お題『ススキ』
学校の近くのファミレスに来て約1時間半経過したところで委員長が小さな音を立てて一拍する。
委員長「ねぇ、そろそろお開きにしない?制服のまま居るのもあまり良くないし」
真珠星(すぴか)「うん。いいよ」
萌香「異議なぁし!……と言いたいけど、あたしまだ話足りない。そこで提案なんだけど、二人の都合が良ければ今夜あたしの家で夜パジャマパーティーしない?」
萌香の唐突の質問に真珠星は溜息をこぼし、委員長は目をパチパチさせ驚いている。
真珠星「どうした?急に」
萌香「あたしさ……もっと委員長と仲良くなりたいの。勿論真珠星ともねっ」
真珠星「私はついでか?」
少し嫌味っぽく言う時の真珠星は大体照れている。その事に気がつかない萌香は、小馬鹿にされたと勘違いして反発する。
萌香「ついでじゃないもん!」
しばらく黙っていた委員長が萌香の問いに答えた。
委員長「輪通(わづつ)さん、そんな事言って貰えて私は嬉しいわ。けど……急で何も準備出来ていないから今夜じゃなくて明日に変更はどうかしら?」
真珠星「そうだな、それが良い。明日だったら学校休みだし、何より萌香の家でパティーするんだろ?親の許可いるだろうし?」
二人の正論に納得した萌香は二つ返事した。
萌香「わかった、それもそうだね。あたし勢いに任せて家の事や二人の事考えてなかった。ごめんなさい」
真珠星「分かれば良し!(笑)」
委員長「そう言えば、私(わたくし)二人の連絡先知らないわ。教えてくれない?」
女子会はまだまだ続く、ススキの花言葉のように「悔いのない青春」をしたいと思う委員長だった。
End
お題『脳裏』
生徒Aと生徒Bは大神に呼び止められた後再び掘り炬燵に座った。クーラーの冷房が効いた客間がなんとも言えない重い空気により一層冷えるのは気のせいだろうか。生徒Aは空気感に耐え切れず思わず–––––
生徒A「ふ、船星。トイレ何処?」
船星「扉を出て2階へ登る階段の左側にトイレがあるよ。案内しようか?」
生徒A「大丈夫。ありがとう」
そう言って生徒Aは立ち上がり客間を出た。その時大神の目がこちらを見て『逃げんなや』と言ってるように思え、生徒Aはゾクッと背筋が凍った。
大神は船星に向き直り問う。
大神「さっきの話やけど“違う“ってなんや?」
船星「僕にもまだその……好きかどうか分からなくて……だから多分としか言えなんだ」
この時船星の脳裏には萌香の顔が浮かんでいた。
大神「初恋か?」
船星「わ、分からないよ。そもそも僕は、家族以外の女性と話すのが苦手なんだッ!?」
大神「ホンマか!?そんなん俺が考えとるナンパ作戦壊滅やんか!もっと早よう言うてえや〜」
船星は首を2回縦に振ると大神は落胆してしまい。掘り炬燵のテーブルに顔を伏せた。そこへトイレから戻ってきた生徒Aが大神の様子を見て驚いていた。
生徒A「何があったんだよ!?」
生徒B「帰ってくるの遅せぇよ」
船星「大神が考えている作戦が僕のせいで崩れたみたいなんだ」
End
お題『意味がないこと』
船星「ごめん、お菓子とか何もない家で」
そう言いながら僕は客間の掘り炬燵に座る大神とその友達に陶器で作られた湯呑みに麦茶を注ぎ入れ配膳していた。
何故大神達が僕の家に来ているのかというと、前回ナンパ作戦を考えている時大神と二人で教室に残っていたら、担任と牛海(体育教師)に邪魔されたからである。その帰り道大神と一緒に帰る際学校から僕の家が近いというを知られてしまった訳で現在に至る。
ようやく1学期期末テストが終わって一息つけると思っていたのだが……。
大神「気にすんなや。急に来た俺らが悪いんやし」
生徒A「そうそう」
生徒B「食べたくなったら後で漢気(おとこぎ)じゃんけんして買いに行ったら良いんじゃん!近くにコンビニやスーパーあるし」
船星「漢気じゃんけん?」
生徒A「知らねぇの?」
船星「う、うん。」
生徒B「普通のじゃんけんだよ。ただし負けた奴が全員の好きなモノを奢るんだよ。俺の親父が家族全員巻き込んでよくやるんだよ」
船星「そうなんだ。仲がいい家族だね」
生徒B「全然そうじゃねぇよ。半ば無理矢理だぜ、ひでぇだろ」
僕は返答に困り笑うしかなかった。両親が仕事で忙しくほとんど家にいないから家族団欒というのを僕は知らない。だから生徒B(丸太)君の家族を僕は羨ましいと思った。
大神「そろそろ本題に入ってもえぇか?」
船星「う、うん。あ、あのさそもそも『ナンパ』ってする意味あるのかな?僕には……意味がないことのような気がするんだけど……」
