「よろしくお願いします」
そう言って頭を下げたのは聞いたこともないくらい可愛らしい声をした女の子だった。
六年生の夏。
転校生が来た。
なんで今?
どうしてここに来たの?
聞きたくても聞けない。
同仕様も無いくらいシャイな自分に嫌気が差した。
何日かたったが結局話せていない。
なにかきっかけは無いものかと考えていた時だった。
彼女を見たんだ。
真っ白なワンピースをきて麦わら帽子を被った彼女。
遠目からみても綺麗だと思う程その服装は彼女によく合っていた。
そしてその瞬間、これだと思った。
あとは行動するだけ。
それだけだと言うのに体は一向に動かない。
動き出さない足にただひたすらに苛ついていた。
次の日も、また次の日も、そのまた次の日も彼女はいた。
ただ一点を見つめて、じっとしていた。
まるで誰かを待っているように。
ある日、怖くなった。
何故だか分からないけど、彼女を恐ろしく感じた。
それでも皆いつも通りだったから勘違いだと思って、気にしないようにしていた。
だって、それはきっと。
ー麦わら帽子ー
短くなりました。
それはきっと何でしょう。
想像してみて下さい。
答えはありません。
「どうしたの?あきら」
じいちゃんのお見舞いに来たときに彼女を見つけた。
一目惚れだった。
話したこともない。
目があったことすら無い。
そんな彼女に。
僕はこの人と結婚する。
運命だと思った。
幼かったからか、物凄く単純だったんだ。
その後も何度か病院に来た。
その度に彼女がいた。
退院の日。
じいちゃんを迎えに行った。
僕は知っていた。
彼女と会えるのが最後だと言うことを。
だから、声をかけた。
「ねぇ」
後ろから声をかけたからもしかしたら反応してくれないかもしれない。
そうなら諦めるつもりだった。
運命ではないと。
神様が言っているに違いないから。
正直僕も反応してくれるとは思っていなかったから。
「なに?」
しかし、彼女は反応した。
初めて聞いた、可愛らしい声。
目があった瞬間、目を逸らした。
視線を外し、目をつぶった。
「あ、のさ、何でいつもここにいるの?」
とっさではあったが後悔した。
何でこんな質問して…。
「私ね、入院してるの」
心なしか声が近くなったような気がする。
「どっか悪いの?」
聞きながら目を開けてびっくりした。
彼女の顔が近くにあったから。
大きくてキラキラの目をしていると知ったのはこのときだった。
「なっ!えっ?ど、え?…どうして」
「…良かった」
「?」
「名前教えて」
「鈴木(すずき)あきら、お前は?」
「竹内(たけうち)こころだよ」
「よろしく」
「よろしく〜」
「あのさ、電話番号教えて」
「いきなり?親ので良ければ」
「うん」
「ちょっと待ってね」
それからはよく覚えてない。
でも、一つ確かな事がある。
僕と彼女は運命の人では無かった事だ。
だってこうして僕の隣にいるのは別の人なんだから。
ー病室ー
余談
読んでもらわなくて結構です。
最初は鈴木か竹内のどっちかが亡くなったからってことにする予定でした。
が、家族に見られて辞めたほうが良いんじゃって言われてしまったので。
鈴木は結婚してはいるんですけど竹内とではないってオチにしました。
どっちのほうが良かったんでしょうか。
それとも二人がくっつくハッピーエンド?
「明日、もし晴れたら、私告白しようと思うんだ」
「なんの告白?」
「恋愛の……」
「誰に」
「あなた」
彼女が差した指の先には僕がいた。
「え?」
思いも寄らない事。
嬉しかった。
「今日は曇りでしょ?だから、貴方の事が好きな事を告白しようと思って」
どうしてこんなに可愛いんだよ。
どうやら僕は、また心を射抜かれたみたいだ。
「明日、もし晴れたら遠足だね〜」
「うん!」
自分で言っておきながら思う。
面倒くさい。
弁当の準備やら持ち物の準備やら。
お願いします、神様。
明日は曇りにしてください。
雲一つ無い空を見ながらそう願う。
息子には楽しんでほしい。
だけど準備はしたくない。
ここは一つ賭けに出ることにしよう。
全ては、保育園側が決める。
どっちに転ぶか、見守ろうじゃないか。
「明日、もし晴れたらラーメン食いに行こう」
「なんで?今でも十分晴れてんじゃん」
「明日じゃなきゃ意味ねーだろ!!」
「え、なんかごめん。どした?」
「明日は柊(ひいらぎ)の誕生日じゃん」
「誰だっけ?」
「ごめん、俺も覚えてないわ」
「薄情だな!柊 朱音(あかね)!思い出せない?」
「……あ!あ~、ね?いつも隅で固まってた奴らの一人か、ん?何で」
「お前ら見てないのか?明日同窓会あるだろ?そん時、柊誘って皆で食いに行こうって話。晴れてたらだけどな」
「何で晴れ限定?しかもラーメンって、もっと他にあるだろ。ケーキとか」
「晴れん時だけやってる美味いラーメン屋があるんだよ」
「潰れるんじゃね?そこ」
「いや、まずさ、何で誕生日知ってるの?」
「え?ほら」
「まさか、クラスメイト全員の誕生日メモってんの?引くわー」
