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3/4/2025, 9:29:37 AM

▶121.「ひらり」
120.「誰かしら?」
:
1.「永遠に」近い時を生きる人形‪✕‬‪✕‬‪✕‬
---
これまでのあらすじ
舞台は、遠い遠いどこかの大陸。ここに、長き戦乱によって当時の技術を喪いつつも存続している3国があった。
この物語の主人公である人形‪✕‬‪✕‬‪✕‬は、光と熱を糧に人間のフリをしながら、3国のひとつであるフランタ国内を旅してまわっていた。数十年そうして過ごしていたが、今年の冬は動力節約のため戦乱中の施設があると噂があった山で冬ごもりをすることに決めた。
しかし、たどり着いたのは戦乱中に敵国であったはずの隣国イレフスト国が建てた研究施設であった。人形は施設機器の起動に成功し、ナナホシと名乗る自律思考可能な虫型メカを手に入れる。
その後、施設を出た人形たちはサボウム国、イレフスト国と旅をしていく。イレフスト国ではナナホシを盗んだとして追っ手がかかり逃亡する。なんとかフランタ国へ戻ってきたのであった。






「ココガ花街?」
「いや、もっと奥にある。花街とは芸を売る店が集まった一角を指す。街の名前は別にある」

人形たちは、山を下りたあと街道に入って東の辺境を抜け、首都のすぐ北にある街にやってきた。ここの花街で人形の知り合いである子猫が働いている。子猫が幼少の頃から知り合いであり、‪✕‬‪✕‬‪✕‬が人間ではないことを知っている数少ない人間だ。

「ソッカ。他ヨリ、大キイ街ダネ」
「ああ、首都を姉とするなら、この街は妹にあたる。だから発展していて、モノも人もたくさん流れてくるのだ」
「コレガ‪✕‬‪✕‬‪✕‬ノイタ街…」

人形は旅をするようになってから、この街含め、どこにも家を構えたことはない。だからナナホシの発言は正確には違うのだが、興味深げにヒクヒクと触覚を動かす様子を見た人形は訂正しないでおくことにした。目的を持って何度も通っていたことは間違いない。

時は昼間。花街はまだ眠っている。

「先に配達屋へ行ってもいいか?進路に沿うものがあれば受けたい」
「ウン」

フランタ国における配達は、首都と周りにある妹分にあたる大きな街との間で主にやり取りがされる。だが金を払って内容審査さえ受ければ、国民の誰でも国内に限り配達を依頼することができる。そして遠方への仕事を受けるのは、人形のような旅人や商隊たちだ。

看板に手紙の絵が描かれた配達屋の建物の中に入る。
ドアを開けると、入り込んだ風がひらり、掲示板に貼られた依頼書をめくり上げた。


「ちょうどあったな」
1人つぶやくように発した人形は、依頼書を1枚取り、書物台で請書を記入するとカウンターへ持ち込む。

「これを受けたい」
配達の受け取り主にサインを書いてもらい、実績を示すのに使用する証明カードと共に出せば、
「ありがとうございます」

そもそもの数が少ないため、すぐに荷物が出てきた。

「確かに。必ず届けよう」

ひらり、人形は身を翻して配達屋を後にした。




「これを全部私に?」

その後、市場で外套を春物に買い替えたりなどして夜まで待った人形たちは、
子猫のもとを訪ねた。


ひらりと軽やかに広げられた薄紅色の布は、
サボウム国の新首都で購入した温泉を使った染め物だ。
若草色や他の色のものも並べて置かれ、ここだけ花畑のようだ。

「新調する時期から少し遅れてしまったが」
「ううん、それは大丈夫よ。それより、こんなに綺麗なものを、こんなにたくさん」

まだ来ないまだ来ないってやきもきしていたのに、笑っちゃうわ。

子猫はコロコロと呆れたように笑いながらも、嬉しそうに染布を抱きしめていた。
「これ、サボウム国のものでしょ?ひと冬で行って帰ってこられるなんて、さすがね。無茶なことはしていないかしら?」

