『鋭い眼差し』
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今日は特に何も無い休暇だ。一日だけの休みなので、外出の予定も特になし(決して私に友達がいない訳ではない)。ただ家で、本を読んだりして…過ごしてみたいものだが、骨の髄まで現代人の私はただテレビとスマホで一日を潰すだろう。ついでに、目の前に用意した刺身(つまり肴)と酒も消費して。
そんな予定と言えない予定で埋まった今日な訳だが、先程から、何かの気配を感じる。確実にこちらを凝視している感覚があるが、どこにいるのかは皆目見当もつかない。私はお化けなどという非現実的なものを信じるタチではないので、まあまずそういうものでは無いと仮定する。であれば、ひとつは虫や動物、もうひとつは私の家を覗く不審者か。どちらにしろ怖い。虫は苦手だし、当たり前に不審者は怖いものだ。
気配の正体を探りに行くか、知らないフリをして家で過ごすか。わざわざ休日に外に出る、という選択肢は私の中に存在しないので、私の行動はこの二択になる。…さすがに、ずっと気にしている気配をそのまま休暇を過ごせるほど、私は強い人間では無い(あまり大声で言えることでは無いのだが)。
と、いうわけで、急遽気配の正体を探るという予定がねじ込まれたわけだ。さてどうしよう。
虫だとわかっていれば、殺虫剤やら持ってきて適当にそこらにふきかけておけば、多分なんとかなると思う。動物だったら何とか捕まえて…捕まえる方法は知らないが、その後どこかに逃がせばいい。不審者は警察に引き渡して終わりだ。しかもすっかり忘れていたが、私は気配を感じるだけでその場所すらわかっていない。私は無計画な人間だ。
とりあえず、そこにあった肴を少し食べる。出しておいて食べないのはもったいない。こういうところだけはきちんとした人間だと思っている。
さて探そうかというところで、ニャーという可愛らしい声がした。位置は…右斜め前方あたりだろうか?
そこはちょうど、大きな窓がある場所だ。目を凝らしてみると、1匹の猫が、目を細めてこちらを見つめていた。…いや、正確には、私の近くにある肴を凝視していた。そして、おそらくはこの猫が気配の正体である。
虫や不審者でないことに安堵する。ついでに猫が可愛いので、こんな変な予定(元から十分変な予定というのは置いておいて)がねじ込まれたことへの怒りは全く湧かない。むしろ、この猫を撫で回したくてたまらない。
肴を見てピタリと止まったまま動かないので、仕方なく刺身を一切れあげて、その隙にめいっぱい撫で回した。なんだか嫌そうな顔をしている気もするが、これで猫も私も満足のはず。
実際、猫はその後普通に引き返していった。去り際、二度とこんなところに来ないニャ!とでも言いたげな顔と態度だったが、私が撫で回したいのでまた来て欲しいものだ。
10/15/2024, 12:39:55 PM