アシュリー

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10/18/2024, 12:06:46 PM

『秋晴れ』

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この日を私は待ちわびていた。いや、なにか特別なイベントがあるわけではないのだが。日本には四季があって、ほとんどの人が四季の好みを持っていると思う。例えば、冬は雪遊びができるから好きだとか、春は花粉症で辛いから嫌いだとか。

単刀直入に言えば、私は夏が嫌いだ。その後の残暑も含めて、夏が好きな方には申し訳ないがとても好きにはなれない。理由は単純に「暑すぎるから」である。温暖化の影響もあって、少なくとも私は夏に出かけるなんて到底できない。なんなら、温暖化で騒がれる前からずっと夏が嫌いだった。
たしかに夏祭り等、楽しいイベントがあるのはわかるし、私もそういうのは好きだ。でも暑すぎて行けたものではないのだ。…まあ一応毎年行くは行くけれど、毎回体調を崩して帰還している。私は暑さに弱い。

ここまで長々と夏に対しての愚痴を連ねていたが、ポジティブなことを挟むと、逆に私は秋が好きだ。なぜなら夏が終わるから!…というのも理由の一つではあるが、食べることは好きだし、読書も好きなので、なんだか私には「秋」が似合うような気がする。
つまり、私は秋の到来(涼しくなった時)を待ちわびていたわけだ。現に、こうして私が外に出れるようになったのだから。

久々に外に出ることが出来た。散歩して景色を見ることが好きなのだが、今までは暑すぎてそもそも散歩どころではなかったのだ。やっと出た外は、秋と言われると少しだけ暑さを感じるものの、夏に比べたら確実に涼しい。狭い道を歩いているので、建物の隙間を吹き抜ける風が冷たくて、とても心地よい。
問題は、建物に挟まれてるおかげで景色らしい景色が見えないことである。空もほとんど見えない。多分、私は少し田舎に住んだ方がいいタイプなのだろう。
景色を見たいなら建物の無い道を選べ、と言われるかもしれない。が、私は近くの道ならどこに行っても自力で帰れることに慢心して、いつも適当に歩いているのだ。どこに行けば何が見れる、等一切考えていない。唯一考えているのは、前歩いた道とは別の道を行くことだけ。…もしかしたら、秋が来たことに舞い上がって変な道を選んでしまったのかもしれない。
しばらく進めば視界が開けることはわかっているので、一旦そのまままっすぐ進んでいく。


やっと視界が開けてきた。
この道には、イチョウの木が車道に沿って植えられている。落ち葉はまだあまりないけれど、ほとんど黄色く色付いていて、改めて秋を感じることができた。
晴れているので、上を向かずとも青い空が広がっている想像はつく…のだが、なにか猛烈な違和感を感じて空を見る。
雲ひとつない快晴。優しい色の青空。視界の奥に向かうほど、白のグラデーションがかかっている。秋に見れる景色の中で、私はこれが一番好きだ。夏には濃い青の空をして、ジリジリとこちらを照りつけてきた天が、秋になった途端、一転して優しさを表す。
私は、秋は「優しさ」の季節だと思っている。考えてみれば、秋と言えば、で想像されるものは、だいたい目に優しい色をしているだろう?

さて、今日は満足出来たので、引き返して家に帰ることにしよう。
次はモミジでも見に行こうか。

10/17/2024, 1:32:10 PM

『忘れたくても忘れられない』

書いてたら微グロになってしまいました。苦手な方はブラウザバック推奨。



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ここはどこなのだろうか。
経緯をさっぱり覚えていないのだが、今、ふと気がついたら知らない道のど真ん中に私が立っていた。こういうのは、寝そべっている状態から始まるものだと個人的に思うのだが。別に疲れを感じないので、立っていても問題はあまりないけれど。
周りを見渡す。俗に言う田舎といった感じの風景が広がっていて、私が今立っている場所から何本か道が分かれている。人の気配どころか、動物の気配もとくになし。