「私は大丈夫だ。それより見てほしいことがある」
「あら、何かしら」

3/3/2025, 9:08:12 AM

▶120.「誰かしら?」
119.「芽吹きのとき」
:
1.「永遠に」近い時を生きる人形‪✕‬‪✕‬‪✕‬
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〜人形たちの知らない物語 小話〜

「冬は雨が降らないから虹も見れないって、とーちゃん言ってたぞ!」
「違うもん!見たもん!」

「じゃあ明日見せてみろよ!」
「いいよ!見せてあげるから!」

これが昨日の私。

「はぁ…なんであんな嘘ついちゃったんだろう…」

膝を抱えてションボリ。

「どうしたんだ?具合が悪いのか?」
「あ、おじさん!帰ってきたの!?」
「そうだよ。それより大丈夫なのか?」

「うん…実はね」

おじさんは、私の幼なじみのお父さんの弟。
人形づくりをしてる家では珍しいけど、旅をしながら色々学んでいるんだって。
時々帰ってきては、私にも優しくしてくれる。

事情を話してみると、おじさんは笑うことも無く話を聞いてくれた。

「ふむ、虹か。瓶詰めに使う、空の瓶はあるか?」
「うん、お母さんに借りれば、あるよ?」

「上手くいくかは分からないが、虹を作ってみよう」



水をいっぱいに入れた瓶を見せると、案の定、

「これが虹?こんなの嘘じゃん」

幼なじみは呆れ顔。

「まぁ、そう言わずに。今日は晴れてる。私は運が良かった」


苦笑しながらもおじさんは私から瓶を受け取り、太陽に透かす。

すると時折、

「あ、虹だ!」

思っていたより、ずっと小さいけど、虹だ。

「すごいな。嘘つきって言って悪かったよ」
「ううん、私も意地張って変な嘘言っちゃった。ごめん」

「2人とも、仲良くするんだぞ」
「ありがとう、おじさん!」

瓶を私の手の中に置いたおじさんは、私と幼なじみの頭を撫でて去っていった。
きっと幼なじみの家に帰るんだろう。

「おい、もっとやってみようぜ!」
「あ、うん!」







雨上がりの空に大きな虹を見つけた。

「わぁ!大きい〜!」

子どもたちにも知らせてあげよう。

私が小さい頃なんて、虹が見られなくておじさんが…

「あれ?」




君と見た虹。
私がおじさんから教えてもらって作った小さな虹。

とびきり大きな思い出のはずなのに。

私は誰と見たんだっけ?
お隣さんの子?

昔住んでた家のお隣は人形づくりしてて、お店もやってて、
私は人形を見るのが大好きで通ってたけど、
でも跡継ぎがいないからって、畳んじゃった。


だから、違う。

でも、そこの子じゃないなら、本当に誰かしら?



____の故郷にいた幼なじみの話。
違う大陸かもっと遠くなのか、細く細く繋がっていたチャンネルが、博士が最期を迎えたことで途切れてしまった瞬間。

3/2/2025, 9:35:47 AM

▶119.「芽吹きのとき」
118.「あの日の温もり」
:
1.「永遠に」近い時を生きる人形‪✕‬‪✕‬‪✕‬
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陽気なサボウム国と、洗練されたイレフスト国。
人形が渡り歩いた国々で出会った人間たちは、
最後にトラブルはあったものの確かに善良な者ばかりであった。

けれども人形は牧歌的な雰囲気を求めて、
元いたフランタ国に戻ることにした。

「なぜだろうな」

揺れる炎を見ていたら、何かこみ上げてくるものを感じた。
それの存在を認識した途端、それは消えてしまったが。ただ、後には、フランタ国に戻りたいという思いが芽吹いていた。

ナナホシに話しながら、とはいえ体の手入れに忙しいようで相槌が時折返ってくる程度であったが、人形も明確な答えは求めていなかったので気にしていない。
口に出して整理するように、今までなかった自身の変化について考える。

