『あじさい』をテーマに書かれた作文集
小説・日記・エッセーなど
広い庭園の隅に植えられたハイドランジアの前に、小さな水色の傘と小さな長靴を履いた、小さな女の子を見つけた。
俺は安堵なのか何なのかよくわからないため息をつきながら呼びかける。
「お嬢」
弾かれたように振り返った彼女の青灰色の瞳には、今にも零れ落ちそうな程の涙の雫が溜まっていた。
慌てて袖でゴシゴシと拭って誤魔化そうとするものだから、目の下が真っ赤になる。
「ひでえ顔」
「……」
「風邪ひくぞ。こんな雨の中」
「……っ」
水色の傘が濡れた地面にころころと転がる。
抱きついてきた小さな体を受け止め、持っていた大きな傘に一緒に入れてやる。
「学校、上手くいってないんか?」
「……」
「……おぉい」
「……いわないで。とうさまにも、かあさまにも」
了解、と答える代わりによしよしと頭を撫でてやると、甘えるみたいに額を擦り付けてきた。
それから暫く俺は、お嬢の顔を胸に埋めたまま雨に濡れたハイドランジアから零れ落ちる雫を眺めていた。
泣くだけ泣いて気が済んだのか、彼女は顔を上げると気まずさと照れくささの混じった顔で見つめてくる。
「部屋に戻るか?」
「……」
「んー。じゃ、とりあえず俺の部屋でホットミルクでも飲んでく?」
「……ハチミツは?入れてくれる?」
「もち」
「……いく!」
ああ、やっぱりコイツは笑顔のほうが似合うな、なんて思いながら。
俺たちはひとつの傘にくっ付き合ったまま、笑い合いながら歩き出した。
──これはまだ、俺たちが“兄妹みたいだ”って言われてた頃の話。
ハイドランジアの傍に残された小さな傘は、雨が上がった頃に“家族”の誰かが拾ってくれたみたいだ。
・4『あじさい』
グラウはスキュラに東洋のバラを渡した
スキュラはその美しさに目を奪われた。
朝日を浴びた波打ち際に似た青い色と薄い緑ともつかないグラデーションだった。すこし紫のところもある。様々な色の小さな花が折り重なってブーケとなりスキュラに挨拶をする
あなたの肌に良く映える、珍しい花でしょう。あじさいというらしいです。
海の住人になっても貴女に不自由はさせません。
地上の喜びもあ全てなたの元へ運びましょう。
グラウは言うのだった
【続く】
[あじさい]
もう、あじさいの季節になった。
今日、学校帰りに友達とアイスを買って食べた。
友達はチョコミントで私はミカンのアイスを買った。
チョコミントが美味しそうだったので、一口もらった。
もらう時、「あーん」ってもらったから恥ずかしかった。
私が恥ずかしがってるのを友達は面白そうに見ていた。
すごいいじられてるなー
でも、こんな感じのいいよね。青春的な感じで。
友達がいるのはすごく幸せで楽しい。
ずっとこんな生活が続けばいいな。
雨の日はジメジメしてて、ちょっと嫌だけど、
雨の音は心地良くて好き
あじさい
交差点で信号待ちに見つけた
ずいぶんと元気いっぱいな紫陽花
ちょっと大きくなりすぎ?
根本にシタイでも埋まってるのかって位
ちょっと怖さを感じた紫陽花の記憶
けれど最近は鉢植えの
可愛らしい紫陽花が
母の日の贈り物として売られていて
こんな紫陽花なら
身近にあっても嬉しいかも
でも
緑の親指とは無縁なので
個人的に植物は家の外で見たいな
【あじさい】
雨に濡れて、より一層鮮やかさを増す、花と葉。を見ながら、傘をさして帰り道を急ぐ。あまり早歩きだと転びそうだな、と思いつつ。
「綺麗だね」
隣を歩く同居人が、自分より頭一つ高い目線から、花を見ている。
「急ぐよ、忙しいんだから」
「分かってるけどね」
柔らかく、静かに微笑む。静かなのに、その鮮やかさ。
まるで。
「この時期、ゼリーとか和菓子とかであんな色合いのやつあるよね」
「食べ物ばっかり」
「だって好きだから」
「……本物の方、食べるなよ」
「何で?」
「毒があるからね」
言いながら歩く。
隣に、鮮やかに笑う花のような君。
ぴんくのおはな、すてきだな、きれいだな、あ!でんでん虫さんだ!