…さて、私はここからどうしたら良いのだろう。道のど真ん中…というのは一旦置いておくとしても、当たり前だが、こんな何も無いところで突っ立っていてもどうにもならない。ファンタジー世界の主人公だったら、変なモンスターに襲われて冒険者に救われるとか、空から女の子が降ってくるとか、そういう展開があるかもしれない。が、生憎私は異世界転生も何もしていない人間だ。そんな展開に期待はしない。
とりあえず、目の前にある道を進むことにする。一つだけやけに明るい道だとか、逆にどこか一つ、踏み入れたらヤバそうな道があるとか、そういうことがあればもっと選べたのだが、この位置からではどの道も同じようにしか見えない。下手に動くと初期位置を見失いそうなので、動き回る前に目の前の道を進む、と決定してしまったわけである。

今その道を歩いている最中なのだが、どこまで進んでも景色が変わらない。困ったものだ。この道、どこを通ってもいつまで歩いても何も情報が入ってこない。情報がないというのは、嫌な情報がなだれ込むよりももっと最悪なものだと思う。
とはいえ、じゃあ引き返そう!とも言えない距離は歩いた感覚があるので、とりあえずそこのベンチに腰をかける。疲れていないのに休憩するのは、なんだか体育の授業を仮病でサボったような感じで、少し懐かしさがある。
ふと思い出した。私は缶コーヒーを持ち歩いているじゃないか。プルタブを押し開けて、中のコーヒーをグビグビ飲んだ。想定より苦い。いつもはこんなに苦くないと思うのだが。

一息ついていると、急に変な音…いや、唸り声?が耳に入る。今まで聞いたこともないような声だが、私の直感が「これはヤバい、逃げた方がいい」と警鐘を鳴らす感覚。冷や汗が全身を伝う。その反面、体は事態を把握出来ていないかのように、休憩モードから切り替わらない。
そうして座り込んだままいると、後ろからなにかの影が落ちる。少なくとも人間では無いし、私が知っているどの動物ともシルエットが一致しない。何より、それはやけにデカい。
視界に収めたことで、やっと体も異常事態に気づいたらしく、急に体が動いた。とにかく全力で走る。どこに向かって走っているのか自分で分からないが、あの化け物の反対方向にずっとずっと走っていく。自分の中では必死で走っているつもりなのに、実際は、水の中でもがいているような動きしかできていない。動かしたいのに動かない体がもどかしい。さっき休憩したからだろうか。

『おーい、お前何そんな必死になってんだよ』

急に、視界の外から声がする。振り向いてみると、私の大親友が立っていた。いつもと変わらない様子の親友。いや、いつもと変わらなさすぎる。
私もとりあえず、いつものように返事をしようとした…ところで、後ろの化け物の存在を思い出す。
化け物の触手みたいな気持ち悪いそれが、親友をものすごい速度で突き刺して、グチャグチャに切って潰して、親友だったものがその化け物みたいに変貌していく。
私は何を見せられているんだ?一瞬希望の光のようなものを見せておいてすぐこれだ。目の前で親友を失ったと同時に、全ての気力が底を尽きてしまった。

親友の原型が消えた頃、何となく化け物が目標をこちらに戻したような気がする。もう動けない。動けないが、恐怖心は存在する。私もああなるのだろうか?
怖い怖い怖い怖い、こんなところで死にたくない。私が何をしたっていうんだ?
化け物が動き出す。先程親友を突き刺した時と違い、ゆっくりとこちらに伸ばしてくる。
死ぬんだな、と思うと何故か妙に納得してしまう――


――文字通り、ベッドから飛び起きた。冷や汗がすごい。部屋が真っ暗だ。どうやら真夜中に起きてしまったらしい。
何となく怖かった夢。思い返していくと、夢で感じていた恐怖がそのまま纏まりつく。今日はしばらく寝れないだろうな、と思う。
とりあえずベッドから降りる。リビングまで向かって、ココアが目についたのであっためて飲んだ。この温かさが、今の私に沁みる…
しっかり休んでいると、少し冷静になってくる。どうしてあんな夢を見たのか分からないし、そもそも夢のあの人物は全く知らない人だった気がする。

