警報が鳴った。
天使がやってくる。
執事たちはすぐに天使が出たところに向かう。
人を守るために。天使を狩るために。
「主様、行きましょう。」
「うん。」
すぐに執事たちの力を解放した。
あっという間に天使はいなくなった。
が、安心した隙に残っていた天使に追い詰められてしまった。
私は息を飲んだ。
「っぁ…。」
目を瞑った。
ここで死を悟った。
刹那、グサッと何かが刺さった音がした。
恐る恐る目を開けると、
天使の羽に矢が刺さっていた。
「主様!」
執事の声がする。
私はその場に泣き崩れてしまった。
間一髪、なんとか間に合ったようだ。
「主様、大丈夫ですか。」
私は何も出来ない無力感と目から落ちる涙が重く心にのしかかった。
「…………あり、がとう…」
息が詰まりそうになる中、ようやく出た一言。
執事のみんなに抱きしめられながら、私はボロボロと涙を零した。
私には、生きる意味が無いと思ってた。
私が館に来たばかりの頃は
よくベリアンに言ってた。
「私って生きる意味ないよね。」
そう言うと彼は困ったように笑って言った。
「そんなことはありません。私たち執事は、主様が生き甲斐なのですから。」
「でもそんなの、私以外でも大丈夫なんでしょ?」
「…主様は…そう、思うのですか。
……こんなこと言うのは、恥ずかしいのですが…」
主様のためなら、と小声で呟いて、少し顔を赤らめながら言った。
「他の人ではダメです。私は、あなたがいいのです。あなたに仕えたいです。」
ほかの執事もそう言うと思いますよ。
とベリアンが付け足した。
「…ふふ、そっか。」
そう言われて、少し安心した。
「大丈夫ですよ。主様。
執事たちはみな。主様を必要としております。」
そう言い、ベリアンは軽く笑った。
「では、主様。ティータイムにしましょうか。」
私は、善悪が分かりません。
何がよくて、何が悪いのか。
「ラトくん。ダメだよ。」
ミヤジ先生が言うから従います。
まぁ、なんでダメなのかよく分かりませんが。
ですが、変な人が来ました。主様です。
「ラトは善悪が分からなくてもいいよ。
私が教えてあげる。」
そうやって笑う主様は綺麗でした。
「ふむ、お願いしますね。」
その後、主様は色々なことを教えてくれた。
「これはもちろんダメ。あ、でもこれはいい。」
いいのとダメなのを教えてくれたけど、それがなぜいいのか、ダメなのかそれは分からなかった。
「あ、でね。ラト。」
その言葉を聞いた瞬間、目の前が暗くなった。
「私以外好きになっちゃダメ。
私はラトしか好きにならないから。」
そう甘い声で囁かれた。
甘い声を聞いていると、頭がふわふわしてきた。
「ね、ラト。」
「はい。主様。」
これは、私と主様の少しおかしな関係です。
この甘い声で私のことを褒めてくれる主様。
どうか、ずっと私のそばにいてくださいね。
「いいこだね。らと。」
主様はそう言って撫でてくれた。
私の心はとても満たされた。
「もっと、わたしのことすきになって。」
その甘い蜜のような声と塞がれた目のせいで私は眠ってしまった。
「あ、寝ちゃった。」
ふふっ。と、笑ってラトを私の部屋に運ぶ。
「これからはずっと私がいるからね。」
そう言って私の部屋にラトを閉じ込めた。
今日は流星群の日。
ラムリが元気よく私のところを訪ねてきた。
「主様!今日は流星群の日ですよ!
一緒に見に行きましょ!」
星が大好きなラムリはとても嬉しそうに笑ってる。
「ふふ、うん。行こっか。」
ルンルンな彼は鼻歌を歌いながらよく見えるところに連れてってくれた。
「綺麗だね。」
そう言うと彼はコクコクと頷いていた。
「でも、主様の方が綺麗です。」
「…え?」
「あ、い、いえっ!なんでもないです!」
顔を真っ赤にしながら彼は言ったが、
私には聞こえていた。
「主様の方が綺麗です。」
この言葉が何度も頭の中でループしている。
「あ、ほ、ほら!主様!流れ星にお願いごとしましょ!」
そう焦りながら言う彼。
「うん。」
そんな彼が愛おしくて、大好きだ。
私は流れ星にお願いごとをした。
どうか、彼とずっといれますようにと。
これからも、
この綺麗な流星群をラムリと見れますように。
彼がこっちを向いてきたので、ニコッと笑うとラムリは星に負けないくらい輝いた笑顔を見せてくれた。
私は、主様の執事として、しっかりしなければ。
ルールを守って、ほかの執事のことも…
なんて考えていたら、
「ねぇ!ベリアン!」
「な、なんでしょうか?」
怒った声で呼んできた。
「しっかり休んでよ!」
「え、休む…?」
「ここ最近、ずっと考えたり、仕事してるでしょ」
そう怒った声で言う主様。
「そんなことはありませんよ。」
「でも目の下に隈ができてる。ちゃんと休んでないんでしょ。」
そう睨む主様。
睨んだ顔も、お可愛いですね。
「もう。」
と頬を膨らます主様。
今日は、ルール違反しても許されるでしょうか。
「では、主様。良ければ一緒にティータイムしてくれませんか?」
2人だけで、
と言うと主様は照れながら頷いた。
「ありがとうございます。準備しますね。」
そう言って微笑んだ。
そうしたら、主様は柔らかい笑顔を見せてくれた。
「しっかり休んでね。ベリアン。」
なんとお優しい方なのでしょうか。
これからもずっと、主様と一緒にいたい。
そんな願いは、そっと胸の中にしまうことにした。