アスファルトが陽炎のように揺れている。
見上げれば、ビルの窓ガラスには太陽が反射して白い光を放っている。
額に浮いた汗を拭って、恨みに満ちた視線を空へと向けた。
「·····」
ギラギラと突き刺すような痛みが露出した腕や首に降り注ぐ。真夏の太陽は容赦が無い。
いや、太陽自体は昔から何一つ変わってはいないのだ。人間が身勝手に環境を変えて、自分達の首を絞めているだけだ。だから突き刺さるこの痛みにも、うだるような暑さにも、苛立ちを覚えてもその怒りをぶつける場所が無い。
「·····」
暑さも痛みも、自分で避けようと思えばいくらでも避けられる。大人しく家でゆっくりしていればいい。
ニュースでもそういっている。
「·····」
自分で自分の首を絞めている。
ペットボトルの水をがぶ飲みすると、肩に掛けたカバンを抱え直した。
――年に一度、この為に。
この真夏の一日の為に、私の他の364日はあるのだ。
「ただいま!」
会場へと続く道で、胸の中でそう叫んだ。
END
「ただいま、夏」
8/4/2025, 4:36:49 PM