうでも出たか〜?」と冗談めかして笑う
実際はパン粉の在庫が分かりにくい収納が問題なのだが、いい返しが思いつかず「絵本が一冊書けそうなどろぼうやね」と返事をした。その発言はスルーされそのまま会話を楽しんだ
夜寝る前にふと
「今日“パン粉どろぼう”の話してたでしょう。パンどろぼう知ってて言ってたの?」と気になっていた事を聞いてみた
「何それ。知らん」
知らずに言ってたの凄いね
"すれ違い"
今までで何人の人とすれ違ったんだろう。
単純な疑問。
すれ違い
「あのさ、今でも、きっとこれからもRKさんが大好きで大好きで、大好き以外に変わる事なんてないから、、、少しでも、嫌なこと、悲しむこと絶対にしたくない。だから今も自分の中で決めた、RKさんへのルールと、自分が我慢できる自分の気持ちは、間違いじゃない、、、って、そう、ずっと思っている。」
「あのさ、今までも、きっとこれこらも、一緒にいて、ずっとすれ違ってばっかなんだろうね、、、私達、、。
いっつも優しいし、私のことばっかり気にしてくれるし、、あぁ、私のこと大切にしてくれてるなーとか、本当に好きなんだろうなーとか、好きな人の自分への気持ちが伝わってくるのってさ、二人の気持ちとか、二人だけが理解できるような、今まで二人で過ごしてきた時間とか、目に見えない何か、幸せなもので、つながっているような、、、、あぁ!ね、これが幸せか!とかって、一人で思い出し笑いとかして、周りにドン引かれても、全然平気で、のろけれたりして、、。
でもね、うちらは、二人で居る間中ずっと、二人で、すれ違って過ごしてると思うんだ、、。
つきあいだした最初は、お互いに相手を優先して、相手の気持ちばっか
なって、同調して、同じ気持ちで、同じ時空の中ですごしている、二人だけの時間を、どんな手を使っても、壊したくなかったし失いたくなかった。
悲しい事も楽しい事も、二人で落ち込んで二人で笑って、どんなときでも相手の気持ちを考えて、優先して、同調しで、絶対に嫌われないように演じれる自分に、なんの抵抗もなかった。相手に合わせてコロコロ変わる自分の気持ちを、このまま、疑う事なく受け入れさえすれば、これからも二人は、一緒にいれて、二人がこの先、すれ違うことなんて、絶対にないし、、そもそも、全く考えたことすらなかった。
なんでも大事にしすぎて、壊れないように、失わないように、怖がって、二人の大事な大事な、絆みたいな、、なんかすごく大事な、機会?チャンス?みたいなのから離れていってる気がする。ケンカとか、意見の違いとか、自分のプライドとか、自分の、そういうの、好きな人に理解してもらえるように一生懸命になることとか、間違っても、そういう自分をころして、抑えて、他人の気持ちに同調するようなことなんかじゃないと思うんよ、、。
すれ違いってさ、、、
互いが触れ合うほど近くを、それぞれ反対方向に通りすぎること。
時間や位置などがずれて、会えるはずが会えないこと。
議論などで論点が噛み合わないこと。
って意味があってね、どうすれば好きな人どうしが、こんなふうにならないですむか考えてみたらね、すっごい簡単で単純で、当たり前のことで、でもこれってすごく大事なんじゃない、、って、今更ながら再認識したんよ、だから、、
“私はあなたが好き”
だからあなたの気持ちが知りたい。
“私はあなたが好き”
だから私の気持ちをおしえたい。
時には、二人の気持ちが、、、あなたと、私が、例えば好きなものとか違っても それが私の好きな人の気持ちなら、尊重するし、理解できる、、と思う。ってか、そうしたい、、!!
