「どうしたの?あきら」
じいちゃんのお見舞いに来たときに彼女を見つけた。
一目惚れだった。
話したこともない。
目があったことすら無い。
そんな彼女に。
僕はこの人と結婚する。
運命だと思った。
幼かったからか、物凄く単純だったんだ。
その後も何度か病院に来た。
その度に彼女がいた。
退院の日。
じいちゃんを迎えに行った。
僕は知っていた。
彼女と会えるのが最後だと言うことを。
だから、声をかけた。
「ねぇ」
後ろから声をかけたからもしかしたら反応してくれないかもしれない。
そうなら諦めるつもりだった。
運命ではないと。
神様が言っているに違いないから。
正直僕も反応してくれるとは思っていなかったから。
「なに?」
しかし、彼女は反応した。
初めて聞いた、可愛らしい声。
目があった瞬間、目を逸らした。
視線を外し、目をつぶった。
「あ、のさ、何でいつもここにいるの?」
とっさではあったが後悔した。
何でこんな質問して…。
「私ね、入院してるの」
心なしか声が近くなったような気がする。
「どっか悪いの?」
聞きながら目を開けてびっくりした。
彼女の顔が近くにあったから。
大きくてキラキラの目をしていると知ったのはこのときだった。
「なっ!えっ?ど、え?…どうして」
「…良かった」
「?」
「名前教えて」
「鈴木(すずき)あきら、お前は?」
「竹内(たけうち)こころだよ」
「よろしく」
「よろしく〜」
「あのさ、電話番号教えて」
「いきなり?親ので良ければ」
「うん」
「ちょっと待ってね」
それからはよく覚えてない。
でも、一つ確かな事がある。
僕と彼女は運命の人では無かった事だ。
だってこうして僕の隣にいるのは別の人なんだから。
ー病室ー
余談
読んでもらわなくて結構です。
最初は鈴木か竹内のどっちかが亡くなったからってことにする予定でした。
が、家族に見られて辞めたほうが良いんじゃって言われてしまったので。
鈴木は結婚してはいるんですけど竹内とではないってオチにしました。
どっちのほうが良かったんでしょうか。
それとも二人がくっつくハッピーエンド?
8/2/2024, 3:02:52 PM