あら?貴方も、お花好きなの?私も、大好きなの。
良かったら、庭の中に入ってきてもいいのよ。
ほんとに!?やったぁ!
うふふ、
喜んで貰えて嬉しいわ。
こっちはみずいろのおはなだ!
素敵でしょう?貴方もきっと素敵なお花になれるわ。
題_2_紫陽花
憂鬱な時期でもあじさい見ると梅雨も悪くないと思ってしまう、この季節には無くてはならない花。
【あじさい】
赤紫陽花の下には、屍体が埋まっている。私は埋まるなら紫陽花の下がいいなあ。
雨が降りしきる窓際で、日に日に細くなっていった君は、不意に、そんなことを口走った。
「桜じゃなくて?」
「あんな重い木に押しつぶされたくないもん」
「紫陽花だって重いよ」
「あは、そうかもね」
でもさ。紫陽花なら、桜と違って見つけてくれるでしょう?わかりやすくていいじゃん。
雨は今も降っていた。僕は、自分でも何をしているのだろうと思いながら、スコップで紫陽花の根を掘り返していた。君は馬鹿だと笑うかもしれない。今の僕を見て呆れるかもしれない。
本当は、そんなこと言わないでと言いたかった。痛々しい笑顔を見たくなかった。無理して欲しかった。でも、無理しないで欲しかった。ただ、ごめん。会いたい。
結局君はいなかった。掘り返された土と泥のむせかえるような匂いが、ぐらぐらしている頭を醒めさせた。乾いた雨音が、僕の肩をしきりに叩く。水たまりに映った僕の顔はまるで死人のようで、ああ、埋められたのは僕の方だったのかもしれない、と思った。
君は僕の血を吸って、今日も僕の中で生きている。
あじさい。
私はクラスが嫌いだ。だから一人一人を花と虫に区別している。嫌いな子は虫、ほかは花。嫌いな虫たちはいつも私の邪魔をする。耳元で大きな音を出しながら飛んで生きている。話したこともない虫なんて嫌いに決まってる。花達は虫に蜜というご飯を与えながら静かに生きている。私にとって虫にいい所は無い。もちろん私にとっての話だ。誰かにとっては大切でいなければいけない存在である。花だってそうだ。私にとって害はなく、話していて癒される花だってある。
私の友達にはあじさいちゃんという子がいる。
その子は笑顔が素敵で、元気な子だ。
ただある日、他の子の所へ言ってしまった。移り癖がある。言ってしまえば浮気のようなものだ。
そんなあの子は、私の知らないところで毒を吐く。
等々私の知ってるところで毒を吐くようになった。目に見える形で、溜めていた毒を。その毒は徐々に回っていく。私を蝕む。ただ痛くは無い。美しく、今までの思い出を思い出させてくる。涙を流し私は朽ちていく。そんな美しく悲しい毒を持っているあじさいちゃん。今貴方は誰のどこの庭で咲いてるのかな。毒、吐いてないかな。心配している毒された私。見た目だけで虫を嫌っている私にはちょうどいい天罰だろう。
貴方はどう?
見ただけで虫を嫌って。みんなが好いているから花が好き。そんなことしてない?どちらもちゃんと中身を知ること。そんな思いを私は種にして後世に繋いでいく。色んな人が見に来てくれるといいな、踏まれないかな、なんて考えながら。そう言って私は最後の1枚のあじさいの花びらを落として朽ちていった。
赤のあじさいか青のあじさいどっちがいい?
そう私は問いかけた。
だが返事は返ってこない。
まあ仕方ない。
どっちだっていいのだ。
どうせ青になるのだから。
【あじさいあいまいな空】
coming soon !