これからも、良い感じですれ違って、一緒に乗り越えていこうね‼
私はあなたとなら、どんなにすれ違っても、絶対に離れたりしないから、
ね、、大丈夫。」
なりすけ
すれ違い
かけがえのない仲間だった。
だけど、やりたいことはそれぞれ違って。
それぞれ違う方を向いて、走って転んで、すれ違って。
それぞれ別の方向に、確実に進んで行って。
きっともう戻らなくても、進み続けて成功できる。
それでもあの時が、仲間が、懐かしくて大好きで。
我儘なのかもしれないけれど、また一緒に歩みたい。
戻る必要は無い。いつか進んだ先で待ち合わせしよう。
外国の小説で、「賢者の贈り物」というのがあって、わたしはこの物語が好きだ。
妻は旦那のために、綺麗な長い髪を旦那の懐中時計に付けるチェーンに換えて
旦那は妻のために、大切な金の懐中時計を鼈甲の櫛に換える
お互いが相手のことを思ってとった行動で、プレゼントは使ってもらえなくなったけれど
それはそれで、とてもいい思い出になるなぁと思う。
自分のことを優先して、相手が自分の都合のいいように立ち回ってくれるだろう
なんて思って日々を過ごしていたら
この物語とは真逆な結末になって
もしかしたら一生後悔するかもしれない
…賢者でありたいなぁ。
◇すれ違い◇
小説
迅嵐
「はぁ〜〜〜……」
ベットに飛び込むや否や、俺は深いため息をつく。
最近、俺は迅に会えていなかった。
俺が日勤で、迅が夜に暗躍。迅が日勤で、俺は夜に広報活動。片方が起きてる時には片方が寝ている。こういうことが何日も続いた。会えなくなって一週間くらいは、まぁこんなものかと深く考えなかった。しかし既に1ヶ月は経過している。
会いたい。話したい。
些細なすれ違いがここまで精神にくるなんて知らなかった。
寝なければ良いのでは、と一瞬考えもしたが、そうなると次の日がつらい。寝不足で倒れたりなんてしたら仲間にもボーダーにも迷惑がかかる。それは何としても避けたかった。
「…どうすればいいんだ」
メールはしている。ちゃんと返事も返ってくる。でもそれだけでは物足りない。俺はちゃんと会って話がしたかった。
どこで何をしたのか、何を食べたのか、何を見たのか。
迅に笑って聞いて欲しい。小さなことでも話して欲しい。
「俺こんなに欲張りだったんだな…」
段々と瞼が重くなり、身体が動かなくなる。睡魔に抗えるはずもなく、俺は呆気なく意識を手放した。
ふと、目を覚ます。隣で人の気配がした。
「………じん?」
「あれ、起こしちゃった?ごめんごめん」
そこには会いたくて仕方のなかった迅がいた。少し疲れた様子の彼は俺の頭を優しく撫でる。
「…………あいたかった」
俺の頭を撫でる手がぴくりと止まる。俺は再び眠気に襲われ始めていた。
「………ずっと、はなし…たくて、あいたく…て、…」
伝えたいことはいっぱいあるはずなのに、俺の口は素直に動いてくれなかった。
すると、頭に乗っていた温かな手が頬に滑り落ちてくる。
「…おれも、会いたかった」
まどろみに溺れながら、俺は深い眠りにつく。
最後に感じたのは、額へのやわらかな感触だった。
貴女と、貴女の大好きだったあの女性の間には、時折すれ違いがありましたね。それはどちらかが言葉足らずだったり、情報の行き違いなどでしたが、貴女はそのたびに心を痛めたものでした。
今のご伴侶とは、そのようなすれ違いはあまりありませんね。
それは、貴女が昔よりも自然に、ご自分の考えを必要な時に表現できるようになったからでしょう。
貴女はしっかり、成長しています。前に進んでいます。
ですから、「何もしてこなかった」「私の十年は無意味だった」などと、仰らないでください。
すれ違い
心の温度のすれ違いで簡単に関係を断ち切ってしまえる私は馬鹿者なのだろう。
「ボクはキミを幸せにできない、、、」
その言葉最後に彼は画面の中から出てきてくれなくなった。
