【あじさい】
雨に濡れて、より一層鮮やかさを増す、花と葉。を見ながら、傘をさして帰り道を急ぐ。あまり早歩きだと転びそうだな、と思いつつ。
「綺麗だね」
隣を歩く同居人が、自分より頭一つ高い目線から、花を見ている。
「急ぐよ、忙しいんだから」
「分かってるけどね」
柔らかく、静かに微笑む。静かなのに、その鮮やかさ。
まるで。
「この時期、ゼリーとか和菓子とかであんな色合いのやつあるよね」
「食べ物ばっかり」
「だって好きだから」
「……本物の方、食べるなよ」
「何で?」
「毒があるからね」
言いながら歩く。
隣に、鮮やかに笑う花のような君。
6/13/2024, 1:40:39 PM