あるのどかな村に、デカ太郎という少年がいました。
愛する両親に、『心はデッカく、器もデッカく』と願いを込めてつけられました。
しかしこのデカ太郎という少年、心は大きかったものの、体はとても小さかったため、近所の子供たちに苛められていました。
毎日泣いて帰ってくるデカ太郎を心配し、母はこんなことを言いました。
「好き嫌いしているから大きくなれないの。
これからは何でも食べるのよ」
デカ太郎は母の言葉を信じ、せっせと好き嫌いせずいろんなものを食べていました。
デカ太郎は、好き嫌いせずどんどん食べていきます。
すると、体もどんどん大きくなりまた
ついには、太郎は自分をいじめていた子供たちよりも大きくなりました。
これで、いじめられることは無くなりました。
そしてデカ太郎はそれからも好き嫌いせず食べ、それからも大きくなり、村一番の大男よりも大きくなってしまいました。
しかしこのころから村人は、デカ太郎の事を怖がりました。
デカ太郎は、大きくなり過ぎたのです。
母親も、自分の息子が怖がられていることに胸を痛め、引っ越しを考えるくらいでした。
その時です。
そこに怪物が現れたのは……
村の人々は怪物を追い出そうと立ち向かいましたが、全員コテンパンにやられてしまいました。
その事を知ったデカ太郎は、みんなの事を守ろうと、怪物に果敢に立ち向かいます。
怖がられているとはいえ、ここは自分が生まれた村。
デカ太郎は、この村の事が大好きだったのです。
デカ太郎は、怪物に戦いを挑みます。
怪物はとても強く、デカ太郎は苦戦しましたが、なんとか怪物を追い出すことが出来ました。
村に平和が訪れたのです。
そして村の人々は、デカ太郎の勇敢な姿を見て、自分の愚かさを反省し、デカ太郎に謝罪をしました
こうしてデカ太郎は、本当の意味で村に打ち解け、村でずっと幸せに暮らしましたとさ。
めでたしめでたし。
◆
とある小学校の昼休憩の教室。
待望の昼休憩を喜ぶ他の生徒の騒ぎの中、大人しめな太郎と、見た目がギャルの雫が、向かい合って椅子に座ってました。
一方の太郎は、手に追っているノートを嫌そうに読み、それを雫が真剣な表情でみています。
しばらくしたのち、ようやく読み終わったのか、太郎はノートから顔を上げます。
それから太郎は天井を仰いだ後、目線を下ろし雫の方を見ます。
「読んだけど…… これ何?」
太郎は疑問を口にします。
それは当然の疑問でした。
なぜなら雫は、給食の後昼休憩が始まるや否や、太郎にノートを渡し、有無を言わせず読ませたのです。
本当は嫌でしたが、雫の真剣な表情に気圧され、太郎は頷いてしまいました。
「私ね、保育士になりたいの。
だからこうして絵本を書いてるの……」
雫は非常に真剣な表情で言いました。
雫は見た目こそギャルであるものの、夢に向かって努力をする頑張り屋さんなのです。
「そうじゃくて――」
ですが、太郎は反論します
そのことは、太郎も知っています。
知りたくも無いのに聞かされました。
でも、太郎には関係のない話なのです。
太郎は雫の夢を応援すると言った、殊勝な感性も持ち合わせていません。
ただただ迷惑でした。
「なんでこれを、俺に読ませたの?」
太郎は、雫の目をまっすぐ見ながら言い放ちます。
『保育士になりたい』という夢を太郎は否定するつもりはありません。
しかし、それがなぜ自分に読ませる事に繋がるのか、全く理解できないのです。
太郎の質問に、雫は大きく頷き答えます。
「こんどボランティアに行こうと思うんだけど、その時この絵本を基にして劇をしようと思ってるの」
「はあ!?」
太郎は思わず、声を荒げます。
これから言われることが容易に想像できたからです。
「だからタロちゃん、手伝ってネ」
「なんで俺が」
「ちゃんと読んでよ。
この絵本の主人公は『デカ太郎』、そして君の名前は『太郎』。
タロちゃんが演じる以外にないと思わない?」
「思わない」
「悪いヤツやっつけに行くの好きでしょ」
そこで太郎は言葉を失いました。
図星だったからです。
太郎はラノベやアニメといったサブカルが大好きです。
主人公が悪い奴を倒すのは大好物です。
ですが――
「でも俺には関係ない」
「実はタロちゃんをモデルにしたの。
関係者よ」
「勝手に巻き込むな!」
「ダメだよ、そんな事じゃ。
仕事を好き嫌いしていると、BIGにはなれないわよ」
「別にいい」
「そうでもないわ。
タロちゃん、小説家になりたいんでしょ?」
太郎は首を傾げます。
たしかに太郎は『小説家になれたらいいなあ』ということを、雫に言わされたことがあります。
ですが、なぜその事が繋がるのか、全く分かりませんでした。
「どういう事?」
太郎は、雫に尋ねます。
すると雫はにんまりと笑いました。
まるで獲物が罠にかかったのを見たかのような、獰猛な笑みです。
「私ね、タロちゃんが小説家になるの、いいと思うの。
応援してる。
でもね、本をたくさん読んで小説を書くのもいいけど、実際に体験することも大事だと思うの……
今回はお芝居だけど実際に体験するのは、小説を書くことにとてもいいことでしょ?