彼とは16歳のときバレエの留学先で出会った。
「はじめまして。九条天です。」
「はじめまして。〇〇です。天くんって呼んでもいい?」
「いいよ。日本人の子がいると思わなかったから、すごく心強いよ。」
「こちらこそ。天くんがきてくれて嬉しい。」
初めての話したのは、初めて天くんを見た次の日のレッスン終了後だった。
最初の印象は体が小さいけど、踊りは大きく、とても綺麗な顔立ちをした青少年。
明らかに人より努力してきたのだと分かった。
天と出会ってから、あっという間に天の留学期間が終わりに近づいていた。
最初はお互い探り探り話していたものの、今では休日に出かけたり本音を話す仲になっていた。
天の帰国まであと1週間。私も天も17歳になった。
「ねぇ、天。」
「どうしたの?」
こっちを振り向いた時、天は確実に私の本音を全て見抜いたように見えた。
「ボクから話してもいい?」
少し緊張した面持ちで天は私に問いかけた。私は少し嫌な予感がしたものの、天の表情をみたら咄嗟に頷いていた。
「きっと〇〇はボクがバレエダンサーを目指してここに留学してきたと思ってるよね。でも、実は全く違うんだ。」
私からしたら否定したい事実だった。
正直これまで、日本のバレエを習ってる男性の中で明らかに天はレベルが違った。
繊細な踊りと確かな演技力。プロになるには充分すぎる実力だからである。
「ボクはある人のために、日本で、いや世界で1番のトップアイドルになる必要がある。」
天がアイドル、、、その言葉を聞いた瞬間、すぐに天がアイドルとして歌い踊る姿が想像できた。
すごく嫌で切ない感情に全身が支配される。
『アイドルになる。』
それは私に別れを告げているようだった。
天は別次元の人になってしまうのだ。
「でも、〇〇と同じ未来を見たいんだ。」
全く想像もしてなかった音が脳に響く。
「え、、」
「〇〇と一緒に暮らして、普通の家庭を築いて、、、」
声が聞こえなくなった。俯いていた顔を上げると、天の頬に一筋の涙が伝っていた。
「天、、、?」
「ごめんね。ボクがキミを幸せにしたかった。」
「私、今幸せだよ。天と一緒に踊れて、他愛もない話をして、将来に思いを馳せて、、、」
「ねぇ、天。私に少し時間を頂戴。そうだな、、3年。3年もあれば天も私も、、、」
「そうだね。分かった。キミを待ってるよ。」
天は全てを捨てたと同時に何かを失う覚悟をしたような顔をして頷いた。
それから2年後、天は『TRIGGER』のセンターとして日本を代表するアイドルとなっていた。
天はやはり昔とは違う笑顔でファンを魅了していた。
さらにそこから1年、、、プロのバレリーナとして主役として初めての舞台に私は立っていた。
私が演じたのは『ジゼル』
ジゼルは心臓が弱いが踊るのが好きな女の子だ。婚約者の浮気が原因で亡くなってしまうが、森に住む男性を踊らせて殺す幽霊から婚約者であった彼を守る話である。
バレエの物語の中でも悲劇的な話である。
終演後舞台裏に懐かしいが逞しくなった背中が見えた。
「て、、ん、、、、」
「〇〇久しぶりだね。すごく美しかった。」
「天もすごくかっこよくなったね。」
「ありがとう。」
沈黙が続いた、、、、、、
「〇〇、いままでありがとう。〇〇のおかげでここまで頑張れた。」
「え、、、どういう、、こと、?」
「ボクはキミを幸せにできない、、、」
「ちょっと待って、、!私ずっと、!!」
天は私のことを抱きしめた。顔は見えないが隣で泣いているのだけは分かった。天は私に話す隙も与えず、何も言わずに暗闇に消えていった。
「さよなら〇〇。愛してるよ。」
幻聴だったかもしれない。微かに耳に届いたその言葉は今でも耳元で響いている。
そして今日も私の家のテレビでは天の甘い声が響いている。
すれ違い
出会ったはずなのに
少しのズレで
もう見失ってしまった。
もう一度すれ違ったら
私は声をかけるだろうか?