「まじか…キモ」
「クラスメイトだけじゃなくて、先生のとかもあるぞ。出会った人の誕生日全部メモってる」
「あー、ごめん、用事思い出した」
「俺も!会社の後輩と飲みにいくことすっかり忘れてたわー、じゃ」
「同窓会で会おうなー」
「ん?あぁ、おん、何だあいつ等」
ー明日、もし晴れたらー
「どうしてこうなったんだ!?」
ある日、宇宙人が来た。
最初は優しく、礼儀正しい宇宙人たちだった。
だが、人類は相手が下手に出たのを見てこき使い始めたのだ。
怒った宇宙人達は人類を消し去って、今では地球の王となっている。
俺はそんな人間の生き残りだ。
運良く今まで寝ていたため、よくわからないが生き残ってしまったのだ。
経緯を知ったのは、隣に本があったから。
親切に誰かが書き残しておいてくれたのだろう。
そして俺は宇宙人に仕返しをすることにした。
まずはレベルを上げよう。
『レベルを上げよう!外に出てね』
突然の機械音。
ビビりつつもドアを開けた。
外に待っていたのは荒れ果てた景色。
そして宇宙人だった。
『騙されたね』
笑いを含んだ声が聞こえる。
「あくー※訳(人間だー)」
「あちゅちゅー※訳(捕まえろー)」
GAME OVER
「はぁ??!」
俺はコントローラーを床に投げつけた。
「ふざけんなよ!どんなクソゲーだよ!!好評だったからやったのに!!!ん?大体何でやったんだっけ?」
天国
「う、やっぱり。神様になんと説明すれば…」
「ね!天使ちゃん!どうだった?」
「神様…それが…」かくかくしかじか
「そっか、残念だな〜。あ、ちょっと用事思い出した!すぐやってくるね」
「なにをしに?」
「…このゲームをわざわざ人間に届けた理由ってなんだったっけ?」
「?人間に神の偉大さをわからせるためでは」
「そう、それを今からやってくるんだよ」
地球
「は〜、最悪だ。時間無駄にした」
「人間くん」
「あ?人間?何でわざわざそんな言い方」
「僕は神様だけど君みたいな人間の顔と名前なんていちいち把握してないんだよ」
「眩しっ、その光どうにかしろ!」
「ごめんごめん、でも、そんなに眩しく感じるなんて心が汚れ過ぎているんじゃないの?」
「関係ないだろ!!眩しいんだよ!!!」
「じゃ、手短に要件を伝えるよ」
「いや、その前に光を」
「何様なの?」
「は?」
「何様なの?たかだか人間だろ?しかも汚い方の」
「綺麗だわ!!」
「心の話だよ」
「めちゃくちゃキレイですけど??ピッカピカですけど??」
「…何様なの?」
「別に偉くはないけど」
「ね?でしょ?僕は神様だよ?つまりね、君が僕の作ったゲームを批判するのはおかしいわけ、分かる?」
「は?何の話」
「これ」
「あー、さっきのクソゲー?それ、お前が作ったの?やっば」
「タイトル読んでみ?」
「やだよ、クソだせーもん。……わーったよ、『君たちは間違えた』。で?なに」
「そのままだよ、君は間違えた。ゲームの内容はなんだっけ?」
「宇宙人を倒す」
「原因はなに?」
「…人間」
「君への評価を改め無ければいけないようだ、君はゴキブリ並みだね」
「はぁ??上がったのそれ、下がったん?つーか、ゴキブリじゃねぇよ!!」
「上がったんだよ、しかも6段階も」
「どんだけ下だったんだよ」
「つまり、僕が言いたいのは図に乗るなってことだけだよ、簡単でしょ?」
「まぁな」
二人の掛け合いはしばらく続き、無事に神様は天に帰られたのでした。
ー神様が舞い降りてきて、こう言った。ー
締め方思いつきませんでした。
なんなら、勝手に想像してください。
私だけ。
貴方のことが好きなのは。
うんん。
そんなことない。
クラスの子にも好かれている。
最悪で最低な事実。
いいよ。
-
だって本当に好きなのは私だもんね?
って、そんな訳ないか。
てんで駄目な私の事なんか誰も好きになんてなりはしない。
私自身も否定するような、そんなダメ人間。
ただ、そこら辺にいる普通の脇役。
知ってくれてる人なんているはずが無い。
自信が無いの。
知ってくれてる人がいないだもん。
んん?そっか、それって。
がんばって日々を生きている私に失礼だよね。
………私、頑張ってんのかな。
怠惰な日々を過ごすだけの私が、私に向かって失礼なんて。
失礼なんて、言っていいのかな?それこそ、日々がんばって働いている人に失礼じゃない?
のこのこ仕事場にやってきて「頑張ってますね」って言うくらい失礼じゃない?
……今年こそ、自分を責めないって決めたのに。
とっとと消えてしまいたいくらい自分を責めってるっておかしくない?
だけど、仕方ないよね。
今までやって来たことを今更。
直ぐに変えることなんてできない。
昨日だってこうやって反省したはずなのに。
なんで、私ってこう、すぐに反省出来ないんだろう。
飲み込んできた言葉。
憎らしくて憎らしくて仕方が無い。
-
あそこで飲み込んでいなければ、私は変われた?
私だけ。
特別って思ってない?
ー私だけー