その間も燃え尽きた焚き火を片付ける手は動く。
施設の脱出から既に1日経過しているため可能性は低いが、人目に付きにくい山中ならば探しに来るかもしれない。
丁寧に痕跡を消していく。

「よし、こんなものだろう。出発する」
「ハイ」
「まだ手入れ途中だったか?」
「ウウン、モウイイ」
「そうか」

洞窟の隅にいたナナホシをすくい上げて肩に乗せる。
「では、行こう」


そうして出た外は、あちこちで芽吹きのときを迎えていた。

「来た時には目も向けなかったが」
「僕ハ、寝テタカモ」
「近い状態だったな」

冬の吹き降ろす風が、
今日は母性が目覚めたかのような優しいものに変わり、
しなやかに草木を揺らしている。

しばし立ち止まり耳を傾け、また歩き出した。

3/1/2025, 9:40:44 AM

▶118.「あの日の温もり」
117.「記録」「cute!」
:
1.「永遠に」近い時を生きる人形‪✕‬‪✕‬‪✕‬
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「追っ手は…いないようだ」

晴れた昼下がり。
人形にとって有利な天候であるが、現在残っている動力は少ない。

少し離れた場所から追っ手の有無を確認した人形は、以前に年越しを過ごした洞窟へ向かった。



「アッタカサ、シミワタル…」
洞窟の中、人形は集めた枝を惜しみなく焚べる。
大きな火はナナホシだけでなく人形自身も温めくれた。

「無理をさせたな」
「ウウン…ホルツ、イイ人デ良カッタ」
「そうだな…あの管理人は、信じても大丈夫だろう」

‪✕‬‪✕‬‪✕‬の意図を汲んで上手いことやってくれる、そう思わせる人物であった。

(そういえば、私もこうして温めてもらったのだった)

そう考えると、人間というのはー

「‪✕‬‪✕‬‪✕‬、イマ、笑ッタ?」
「え?」
人形は頬に手を当ててみるが、口角が上がっているということはない。
手をおろし、再び枝を火に投げ入れ始める。

「思い出していたのだ、あの日の温もりを」

情報収集しようと話し掛けた男に誘われて森の奥に採集に行ったこと、
注意が間に合わず、穴に落ちて足を大きく損傷したこと。
そして、その男に修復の手助けをしてもらったこと。

「大変だったと思うのだ」

ありがたいことなんだ。そう人形は考えた。

「ソッカ」
「ああ。動力を充分に確保できたら、フランタ国の町に行こう。そこに知り合いがいる町があるんだ」

「ア、オミヤゲ?」
「それもあるが。今回の旅で分かったのだ」
「何ガ?」

「フランタ国の方が気質の穏やかな人間が多くて、過ごしやすい。ナナホシ、いいか?」
「イイヨ、行コウ」

花街の子猫や仕入れ屋のシブは、健在だろうか。

子猫は、遅いと言って怒るかもしれない。
ナナホシのことをかわいがってくれそうに思う。

ただ話を聞き、望まれるままに旅の話をした。
それだけの過去が温もりとして感じられる。
単なる温度ではない、人間の温もり。

(ありがたいことなんだ)

ぱちん、と火の中の枝が弾けた。

2/28/2025, 9:24:38 AM

▶117.「記録」「cute!」(抱き合わせ更新です)
116.「さぁ冒険だ」
:
1.「永遠に」近い時を生きる人形‪✕‬‪✕‬‪✕‬
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イレフスト陣営、元対フランタ技術局内
仮説会議室(元食堂)にて

「なぁヤンよ」
「はい、課長」

「シルバーブロンドの奴は、第三隊に捕まるかのぅ」
「並の人間なら捕まるでしょうね」

「ここまで来るかのぅ」
「さぁ、どうでしょうね…って、来て欲しいんですか?」

「じゃって、この記録たちを見たらのぅ…血が騒ぐじゃろ?」
「否定はしませんけどね、期待しない方がいいですよ」

「むぅ…ちと第二隊らにお願いしてくるかの」
「相変わらず、言い出したら頑固ですね。無理言っちゃ駄目ですよ」


粘り強い交渉の末、地下通路は、元技術局側の出入口のみ警護することになった。
ホルツもそこに待機する予定だ。
曰く「話のわかるやつで良かったわい」ということらしいが、