悪い奴を倒す正義の味方、なかなか体験することはできないわ」
『男の子ってこういうのが好きでしょ?』
そう言わんばかりの笑顔です。
それを聞いた太郎は、少し悩みます。
たしかに雫の言う通り、こういった体験が小説を書くことにプラスになるかもしれません。
けれども、劇に出るのは恥ずかしい。
太郎は目立つことが嫌いなのです。
小説家になるための勉強と割り切るか、それとも恥ずかしいから断るか……
太郎の心は揺れていました
雫は、太郎の心の動きを雫見抜き、確実に仕留めるため、次の行動に移ります。
「それとも――」
雫は、太郎の目を見ながら、心に沁み込むように、ゆっくり言葉を紡ぎます。
「――劇に出るのが怖い?」
それを聞いた太郎は目を大きく見開きました。
「なら別に出なくても――」
「やってやらあ」
「じゃあ決まりね」
太郎は勢いで了承しました。
男の子は、なによりもバカにされるのが嫌いなのです。
太郎は『しまった』と後悔しますが、後の祭り……
ですが、今更無かったことにもできず、太郎はがっくりと肩を落とします。
太郎は、まんまと雫の罠にはまってしまったのでした。
そして雫は協力者を得られたことに喜びます。
その一方で太郎は、雫の事を少しだけ怖いと感じました。
男の子の『好き』と『嫌い』を熟知し、自分の目的のために男を手玉に取る……
『雫は魔性の女になる』と確信する太郎なのでした。
憂鬱な梅雨には、紫陽花が咲く。
鮮やかな青色をした紫陽花に、私は今日も話しかける。
大好き大好き大好き。
この花を愛するのには、私には愛する人がいたからだ。
今日みたいな梅雨の日、大好きだった彼に、別れを告げられた。
正直もう君に縛られるのは限界だと、もう愛せないと、そう言われた。
悲しくて悲しくて、憎らしくて憎らしくて、許せなくて、気がついたら、小さなナイフを握った手が、カレの体に触れていた。
今日も私は紫陽花に話しかける。
この紫陽花が生きている限り、私は彼と生きられるのだ。
だーいすきだよ、カレ❤️
甘ったるいその声で、私はつぶやいた。
あじさい
落つる雨 這う水滴に 深化する
青紫の 儚きよひら
玄関から出たら土埃の臭いがした。
これから始まるのではなく終わった気配だ。
俺は折り畳み傘を仕舞い、市街地まで歩き出した。
高く昇った太陽も今は目も当てられない。
視界が濁る中、白や赤の人工の光が脳を揺らす。
前をじっと眺めていると、俺は目を見張った。
鮮やかな化け物がいる。
やがてそれが集合体だと分かった。
緑の中にまばらに在る青や白は、花だ。
それがお前の本当の姿なのか。
一息ついてまた歩き出すと、水溜まりに靴を沈ませた。
泥水の中で、綻んだ顔が映っていた。
いつしか雲間から光が差していた。
『あじさい』
これが咲くと雨が来た様な気がする。
雨の雫で滴るあじさい。
雨は暗いかもしれないけれど、
あじさいは美しい。
今日も見つけた。沢山のあじさい。
あじさい
梅雨の時期になると通学路に咲く紫陽花。雨に降られながら可憐に咲く紫陽花の変化を目にしながら、憂鬱な学校までの道を歩く。嫌なはずの学校を少し好きになれる瞬間である。雨によって姿を変える紫陽花は、小さな花弁を一生懸命に集め寄せた健気さに良さがあると思う。藍色の空にピンクの花びら、どうか長くその様を見させてくれまいか。
オワリ
雨は嫌いだけど、傘に雨が当たる音は好き。アタマイタイ
瑠璃紺の
萼美しき
八仙花
処変われど
また七変化
【あじさい】
「あじさい」
紫陽花が身に纏うパステルカラーのドレスの色は。
デザイナーである土たちの感性が決めているみたい。