愛し合う二人を、好きなだけ

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小説
迅嵐



「はぁ〜〜〜……」

ベットに飛び込むや否や、俺は深いため息をつく。
最近、俺は迅に会えていなかった。

俺が日勤で、迅が夜に暗躍。迅が日勤で、俺は夜に広報活動。片方が起きてる時には片方が寝ている。こういうことが何日も続いた。会えなくなって一週間くらいは、まぁこんなものかと深く考えなかった。しかし既に1ヶ月は経過している。

会いたい。話したい。

些細なすれ違いがここまで精神にくるなんて知らなかった。

寝なければ良いのでは、と一瞬考えもしたが、そうなると次の日がつらい。寝不足で倒れたりなんてしたら仲間にもボーダーにも迷惑がかかる。それは何としても避けたかった。

「…どうすればいいんだ」

メールはしている。ちゃんと返事も返ってくる。でもそれだけでは物足りない。俺はちゃんと会って話がしたかった。

どこで何をしたのか、何を食べたのか、何を見たのか。

迅に笑って聞いて欲しい。小さなことでも話して欲しい。

「俺こんなに欲張りだったんだな…」

段々と瞼が重くなり、身体が動かなくなる。睡魔に抗えるはずもなく、俺は呆気なく意識を手放した。


ふと、目を覚ます。隣で人の気配がした。

「………じん?」

「あれ、起こしちゃった?ごめんごめん」

そこには会いたくて仕方のなかった迅がいた。少し疲れた様子の彼は俺の頭を優しく撫でる。

「…………あいたかった」

俺の頭を撫でる手がぴくりと止まる。俺は再び眠気に襲われ始めていた。

「………ずっと、はなし…たくて、あいたく…て、…」

伝えたいことはいっぱいあるはずなのに、俺の口は素直に動いてくれなかった。

すると、頭に乗っていた温かな手が頬に滑り落ちてくる。

「…おれも、会いたかった」

まどろみに溺れながら、俺は深い眠りにつく。


最後に感じたのは、額へのやわらかな感触だった。

10/19/2024, 3:25:23 PM