せつか

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10/15/2025, 3:55:45 PM

愛から恋を引いたらって?
やだねー、これだから恋愛至上主義は。
恋なんてしなくたって人は生きていけるし、恋という概念が無い人だっている。
それに愛って、恋に関係なく存在する言葉だよ。
人類愛、家族愛、親愛、敬愛、友愛、信愛、隣人愛、愛着、愛嬌、郷土愛·····恋愛に関係無い、愛の付く言葉はたくさんある。
友情より愛情とか、比べるモノじゃないでしょうに。
どっちも大切に出来るのが良くない?

なんで恋の為に全てを蔑ろにすることが「トートイ 」になるんだろうね?

愛-恋=恋情以外のあらゆる愛。だよ。


END


「愛-恋=?」

10/14/2025, 3:51:18 PM

「梨のシャクシャク、と林檎のシャクシャク、は違うよね。みんな違わないって言うんだけどさ」
私の隣で梨の皮を剥きながら、彼女は言った。
「まぁ感覚は人それぞれだから」
彼女が差し出した一切れを受け取りながら、私は答える。今年初めての梨は不器用な彼女の手の中で、少しぬるくなっていた。
「私は梨食べてると時々口の中が痒くなるんだけど、でも好きだから食べちゃうんだよね」
「梨でそうなる人初めて見たよ。パイナップルでなる人は知ってるけど」
「うそ!?」
「ほんと」
驚きに声を上げる彼女の唾が飛んだが気にしない。
それより彼女の言う〝梨と林檎のシャクシャクの違い〟を考える。林檎を食べた時の感覚を思い出そうとするが、上手く出来ない。梨を食べながら、だから当然と言えば当然か。
「やっぱり感覚って人によって全然違うんだねえ」
シャクシャク音を立てながら、彼女は梨をいくつも頬張る。
「今度、梨と林檎一緒に買ってきて食べ比べてみようか?」
「それいいじゃん!」
目を輝かせて彼女が笑う。
「美味しそうなのがあったら買っておくよ」
「やったね!」

シャクシャク、シャクシャク。
ニコニコと笑いながら梨を頬張る彼女の傍にいるだけで、私は幸せで胸が一杯になる。
――そう、梨と林檎の違いが分からないことなど、気にならないくらいに。
目が見えない私は、味が分からない私は、彼女の感覚から伝わる世界だけが何より大切で。
それ以外の何を無くしてもいいと、本気で思っていた。


END



「梨」

10/13/2025, 11:52:05 AM

あの子はいつもご機嫌に歌をうたう。
甲高い声で、お世辞にも上手いとは言えない歌を。
「ふんふーん♪」
何をする時でも歌をうたう。
以前、なんでそんなに歌が好きなのかと聞いた事がある。するとあの子はニコニコと笑ったまま、「言っても無駄だから教えなーい♪」と歌うように返された。

今もあの子はご機嫌で歌っている、
鈍い音をBGMに、何度も両腕を上下に振りながら。
飛沫をあちこちに撒き散らしながら。
「LaLaLa Goodbye ~♪クソみたいなこの世にサヨナラ~♪」
どこかで聞いたことがあるような無いような、もしかしたらあの子が即興で作った歌なのかもしれない。
「いつかの質問答えてやるよ」
手にしたものを放り投げて、あの子が振り向く。
頬に飛び散る飛沫が鮮やかに僕の目に映る。
「歌でも歌わなきゃやってらんねえ毎日だったからだよバーカ!」
鈍い音が再び響く。

僕の意識はそこで途切れた。


END


「LaLaLa Goodbye」

10/13/2025, 3:36:29 AM

どこまでも分かり合えない。
どこまでも平行線のまま。
多分死ぬまでこの感覚のまま。

血が繋がってる親子なのにね。


END


「どこまでも」

10/11/2025, 11:45:46 PM

十年以上前。
初めて渋谷のスクランブル交差点に来た時、異世界かと思った。縦横無尽に行き交う人々。その誰もがすれ違う人とぶつからずにすいすいと歩いていく。
しかもみんな、早い。
私は慣れない道で右往左往。
目的の店が分からなくて慌てて人を避けて足を捻りそうになる。
みんなどうしてぶつからずにすいすい行けるんだろう。
みんなどうしてあの奇抜な格好の人をスルーして行けるんだろう。
みんな誰が何をしていても気にしない。
道の真ん中でピンヒールの女の子が撮影してても、ぬいぐるみいっぱいつけたカバンを持った女の子が走って行っても、セーラー服着たおじさんがスタスタ歩いていても、誰もみんな気にしない。

――いいな。
田舎と違って、無関心で。
人の人生に知ったかぶりしてズカズカ入り込んで来たりしないで。

異世界みたいなこの交差点を、いつか颯爽と歩けるようになれたら·····この憂鬱な暮らしが少しはマシになるかもしれない。そう思った。


END


「未知の交差点」

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