ひとつ確実なのは、私はしばらく、あの夢を忘れることができないだろうということだ。

10/16/2024, 1:44:43 PM

『やわらかな光』

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山登りというのはこんな険しいものなのか…
と、思うのにも訳がある。


先日、友人からハイキングに誘われた。
私の友人には山好きが多く(反面私はインドア派で体力もあまりないのだが)、普段は私以外のメンバーでハイキングに行っているらしいのだ。
ところが今日は、何故だか私が誘われた。理由を聞いてみたら…「お前がいた方がなんか楽しそうだから!」という、なんとも中身のないというか、陽を感じるというか、なんというか…
まあ、誘われたことは素直に嬉しいので、とりあえずハイキングの心得を大量の資料を使って調べようと思う。ネットで検索するだけなのだが。

…ふむ、とりあえず、トレッキングシューズ?なるものを用意して、気温の変化にも対応できるように重ね着を…
……なんだか用意が面倒そうだ。友達はみんな毎回こんなに用意してるのか?趣味だからできる芸当であって、私のような人が踏み入れるべき領域では無いような気もする。
だが、「リフレッシュになる」らしいので、もしかしたら普段外に(あまり)出ない私を気遣って誘ってくれたのかもしれない。そう考えたら、まさかバックれるなんてことは出来ない(そもそも友達の誘いを断るほど薄情な人間でもないが)。


と、いうわけで、私は今山登りをさせられている。話と違うじゃないか!
調べたところによると、「ハイキング」は「登山」より軽いものであって、こんなゼェゼェしながらやるようなものではない…はずだが…
そんな私の様子を伺いつつではあるが、友達は平気でスイスイと山を登っていく。百鬼夜行に紛れ込んでしまったような感覚だ。まだ昼だけれど。
でも実際、夜のような感覚だ。なぜなら、今登っている道は木が生い茂っていて、陽の光がほとんど入ってこないからである。木漏れ日すら珍しい程だ。
正直、もう休みたい!たしかに自然と触れることはいいのだが、ここまできついとまた別の方向で疲れが溜まる。と言いたいが、友達があまりにも疲れを見せないので、多分私が運動不足なのだろう。そう考えたら、口が裂けても休みたいなんて言い出せない。

何とか必死で(本当に死ぬ気で)友達の後に続き、とりあえずはぐれることなく登りきった。日が出ているうちに登り切れるとは。いや、日が出ていないとダメなんだっけか。
「楽しかったかー?」と友達のひとりが叫ぶ。いや、楽しいどころか疲れたわ!と返しかけたが、思い返すとちょっと楽しかった気もする。運動って、案外大事なものなのだろうか。「楽しかったけどもうやりたくねぇ!」と返しておこう。


せっかく登山というひと仕事を終えたので、景色を見ることにしよう。
下を見ると、意外と道のりが長く険しいことに気がついた。登っている時はそこまで険しい道でなかったような気がする。配慮してくれたのだろうか?
にしても、ここまで登りきった自分を褒め讃えたい。普段動いてない割には頑張った方だと思う。
下を見た次は、上…つまり空を見る。
綺麗な夕焼けだ。日の沈む方向からオレンジ、ピンク、紫、青のグラデーションが形成されている。普段も見れない訳では無いが、今みると特別な夕日に見える。
太陽が、友達の代わりに祝っているのだろうか。




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ここまで読んで頂きありがとうございます!
先程の話を書いている途中、同じお題の別の話が浮かんだのですが、その頃にはハイキングの話が既に固まっていて…出す場所がないので後ろに書かせて頂こうと思います。読まなくても構いません。そもそも字数が千もないと思うので、半分没作品です、
それと、これまでの作品にいいねをつけてくださった方々、この作品を読んでくださった方々に御礼申し上げます。




