すれ違い、通り過ぎ、気付いて振り向いた時、運命は動き出すのだろう。
彼にとっての運命は、たった一人だった。
多くのすれ違った人にとって運命だった彼も、たった一人の為に狂わされた一人だった。
叶わなかった思いは、満たされなかった未練は、澱のように降り積もる。
狂わせて、狂わされて、運命になれなかった喜劇と、運命になってしまった悲劇を見つめながら、思いの欠片は降り積もる。
暗い暗い湖は、こうして閉ざされてゆくのだろう。
それだけの、話。
END
「すれ違い」
10/19/2024, 3:16:29 PM