僕はこの機会に大神の誤解を解こうと思った。
すると大神は僕を睨みつけている。
僕は心の中で−−−−
『こ、怖い、何かまずいこと言ったかな。言たかも』
大神「どういうこっちゃ船星。お前、好きな女おるからあそこでずっと見てたんとちゃうんか?」
船星「えぇ〜〜!?ち、違うよ……多分」
生徒A「おやおや。話が荒れてきそうですわよ。奥様」
生徒B「そうですわね。奥様私達は退散した方がよろしいかしら」
生徒A、Bはコソコソと内緒話を始め、船星の家を出ようと掘り炬燵から立ち上がったが大神に呼び止められてしまったのだった。
End
お題『あなたとわたし』
1学期期末テスト最終日の放課後萌香達は学校の近くにあるファミレスを訪れて居た。
萌香「長くツラいテスト期間がようやく終わったよぉ。委員長勉強教えてくれてありがとう」
真珠星(すぴか)「本当にありがとう、助かったよ。でもさ委員長の勉強時間減らしちゃってごめん💦」
委員長「穂先(ほさき)さん、謝らないで。人に教えることで自分も勉強出来た訳だし……気にしないで」
萌香「そうだよ!真珠星は気にし過ぎなんだよ!!」
真珠星「萌香もまたには人の事気にして……。だからあの時ヒ◯ラー(生徒指導)に誤解されたの私が!!」
委員長「あの時って?」
萌香「運命の人(あなた)とわたし(あたし)が出逢った日✨」
真珠星「それは萌香が勝手に思っているだけで、正しくはあんた(萌香)が屋上から叫んだ日でしょ!」
委員長「あの騒ぎ輪通(わづつ)さんだったの⁉︎私教室にいたからよく分からなかったけど。昼休みの後グラウンドに居た生徒がザワザワしていたのは覚えているわ」
真珠星「萌香さ〜。あの時誰見てたの?」
そこへファミレスの女性定員が注文取りに来た。
女性店員「お客様、すみませんがご注文お願いします」
萌香達が席に案内されてから約10分以上が経過していた。一向に注文しない女子高生達にしびれを切らしてしまったようだ。
萌香「どうする?」
真珠星「めんどいからドリンクバーで良くね?」
委員長「えぇ。私もそれで」
真珠星「ドリンクバー三つで」
女性店員「かしこまりました。あちらのセルフコーナになります。別のご注文がありましたらベルでお呼び出しお願いします。それでは失礼します」
女性定員は簡単に場所の説明を終え、萌香達のテーブルを去って行った。それを完全に見送った後真珠星が呟く。
真珠星「さっきの店員さん機嫌悪かったよね?」
委員長「えぇ。私もそう感じたわ」
萌香「あたし全然分かんなかった」
真珠星「そういう所なんだよねぇ。萌香って……」
女性店員が来たことにより話題の内容が“気が利く人“に唐突に変わってしまうのは女子会ではよくある話である。
End
お題『柔らかい雨』
大神とナンパ作戦を考えていたら、僕達の担任である。アルキメ◯スに似た数学教師龍骨(りゅうこつ)先生が僕達に向かって声を少し荒げた。
龍骨「あなた達、いつまで教室にいるの?明日もテストあるんだから早く帰りなさい!」
大神「えぇやないですか。ちょっとくらい」
龍骨「よくないわ。あなた達が居る所為で日直の人が教室閉めれないってクレームあったのよ」
大神「それやったら俺らが閉めますさかい。な、船星」
船星「え、あぁ。うん」
龍骨は大神と船星をしばらく睨みつけあと教室を出た。数分後教師の中で一番生徒にウザがられている。筋肉自慢の元ボディービルダーだった男子体育教師を呼んで再度龍骨先生は現れた。
龍骨「牛海(うしかい)先生お願いします」
牛海「龍骨先生から聞いたぞ!『体力が有り余ってるから筋トレがしたいそうじゃないか⁉︎』」
大神・船星「は?」
船星「ぼ、僕そんなこと言ってません」
大神「!?ッ。あんのぉ、先生(せんこう)人が下手に出たったのに……」
龍骨先生は大神らが教室を閉めるなんぞ最初から信じていなかった。自分で教室を閉めたいが為に嘘までついて職員室に居た牛海を呼んできたのだ。
それに気づいた大神は船星に荷物を持って急いで教室を出ることを話した。足の遅い船星を先に逃した後、大神は牛海先生に捕まり、強制筋トレをさせられた。靴箱の前で船星が少し俯き泣きそうな顔をして大神に謝ってきた。
船星「先に逃げてごめん」
大神「気にすんなや。えぇ運動なったし。牛海がまた来る前に帰ろうや」
学校の校舎を出ると夏の強い日差しに混じり柔らかい雨が降っていた。大神は空を仰ぎ
大神「狐の嫁入りかいな」
船星「何それ?」
End