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ああ…眠い、眠すぎる…
時刻は午前四時。私の中では、朝にランニングだとかする、健康志向の人が起きる時間だ。
こんな時間に起きてしまった理由?…簡単だ、アラームの設定時間を間違えた。二時間も!
たしかに6時にアラームを設定したつもりだったのだが、どうやら昨日の私は眠気で間違えて四時にして、その上気づかずに即眠りについたらしい。見直しが大事なのはテストだけでは無いな、と少し昔を思い出す。

にしても、二十三時に寝て四時に起きるのはさすがに寝足りない。私は毎日八時間は寝ないと気が済まない人類なのだ。
なら二度寝すればいい。と思って、寝ようとしてから30分が経過して今に至る。たしかに眠いのだけれど、アラームのせいで脳だけ覚醒してしまったらしい。
こういう分野には詳しくないが…脳が覚醒してても体が覚醒していなければ動けないのだろう?多分、それが今の私だ。
時間を見ることが、今の私に出来る行動の最大値。これを眠りにつくという方向に動かせたら、どれだけ良かったか。はあ、どうしたらいいのだろう。このまま、こんな意味不明な独り言を脳内で続けるしかないのだろうか?

少し窓に顔を向けると、カーテン越しにうっすら明かりが見える。私の家の近くには、確かに街頭はあれど、この部屋の窓の方向にはない。つまり、この光はほぼ100%太陽の光だ。まさか、私は四時から日の出までずっと寝れずに起きていたのか?信じたくない…
薄ら紫の窓(カーテン)を見つめながら、だんだん諦めと怒りが湧く。昨日の私を助走つけて殴りたい。何故アラームの時間を確認せずに寝たのか、小一時間問い詰めたい。
だんだん絶望感が湧いてくる。あれ、これはひょっとして不味いやつなのでは?と脳が理解してくるのだ。
そんなことを考えている間にも、時は進むし、日は登っていく。


そして、とうとう日が登りきってしまったようだ。カーテン越しでもわかる太陽の明るさ。これは間違いなく朝である。
あれから、本当に一睡も出来ずに朝を迎えてしまった。唯一の救いは、今日が休日ということだろうか…
カーテンをまだ開けていないので、布越しに薄められた光が部屋の光度を上げている。
その光は、私を嘲笑しているような、情けをかけているような…そんな光に感じた。

10/15/2024, 12:39:55 PM

『鋭い眼差し』

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今日は特に何も無い休暇だ。一日だけの休みなので、外出の予定も特になし(決して私に友達がいない訳ではない)。ただ家で、本を読んだりして…過ごしてみたいものだが、骨の髄まで現代人の私はただテレビとスマホで一日を潰すだろう。ついでに、目の前に用意した刺身(つまり肴)と酒も消費して。

そんな予定と言えない予定で埋まった今日な訳だが、先程から、何かの気配を感じる。確実にこちらを凝視している感覚があるが、どこにいるのかは皆目見当もつかない。私はお化けなどという非現実的なものを信じるタチではないので、まあまずそういうものでは無いと仮定する。であれば、ひとつは虫や動物、もうひとつは私の家を覗く不審者か。どちらにしろ怖い。虫は苦手だし、当たり前に不審者は怖いものだ。

気配の正体を探りに行くか、知らないフリをして家で過ごすか。わざわざ休日に外に出る、という選択肢は私の中に存在しないので、私の行動はこの二択になる。…さすがに、ずっと気にしている気配をそのまま休暇を過ごせるほど、私は強い人間では無い(あまり大声で言えることでは無いのだが)。

と、いうわけで、急遽気配の正体を探るという予定がねじ込まれたわけだ。さてどうしよう。
虫だとわかっていれば、殺虫剤やら持ってきて適当にそこらにふきかけておけば、多分なんとかなると思う。動物だったら何とか捕まえて…捕まえる方法は知らないが、その後どこかに逃がせばいい。不審者は警察に引き渡して終わりだ。しかもすっかり忘れていたが、私は気配を感じるだけでその場所すらわかっていない。私は無計画な人間だ。
とりあえず、そこにあった肴を少し食べる。出しておいて食べないのはもったいない。こういうところだけはきちんとした人間だと思っている。

