NoName14

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3/27/2025, 3:42:31 PM


ばあちゃん家の縁側

庭には、梅に木蓮…それと桜が植えてある。
休みの日には時間があると
この縁側に吸い寄せられるように
近所のばあちゃん家に来てしまう。

ポカポカとした陽気が
心地よくて、ぶらぶらとつま先に
引っかけていた
ばあちゃんのつっかけが片方
ポテっと、落っこちた。

それも、お構いなしに
ゴロゴロとしていたら

『まったく、だらしない孫だね』

と、鼻で笑うように
ばあちゃんが奥の部屋から出て来た。

咥え煙草のばあちゃんは
お盆を、ぶっきらぼうに縁側に置くと

ふーっと煙を吐いた。

どっちが、だらしないんだよ…
なんて思いつつ
お盆に目をやると煎餅やら団子に
チョコレート…それにいつもの渋いお茶が
雑多に盛られていた。

『いいの!春うらら!
私は春を満喫してるんだから』

そう言いながら、どれにしようかなと
チョコレートを口に放り込む。

ばあちゃんは、ニヤっと笑って

『春は、木の芽時言うて
体調悪うしたり、おかしな奴もおるけどな』

…ばあちゃんは、いつもちょっとだけ
意地悪だ。

『そんなら、煙草辞めなよ。』

お茶を啜りながら、尚もぷかぷかと
煙草を燻らせるばーちゃんは
庭を眺めながら、笑った。

『今更、やめてもお迎えの方が早いわ』

私は、そうですか…と
期待通りのばあちゃんの返事を
聞きながら、次は煎餅に手を伸ばす。

煎餅を、バリバリと頬張りながら
庭を眺めるばあちゃんの横顔を見つめた。

そろそろ80を迎えるにしては
背筋は真っ直ぐに伸びて
いつも、どこか凛としている。
じいちゃんは、早くに亡くなって
家も庭も守りながら私の父や叔父さんたちも
女でひとつで、育ててきたのだから
そういうものなのだろうか。

『そんなに見ても、何も付いてないやろ?
あと、小遣いもやらんで』

ばあちゃんは、いつも私を小さく扱う。

『ご心配なく、ちゃんと稼いでますから!』

ふん!っと寝転んだ体勢から勢いよく
座り直す。

ばあちゃんは、私の方を向いて

『それなら、安心やなぁ』と
ニカっと笑って
私の頭を2、3度ポンポンと叩いた。

ふと見ると、桜の花びらが
ばあちゃんの髪に引っ付いている。

一瞬迷ったけど、なんだかそのままで
良いような気がして言わなかった。

この時間が、どれほど大切なのか
きっと2人して分かっているのだ。

だから、来年の春もばあちゃんと
この縁側で過ごすのだ。
春だけじゃなく、夏も秋も…

口は悪いし、煙草の煙は嫌だけど。

この縁側は…もうずっと
ばあちゃんの匂いがするから。


【お題:春爛漫】

3/26/2025, 1:07:50 PM

七色、ひとつひとつに

僕の気持ちを織り込んで
君の足元まで、虹色の橋をかけよう。

そうすれば、消えることなく
偶然でもなく

ずっと君の傍にいられるだろう?



そう、書き遺された文字は弱々しく
最後のほうは、読み取るのも
難しいくらいだった。

白い紙に書かれたその文字に
涙が溢れて、汚れてしまわぬように
私は顔を上げて静かに嗚咽した。

これ以上ないくらいの
貴方からの精一杯の言葉に愛情に
私はどうしたらいいの?

白い煙になって、旅立つ貴方を
見送ろうと…外に出ると
青空に、消えかけた虹が見える。

私の足元に、虹色の橋なんて
ないじゃない。
目の前に、居てくれなくちゃ
触れる事も叶わないじゃない。

それでも。
それでも、瞳を閉じると
ちゃんと見えたよ。

貴方の気持ちの七色も
私に、寄り添う優しい声も。

【お題:七色】

3/23/2025, 7:37:02 AM


どうしようもない
恋をしてしまった。

それは、別れれば終われる
という簡単なものじゃなくて…

離れれば、忘れられるという
距離や環境の問題でもなくて…

痛みや喜びを感じると
当たり前のように涙が溢れるような。
そんな、人に
出会ってしまったのだから。

byebye…?

それを伝えても
引きずる思いの質量は永遠に変わる
はずもなく。

またひとつ、夜を越えてしまう。


『お題:byebye』

3/19/2025, 12:33:19 PM


『どこ?』って

聞ける人が、居るのは
羨ましいな。
聞かれる人も、羨ましいな。

その人の帰りを待っているのかな。
それとも、待ち合わせかな。

この世界には
たくさんの『どこ?』が
溢れているんだね。

子どもも、大人も関係なく。

今日もきっと沢山の人たちが
『どこ?』っていう
やり取りを、しているんだね。


【お題:どこ?】

3/16/2025, 2:59:57 PM


あたたかな日差しが
私の午後を、優しく照らします。

少し眠気を誘うような
ぽかぽかとした、今日という日は
最高に贅沢な気がする。

窓から眺める景色と
ふわりと風で、大きく膨らむ
レースの薄いカーテン。

キレイなガラス細工の施された
大好きな花瓶は、床で砕けている。

その横に、あの人も転がっている。

パキパキと砕けたガラスを
踏みながら
床に散らばった花を一輪ずつ
そっと拾い集めた。

その花で、丁寧に花輪を作り上げ
自分の頭の上に乗せてみる。

今日という日が終わるのが残念だ。
ほんのひととき、この瞬間まで
私の人生は最高だった。


【お題:花の香りと共に】

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