蒼い血潮の返しを浴びて、
震える両手で抱きしめる。
何をしている───。
脳に響くは己が定め
人ならざるは斬らねばならぬ。
そう刻まれた、絶対の諚。
油断をするなど、あってはならぬ───。
奴らは死すらも、越えてくるぞ───。
繰り返される警笛が、
思考の曇を晴らさんとする。
わかってる。
傷だらけの己の身は、
それが敵だと理解している。
…だからだろうか?
背筋を駆ける、鋭い悪寒。
小さく震える空気の揺らぎ、
その音の根が聞こえる前に。
振るった刀が、敵を断ち切った。
それでいい───。
そう呟いたのは誰であったか。
血だまりに。
穏やかな笑顔が、
ひとつ、転がっていた。
ひらりひらひら桜舞う。
雨に打たれて、日に焼かれ。
春の陽気にふるえた桜が、
先にさきにと、生き急ぐ。
逃してなるか───!
そんな心で、カメラを手に、
カシャリと音を、弾ませる。
色はかんぺき
形もカンペキ。
それでも何か、足りていない。
あと一つだけ、何かが足りない───!
思わず、くしゃりと握ったそばから、
予備のフィルムが転がり落ちる。
───ね、落としましたよ…?
そんな優しい音色と共に。
細い手のひらが、画角を遮る。
フッと息抜き、
笑顔をともに、視線を上げて…
「あぁ、ありが…」
……そこに居たのは花の精。
桃色の服をふわりとさせて。
小さく小首を傾げてる。
なりふりなんて、かまいやしない───。
差し出された手を、勢いのまま。
それでも優しく握りしめる。
視線は鋭く、瞳のなかへ。
まっすぐ、まっすぐ思いを込めて。
「一つだけ。頼まれてくれ!」
───はい。
そうして撮った花の写真は、
『一つだけ』
とは、いかなかった。
あなたに大切なものはあるかしら───。
お金?友人?それがなんでも構わないのだけど、
それに塁が及ぶのを想像してみて?
どう?怒りが湧いた?
それとも、心が冷めてしまったかしら。
次はその逆───。
手離しても構わないものをイメージして…
あら、眉をひそめて…
あなたには難しかったのかしら。
いいわ、目を開けなさい?
なんで、こんなことを聞いたのかって?
ふふふ。
あなたが、あんまりにも大切そう食べてるから。
ちょっとイタズラしにきたのよ。
あっ、こら、もう。叩かないで!
ちゃんと返すわよ、おっかないわね…
あら、一つくれるの?
嬉しいけど、やめた方がいいわ。
なんでって…
ここでわたしがもらったら、
あなたのものが、減ってしまうじゃない───。
やぁやぁ、そこの男の子、
こんなところでどうしたのかな?
足をケガしてうごけない───?
どれ、ボクに見せてごらん?
おやおや、ウソはいけないよ。
ケガどころか、すり傷ひとつないじゃあないか。
魔法使い───?
いやいや、ボクはただのマジシャンさ。
そうだ、少年。
ちょっと手品を見て行かないかい?
え、急いでるから見て行けない?
それまた、なんで。
流行り病で、薬が無くて。
お医者さんを駆け回ってる?
それなら、まぁ。
しょうがないね。
でもさ、少年───。
エイプリルフールだからって、
ウソはいけないよ。
だって、そんな薬。
そこの薬屋で売ってるじゃないか。
贈り物には、いろんな想いが込められている。
有名なのは指輪だろうか…
他にもバレンタインのチョコなんてものもあったか。
どれも俺には縁が無い物だ。
だから、目を疑った。
ボロボロの道具箱、
いつかの自分の名残りの中から、
溢れ出てくる小さな贈り物。
折り紙の鶴に、萎れたクローバー。
セミの抜け殻に、きれいな石ころ。
どれもみんな、小さな幸せのおすそ分け。
思わず涙が出る。
だってそうだろ?
なんで、こんなに残ってるんだ。
なんでお前は、残してたんだ。
そんな自問自答すら、
馬鹿らしいと笑えてくる。
浮かんだ顔が証拠だろうよ───。
そう、口だけ悪態をついて。
ぼこぼこ凹んだ、えんぴつを握る。
まずは、何からはじめようか…
拝見…からじゃ、堅苦しい。
久しぶり…じゃ、馴れ馴れしい。
あぁ、でも───。
締めは決まってるんだ。
これからもどうぞ、お幸せに───。
ってな?