「ったく…我々軍より前に出るなんて、どうなっても知りませんよ?」
「どうせ老い先短いジジイじゃ、ほっとけ。必要なのは対話じゃよ」
「どうせと言うなら長生きしてください」
「言われんでもするわい」


その報告が来たのは早馬が伝えてきた予想より1日早い、2日後のことだった。

「班長、かなり早い足音が聞こえてきました。しかし訓練された軍人のものではありません」

「来よったな。お前さん方、くれぐれも下がっておれよ」
「分かりました。しかし、いざという時は出ますのでご承知おきください」
「お主も頑固じゃの」
「あなたに言われたくないですね」

「班長、お早く」
「課長、早く行ってください」

地下に降りて所定の位置につく。

ホルツはシルバーブロンドが通路から出てきた時に目につきやすい場所へ、
第二隊5班は二手に分かれて、ホルツのフォローと、シルバーブロンドの背後に回れる位置につき息を潜めて待つ。

次第に足音が大きく、耳を澄ませなくても聞こえてくるようになってきた。

「…シ、もう少しだ」

まだこちらに気づいていないらしい。
独り言なのか潜めた声ながら警戒心は感じられない。

完全に姿を現したそいつは、想像していたより若かったが、情報通りの金とも銀とも見える髪色で、3秒目を離したら忘れてしまうような、特徴の少ない顔をしていた。
それよりも気になったのは、その顔になんの表情も乗っていないことだ。まるで人形のような全くの無表情。
しかし、わしと目が合った瞬間。
それは人間らしい、訝しげな表情に取って代わった。

「わしはホルツ。ここの管理人といったところじゃな。お主は、こんな所まで何しに来たんじゃ?」
「私は、‪✕‬‪✕‬‪✕‬。旅をしている者だ。ここには…友を助ける手段を探しに来た」

「ふむ、友か。友人とは良いものじゃ。人生を豊かにしてくれる」
「ああ…」
「しかし、ここに人間の助けになるようなものはない。友というのはナナホシというメカのことじゃな?」
「……そうだ。何故知っている?」
観念したのか、あっさりと認めた。しかし、警戒心まで解いたわけではなさそうだ。表情は緩んだが、心情がとても読み取りにくくなった。

「言うたじゃろ、管理人だからじゃ。わしは軍の奴らと違う。悪いようにはせん、こっちにおいで」
無造作に背を向け、スタスタ歩き出す。少しすると奴、‪✕‬‪✕‬‪✕‬もついてきた。
案外素直なやつじゃ。かわいいのぅ。じーさんはこういうとき、「cute!」と方言ぶちかましておったな。

自身が緊張しないよう、くだらない事を考えながら仮説会議室へ向かう。
さらに後ろの方からぞろぞろと5班のライラたちがついてきた。

「なぜ今日は多くの人間がいる?前は誰もいなかったが」
「前に来たという、そのせいに決まっているじゃろう。おかげで大忙しじゃ」
「む…すまない」

なんじゃなんじゃ。本当に国の上層部を騒がせている重要人物なのか?
調子が狂うの。

「まぁ座れ」
家具の類いは全て朽ちておった。そのため軍が野外に本部を置くときに使うテーブルセットを借り受けている。

「で、じゃ。さっそくナナホシというメカを見せてくれんか。実物を見たことがないんじゃ」
「ナナホシ、いいか?」
「ウン…優シクネ」

‪✕‬‪✕‬‪✕‬が突き出した手に乗っていたのは、
虫と考えれば大きいが、メカと考えれば極小の虫型機械であった。

「触れてもよいか?」
試しに手を伸ばしてみると、
ヨタヨタと脚を動かしてわしの手に乗ってきた。かなり冷たい。

「アッタカイ…」
「随分弱っておるの」
「ここに来る前に軍を振り払ってきた。その時に無理させてしまったのだ」

ちんまりと手に収まる、小さく弱ったメカ。
「…cute!」
「なんだ?」
しまった。じーさんの気持ちが分かってしまった。
「あぁいや、こいつを助けたいのじゃな?」
「そうだ」

