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▶119.「芽吹きのとき」
118.「あの日の温もり」
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1.「永遠に」近い時を生きる人形‪✕‬‪✕‬‪✕‬
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陽気なサボウム国と、洗練されたイレフスト国。
人形が渡り歩いた国々で出会った人間たちは、
最後にトラブルはあったものの確かに善良な者ばかりであった。

けれども人形は牧歌的な雰囲気を求めて、
元いたフランタ国に戻ることにした。

「なぜだろうな」

揺れる炎を見ていたら、何かこみ上げてくるものを感じた。
それの存在を認識した途端、それは消えてしまったが。ただ、後には、フランタ国に戻りたいという思いが芽吹いていた。

ナナホシに話しながら、とはいえ体の手入れに忙しいようで相槌が時折返ってくる程度であったが、人形も明確な答えは求めていなかったので気にしていない。
口に出して整理するように、今までなかった自身の変化について考える。

その間も燃え尽きた焚き火を片付ける手は動く。
施設の脱出から既に1日経過しているため可能性は低いが、人目に付きにくい山中ならば探しに来るかもしれない。
丁寧に痕跡を消していく。

「よし、こんなものだろう。出発する」
「ハイ」
「まだ手入れ途中だったか?」
「ウウン、モウイイ」
「そうか」

洞窟の隅にいたナナホシをすくい上げて肩に乗せる。
「では、行こう」


そうして出た外は、あちこちで芽吹きのときを迎えていた。

「来た時には目も向けなかったが」
「僕ハ、寝テタカモ」
「近い状態だったな」

冬の吹き降ろす風が、
今日は母性が目覚めたかのような優しいものに変わり、
しなやかに草木を揺らしている。

しばし立ち止まり耳を傾け、また歩き出した。

3/2/2025, 9:35:47 AM