すれ違い
私のことが好きだったのか
選択肢がなかったからなのか分からない
呪いのメールが友達からごめん送られたって送られるくらい
は?って最悪の暴言が出そうだったよ
地獄なのはお揃いだね
恐ろしい終わりだね
堕ちて堕ちて落ち着いたね、大人になった
綺麗な薔薇が棘を増やした
そんなすれ違いをしたね
秋の良く晴れた空の下。
気配を殺しながら、遠くにいるウサギを狙って矢を放つ。
シュッと音を立てて放たれた矢は、寸分の違いもなくウサギを射抜く。
久しぶりに弓を使ったが、腕は落ちてないようだ。
この村を出て冒険者として過ごした十年間、弓なんて触りもしなかった
けれど今朝持った瞬間、まるで自分の手の様に弓を扱うことが出来た。
子供の頃とは言え、昔取った杵柄というのはバカにならないらしい。
「バン様、そちらはどうですか?」
妻のクレアが、魚が入ったバケツを持ってやってきた。
彼女の顔を見るに、今日は大漁のようだ。
「こっちも何匹か狩ったぞ。
冬を越すには十分だが、まだ狩るか?」
「やめておきましょう。
これ以上狩ると生態系を壊すことになります」
「そうだな」
俺はクレアの言葉に従う。
確かに狩り過ぎはよくない。
子供の頃に調子に乗ってウサギを狩りまくったことがるんだけど、次の年ウサギが出なくなったんだよな……
それで村の大人たちにメチャクチャ怒られたのを覚えている。
でも次の春、森でウサギが遊んでいるのを見てほっとしたっけ。
ウサギが繁殖力がすごくて本当に助かった。
「じゃあ、狩りは終わりにしよう。
いい天気だから一旦休むか?」
「はい、そうしましょう」
俺たちは手ごろな石を見つけて、向かい合って座る。
空を見上げれば、遠くまで雲一つない青空。
こんな綺麗な空を見上げると、胸にこみあげて来るものがある。
「なんかさあ、こういう風にノンビリしていると故郷を思い出すんだよね」
「故郷…… ですか……」
「こうしてウサギを追いかけて、魚も釣ってさ。
このまま居眠りしようものなら、故郷が夢に出てきそうだよ。
忘れがたき『ふるさと』だな」
「はあ」
クレアは困ったような顔になる。
アレは何を言うべきか迷っている顔だ。
俺もクレアの立場だったら、そうなると思う。
クレアは逡巡したあと、決意を決めた顔で俺を見た。
「あの、バン様。
ここはバン様の生まれ故郷――『ふるさと』ですよね?」
「そうだな」
「それなのに『ふるさと』の事を思い出すんですか?」
「不思議なことにな」
「大丈夫なんですか、それ。
医者に相談しますか?」
「大丈夫だろ。
幸運なことに『ふるさと』はすぐそこにあるしな」
俺は、クレアの懸念を笑って流す。
どれだけ心配性なんだよ。
「それより、クレアの事が聞きたい。
クレアの生まれた場所は、海の向こうって言ってたよな。
どんな場所なんだ?」
「うーん。
表現が難しいのですが……
森が多いですね」
「ここみたいな感じか?」
「そうなんですけど……
なんというか、木の種類や密度が違うので受ける印象が違うんですよね。
ここの森は開けて明るいですけど、私の故郷は薄暗い印象ですね」
「はー、森にも種類があるんだな。
知らなかったよ」
冒険者としていろんな場場所にいたが、まだまだ知らない所があるらしい。
知らない場所があると知ると、冒険者の血が騒ぐ。
ちょっとワクワクしてきた。
「いつか行こうな」
「え?」
「お前の故郷だよ。
冬を越して、雪が解ける春になったら冒険にでよう」
「……遠いですよ」
「冒険のし甲斐があるな」
「まったくもう」
俺たちは一緒に笑い合う。
ひとしきり笑った後は石から立ち上がる。
村にある家に戻るためだ。
俺は一歩踏み出す前に、もう一度空を見上げる。
人は言う、『世界は空で繋がっている』と……
クレアの故郷も、この空と繋がっているのだろうか?
俺はクレアの故郷に思いを馳せながら、俺たちの家に戻るのだった
すれ違い、通り過ぎ、気付いて振り向いた時、運命は動き出すのだろう。
彼にとっての運命は、たった一人だった。
多くのすれ違った人にとって運命だった彼も、たった一人の為に狂わされた一人だった。
叶わなかった思いは、満たされなかった未練は、澱のように降り積もる。
狂わせて、狂わされて、運命になれなかった喜劇と、運命になってしまった悲劇を見つめながら、思いの欠片は降り積もる。
暗い暗い湖は、こうして閉ざされてゆくのだろう。
それだけの、話。
END
「すれ違い」
「好きだよ」と「愛してる」
天秤に掛けても バランスは取れなくて