さて探そうかというところで、ニャーという可愛らしい声がした。位置は…右斜め前方あたりだろうか?
そこはちょうど、大きな窓がある場所だ。目を凝らしてみると、1匹の猫が、目を細めてこちらを見つめていた。…いや、正確には、私の近くにある肴を凝視していた。そして、おそらくはこの猫が気配の正体である。
虫や不審者でないことに安堵する。ついでに猫が可愛いので、こんな変な予定(元から十分変な予定というのは置いておいて)がねじ込まれたことへの怒りは全く湧かない。むしろ、この猫を撫で回したくてたまらない。


肴を見てピタリと止まったまま動かないので、仕方なく刺身を一切れあげて、その隙にめいっぱい撫で回した。なんだか嫌そうな顔をしている気もするが、これで猫も私も満足のはず。
実際、猫はその後普通に引き返していった。去り際、二度とこんなところに来ないニャ!とでも言いたげな顔と態度だったが、私が撫で回したいのでまた来て欲しいものだ。

10/14/2024, 1:17:05 PM

『高く高く』

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「ねーねーちょっと来て!」

新聞を読んでいた夏の昼間、視界の外から声が聞こえる。姪っ子の声だ。
一昔前の話。あの頃の夏は、確かに暑けれど暑すぎず、外で遊ぶのにちょうど良かった。まあ、大人の体力でも出れるほどの気温ではなかったので、私は家の中でこうして新聞を読むことになったのだけれど。

姪は今年で4歳になった。もう歩けるし喋れるし、何より可愛い自慢の姪だ。女の子なこともあり、引きこもりがちにならないか少し心配だったが、外で遊ぶのが好きな子に成長している。

はいはい、と返事をして、声のした方へと向かう。ついた先は縁側で、空を見上げる姪の姿があった。

「あっきた!見て見て!」

促されるまま見上げると、かなり近いところに大きな入道雲がある。

「あれ、おっきくてわたがしみたい!手を伸ばしたら取れないかな?」

ああ、そろそろ大雨が降りそうだ…と思った瞬間、姪は続けてそう言った。やけに現実らしい考えをしてしまった自分が少し恥ずかしく感じるとともに、姪の純粋さに感心する。

「うーん、大人になったら取れるかもしれないね」

雲をとるという考えは、私も幼い時に考えたことがある。何故だか分からないが、頑張れば取れるものだと思い込んでいた。今考えたら無理に決まっているのだが…子供の夢は壊してはいけない。壊すものでは無いはずだ。こういう時、話に乗ってあげる方がお互い得である(子供も喜ぶし、子供の可愛い反応が見れてこちらも嬉しいからだ)。

「えー、大人になるまでなんて待てないよ…今取りたいの!」

…大人になるまで待てないところも、なんだか私に似ている。まあ、こういう時は…

「じゃあ、僕の肩に乗ってみるかい?そしたら、少し空に近づくかもしれないね」

これがおそらく最適解。
姪を肩車して、ほら、こう手を伸ばしてみたら取れないかな?と声をかけたり。うーんと言って頑張って手を伸ばす姪が、姿は見えずともとても可愛らしい。

「ふふっ、取れそう?」
「んー…まだ届かないよ!もっと高くして!」

急な無茶振りだ。さすがに、私に身長を伸ばす能力はない。
でも、取れないとは絶対に言わない。そう、子供の夢は壊してはいけないから。


結局、姪の中で「まだ子供だから雲をとることが出来ない」という結論になったようで、30分ほどしたら大人しく私の肩から降りた。
降りた後に姪を見ると、悲しそうな感じは一切なく、何かしらの決意を抱いたような顔をしていた。そして、それは直ぐにどんな決意なのか判明する。

「私、いつかおっきくなって、あのわたがしを食べるの!絶対!」
「そっか、じゃあいっぱい遊んでいい子にしないとね」

微笑ましい夢だ。
目を輝かせながら私にそう宣言した姪。その成長が、少し楽しみになってきた。
また会う時は、一体どんな夢を持ってくるのだろう。

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