「ちょうど、ここに記録が…おっと」
「モウチョット、アッタメテ」
「仕方ないのぅ」

その時は初めて触れた本物のメカのかわいさに、忘れていたのだ。
‪✕‬‪✕‬‪✕‬が追われていたことを。

バタバタとした大人数の足音に気づいた時には、もう遅かった。
「あっ、ちょっと困ります!ミナト第三隊長!」
「退けっ…!見つけたぞ!もう逃がさん!!」

血気迫る隊長の姿に、‪✕‬‪✕‬‪✕‬の様子が変わった。
サッとナナホシをわしの手から取り上げ懐に押し込んだかと思うと、わしの首に腕を回して拘束した。いつの間に出したのか、ナイフまで突きつけられている。
だが、痛くはない。

「すまない、少し付き合ってくれ」
しかも小声で頼んできた。

(おいおい、‪✕‬‪✕‬‪✕‬よ)
仕方ないので、苦しげに見えるようにしかめっ面をしておいた。

「いいのか?この老人が、どうなっても」
「お前が降伏すればいい話だ!」

ほんの少しだけナイフが触れる。
ヒヤリとした感触は、それが本物であることを伝えてくる。

「本当に?」
「隊長、ここはどうか」
「…くっ!」

じりじりと‪✕‬‪✕‬‪✕‬が移動を始める。ナイフが少し遠くなったので、わしも歩みを合わせていく。方向からしてメインルームに向かうようだ。

「ナナホシ、すまないが」
「ウン、イイヨ。マズハ、ココカラニゲヨウ」
「…どうするんじゃ」
隊長と向かい合っているため、わしは口を動かさないように尋ねた。
「ここを破壊する」
「なっ…」
「崩壊には3日の猶予があるから心配ない」

3日。それだけあれば資料室にあるものを全て持ち出せる。
優先順位をどうするか考えているうちに、メインコントローラーの前まで来た。
ボタンを押す音がした。‪✕‬‪✕‬‪✕‬は後ろ手にやっているので何のボタンを押したかまでは分からない。
『自壊装置の開始ボタンが押されました。自壊開始まで後3
「さあ、私はボタンを押した!ここは崩れる!逃げなければ死んでしまうぞ!」
‪✕‬‪✕‬‪✕‬が電子音声に被せるようにして大声を出す。
なるほど、猶予がないと思わせて退かせる算段か。

「この野郎…!」
隊長はいきり立っているが、他の面々は逃げ腰だ。フランタ国に通じる道ならすぐそこにあるが、昔とはいえ敵国であった国に取り残されるのは軍人には恐怖があるだろう。第三隊が後ろに退いていく。

「すまなかった」
謝罪の言葉を口にして✕‬‪✕‬‪✕‬は、わしを解放した。
それだけだと第三隊が勢いづいてしまうので、そっちに向かってよろめく演技をしておく。

そして✕‬‪✕‬‪✕‬は、フランタ国に繋がる通路に入っていった。

「あっちは異国、深追いは無理だ」
「では一度戻って…」
がやがやと協議しているのを無視して、わしは‪全部巻き込むことにした。

「イレフスト国を愛してやまない諸君!気をつけ!敬礼!」
昔のように腹から声を出せば、隊長以下全員が反応した。

「この対フランタ技術局は、崩壊の危機に面している!よって、全ての記録資料を持ち出し帰還する!復唱!」
「全ての記録資料を持ち出し帰還します!」
「よし、かかれ!」
我に返った隊長が苦虫を噛み潰したような顔をしていたのが気持ち良かった。


「こちらこそすまなかった、‪✕‬‪✕‬‪✕‬」

言っていた通りに3日後、元対フランタ技術局は崩壊した。

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