瑠璃

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10/3/2024, 11:45:30 AM


《いつかまた巡り会えるならば》
(刀剣乱舞/小夜左文字)


「やめろ!!」

あの日、自分の本体を見知らぬ盗賊に奪われ、斬り殺された女性と残った幼子。

手を伸ばしても掴むことが出来ず、この汚れた手に掴まれて持ち去られた自分自身。

その瞬間から、小夜左文字の心はどす黒い復讐の心に染まった。

けれども付喪神の力では、男を殺すことも出来ない。

「あの子に会いたい....」

あの時残された幼子を探しに出る事も出来ない。


心は荒むばかりで、真っ暗闇の中を歩いているような日々だった。


ただ。願うならば。叶うならば。

どうかまたあの子に会って、「ただいま」を言いたい。


「神か仏が見ているなら、どうかあの子とまた巡り会えるようにしてよ....」



これは【小夜左文字】が生まれる前の、名も無き左文字の短刀だった頃の記憶の話。

10/2/2024, 11:07:44 AM

《再会の奇跡》
(刀剣乱舞/宗三左文字)


宗三が本丸に顕現した時、刀剣男士はまだ数える程しかいなかった。

しかし、その中には、もう二度と会えぬはずの刀剣が居たのだ。


「薬研通し...!?」

「おっ。宗三左文字か?俺っちのこと覚えてたんだな!」

かつて同じ主、織田信長の元に居た短刀・薬研藤四郎。

本能寺の変で焼失したはずの刀。

「どうして薬研がいるのですか....」

「まぁ、細かい事は分からないが、薬研藤四郎って刀が在った事とか逸話だとか写しとかで顕現出来たらしい」

ほら、と見せた本体はあの日の薬研藤四郎そのもの。

美しい刃文も変わっていない。

宗三は薬研が、《あの時共に居た薬研藤四郎》だと実感すると、不思議と安心した。

「貴方とまた会えて嬉しいですよ、薬研」

「奇跡ってとこだな。これからまた宜しく頼むぜ」


その笑顔も、あの人変わらぬ子供のような笑顔で。

もう二度と見れないと思っていた仲間と会えるならば、

現世では会えなくなった自分の兄弟達にも会えるのだろうか。


もし会えるなら、それも奇跡と呼びたい。


宗三はそう思いながら、ここでの生活を始めた。

10/1/2024, 12:29:34 PM

《誰そ彼。逢魔が時》
(刀剣乱舞/江雪左文字)

昼から夜に移り変わる頃。
所謂《黄昏時》という時間は、1人で出るのは危ないと誰かが言っていた。

逢魔が時。誰そ彼。

相手の顔がよく見えない時間だからこそ、良くない物と遭うかもしれない。

そんな事を言っていたのは誰だったか。

本丸の《彼岸花》の景趣の向こうに誰かの姿が見えたのは、この時間帯だったからなのか。

近侍の江雪は直ぐに気づいたが、審神者には見えていないようだった。

(彼岸が、此岸に繋がってしまったのでしょうか...)

そんなことを考えながら、審神者の見えぬところで静かに手を合わせ、あの者が本丸内に来ないことを祈っていた。

9/30/2024, 10:25:54 AM

《明日も変わらず》
(刀剣乱舞/小竜景光)
敵を倒し、歴史を守る。

それが刀剣男士の本能であり、宿命。

けれど時々考えることがある。


「この戦いに、終わりはあるのかな」


戦場で思わず口走り、ハッとして口を塞ぐ。

隣にいた燭台切光忠は小竜の呟きが聞こえたらしく、にごりと笑う。

「どうだろうねぇ。まぁ、歴史修正主義者を殲滅するまで終わらないからね」

「終わるのかな。ずっと戦ってきてるけど、一向に減る気配がない」

「敵も知恵を出せば、戦も難航するだろうしね?」

「きっと明日も、その明日も。戦ってるんだろうね」


終わりのない戦など、人なら気が狂うだろう。

でも自分たちは刀剣で、人の形をした付喪神だ。

けれども人の姿を得てしまえば、心を持ち、喜怒哀楽を浮かべる。

「気の遠くなる話だよ、戦の終わりなんて」

数多の主を転々としてきたからこそ、変わらない日々を過ごすことの苦痛には敏感なのかもしれない。


きっと明日も、来年も、何年先も戦っている。

終わりのない戦いに気が狂うのはいつだろうか。

9/29/2024, 11:08:17 AM

《夜の時間》
(刀剣乱舞/大般若長光)


これは大般若が審神者によって励起される前。

現世の博物館に居た頃の話。


日中は騒がしくも賑やかで、様々な人々の声が絶え間なく聞こえる館内。


しかし閉館時間になり、職員も居なくなると、シンと静まり返る。

付喪神達も眠ったり、長くこの世にあるモノは少しばかり本体から離れて歩いていたり。

大般若もそれなりに長く居る刀ではあるので、多少なりとは動けるが、限度があるためあまり動くことは無い。

展示されていない時期ともなれば尚更だ。


「静かな時間だなぁ....」

「おや、大般若は静かなのは苦手かい?」

「苦手では無いが、暇ではあるだろう?小竜はどうなんだい?」

「まぁ俺も退屈って点には同意するけどさ」

同じ長船派の景光作の太刀・小竜景光とは仲も良く、共に起きていればたわいない会話を交わす。


沢山の古いモノたちで溢れるこの場所は、いつも騒がしくて飽きないが、毎晩訪れる静かな時間も、暇ではあれど嫌では無いのだ。

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