▶120.「誰かしら?」
119.「芽吹きのとき」
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1.「永遠に」近い時を生きる人形✕✕✕
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〜人形たちの知らない物語 小話〜
「冬は雨が降らないから虹も見れないって、とーちゃん言ってたぞ!」
「違うもん!見たもん!」
「じゃあ明日見せてみろよ!」
「いいよ!見せてあげるから!」
これが昨日の私。
「はぁ…なんであんな嘘ついちゃったんだろう…」
膝を抱えてションボリ。
「どうしたんだ?具合が悪いのか?」
「あ、おじさん!帰ってきたの!?」
「そうだよ。それより大丈夫なのか?」
「うん…実はね」
おじさんは、私の幼なじみのお父さんの弟。
人形づくりをしてる家では珍しいけど、旅をしながら色々学んでいるんだって。
時々帰ってきては、私にも優しくしてくれる。
事情を話してみると、おじさんは笑うことも無く話を聞いてくれた。
「ふむ、虹か。瓶詰めに使う、空の瓶はあるか?」
「うん、お母さんに借りれば、あるよ?」
「上手くいくかは分からないが、虹を作ってみよう」
水をいっぱいに入れた瓶を見せると、案の定、
「これが虹?こんなの嘘じゃん」
幼なじみは呆れ顔。
「まぁ、そう言わずに。今日は晴れてる。私は運が良かった」
苦笑しながらもおじさんは私から瓶を受け取り、太陽に透かす。
すると時折、
「あ、虹だ!」
思っていたより、ずっと小さいけど、虹だ。
「すごいな。嘘つきって言って悪かったよ」
「ううん、私も意地張って変な嘘言っちゃった。ごめん」
「2人とも、仲良くするんだぞ」
「ありがとう、おじさん!」
瓶を私の手の中に置いたおじさんは、私と幼なじみの頭を撫でて去っていった。
きっと幼なじみの家に帰るんだろう。
「おい、もっとやってみようぜ!」
「あ、うん!」
◇
雨上がりの空に大きな虹を見つけた。
「わぁ!大きい〜!」
子どもたちにも知らせてあげよう。
私が小さい頃なんて、虹が見られなくておじさんが…
「あれ?」
君と見た虹。
私がおじさんから教えてもらって作った小さな虹。
とびきり大きな思い出のはずなのに。
私は誰と見たんだっけ?
お隣さんの子?
昔住んでた家のお隣は人形づくりしてて、お店もやってて、
私は人形を見るのが大好きで通ってたけど、
でも跡継ぎがいないからって、畳んじゃった。
だから、違う。
でも、そこの子じゃないなら、本当に誰かしら?
____の故郷にいた幼なじみの話。
違う大陸かもっと遠くなのか、細く細く繋がっていたチャンネルが、博士が最期を迎えたことで途切れてしまった瞬間。
3/3/2025, 9:08:12 AM