『忘れたくても忘れられない』
書いてたら微グロになってしまいました。苦手な方はブラウザバック推奨。
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ここはどこなのだろうか。
経緯をさっぱり覚えていないのだが、今、ふと気がついたら知らない道のど真ん中に私が立っていた。こういうのは、寝そべっている状態から始まるものだと個人的に思うのだが。別に疲れを感じないので、立っていても問題はあまりないけれど。
周りを見渡す。俗に言う田舎といった感じの風景が広がっていて、私が今立っている場所から何本か道が分かれている。人の気配どころか、動物の気配もとくになし。
…さて、私はここからどうしたら良いのだろう。道のど真ん中…というのは一旦置いておくとしても、当たり前だが、こんな何も無いところで突っ立っていてもどうにもならない。ファンタジー世界の主人公だったら、変なモンスターに襲われて冒険者に救われるとか、空から女の子が降ってくるとか、そういう展開があるかもしれない。が、生憎私は異世界転生も何もしていない人間だ。そんな展開に期待はしない。
とりあえず、目の前にある道を進むことにする。一つだけやけに明るい道だとか、逆にどこか一つ、踏み入れたらヤバそうな道があるとか、そういうことがあればもっと選べたのだが、この位置からではどの道も同じようにしか見えない。下手に動くと初期位置を見失いそうなので、動き回る前に目の前の道を進む、と決定してしまったわけである。
今その道を歩いている最中なのだが、どこまで進んでも景色が変わらない。困ったものだ。この道、どこを通ってもいつまで歩いても何も情報が入ってこない。情報がないというのは、嫌な情報がなだれ込むよりももっと最悪なものだと思う。
とはいえ、じゃあ引き返そう!とも言えない距離は歩いた感覚があるので、とりあえずそこのベンチに腰をかける。疲れていないのに休憩するのは、なんだか体育の授業を仮病でサボったような感じで、少し懐かしさがある。
ふと思い出した。私は缶コーヒーを持ち歩いているじゃないか。プルタブを押し開けて、中のコーヒーをグビグビ飲んだ。想定より苦い。いつもはこんなに苦くないと思うのだが。
一息ついていると、急に変な音…いや、唸り声?が耳に入る。今まで聞いたこともないような声だが、私の直感が「これはヤバい、逃げた方がいい」と警鐘を鳴らす感覚。冷や汗が全身を伝う。その反面、体は事態を把握出来ていないかのように、休憩モードから切り替わらない。
そうして座り込んだままいると、後ろからなにかの影が落ちる。少なくとも人間では無いし、私が知っているどの動物ともシルエットが一致しない。何より、それはやけにデカい。
視界に収めたことで、やっと体も異常事態に気づいたらしく、急に体が動いた。とにかく全力で走る。どこに向かって走っているのか自分で分からないが、あの化け物の反対方向にずっとずっと走っていく。自分の中では必死で走っているつもりなのに、実際は、水の中でもがいているような動きしかできていない。動かしたいのに動かない体がもどかしい。さっき休憩したからだろうか。
『おーい、お前何そんな必死になってんだよ』
急に、視界の外から声がする。振り向いてみると、私の大親友が立っていた。いつもと変わらない様子の親友。いや、いつもと変わらなさすぎる。
私もとりあえず、いつものように返事をしようとした…ところで、後ろの化け物の存在を思い出す。
化け物の触手みたいな気持ち悪いそれが、親友をものすごい速度で突き刺して、グチャグチャに切って潰して、親友だったものがその化け物みたいに変貌していく。
私は何を見せられているんだ?一瞬希望の光のようなものを見せておいてすぐこれだ。目の前で親友を失ったと同時に、全ての気力が底を尽きてしまった。
親友の原型が消えた頃、何となく化け物が目標をこちらに戻したような気がする。もう動けない。動けないが、恐怖心は存在する。私もああなるのだろうか?
怖い怖い怖い怖い、こんなところで死にたくない。私が何をしたっていうんだ?
化け物が動き出す。先程親友を突き刺した時と違い、ゆっくりとこちらに伸ばしてくる。
死ぬんだな、と思うと何故か妙に納得してしまう――
――文字通り、ベッドから飛び起きた。冷や汗がすごい。部屋が真っ暗だ。どうやら真夜中に起きてしまったらしい。
何となく怖かった夢。思い返していくと、夢で感じていた恐怖がそのまま纏まりつく。今日はしばらく寝れないだろうな、と思う。
とりあえずベッドから降りる。リビングまで向かって、ココアが目についたのであっためて飲んだ。この温かさが、今の私に沁みる…
しっかり休んでいると、少し冷静になってくる。どうしてあんな夢を見たのか分からないし、そもそも夢のあの人物は全く知らない人だった気がする。
ひとつ確実なのは、私はしばらく、あの夢を忘れることができないだろうということだ。
10/17/2024, 1:32:10 PM