NoName14

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4/14/2025, 12:14:57 PM


求められた、役割を託されるたびに
合わない仮面を付けていました。

頬や鼻や唇が
仮面の下で擦り切れても
それを、こなさないと夜も
眠れないから。

誰かが、負担を背負うなら
嫌な思いをしてしまうのなら

『私に、貸して』と仮面を付ける。

けれど、心の中ではずっと考えている。
コレは私じゃないって。

周りに人は、たくさんいるのに
ずっとある孤独感。
わたしは、開けなくていい引き出しを
幾つも開けては
自分の駄目なところばかり探してるんだ。

本当は、沢山持っているのに
仮面を付けない、私でも良いのに。

この合わない仮面は、境界線だ。
自分と他者を擦り合わせようとする
私のエゴだ。

何もかもを、取り払えたら
そこから先は…きっと、きっと。。


【お題:未来図】

4/12/2025, 3:11:49 PM


桜は、良い。
散るから良い。

その美しい風景の余韻が
また来年も…と、思わせるから。

あっという間に、過ぎゆく
私の人生に
きっと、同じ桜など咲かない。

だからこそ、毎年
僅かなその時期を心から
楽しめる。

けれど、桜に限らず…なのだ。

同じような日々だと思っている
いま、この時でさえ
全く同じなど、あり得ない。

匂いも、風も、雨粒も
太陽の光や道端の草花も
命を揺らして、囁いている。


『今日という日を生きなさい』と。


【お題:風景】

4/8/2025, 1:11:37 PM


遠い約束

風化してしまわぬように
時折、口にだして
呟いていた。

きっと、何の意味も無いけれど。

それでも、無かったことになるのが
こわかったんだ。

遠い約束。

この手に手繰り寄せて
叶える事が、出来ないのなら
もういっそのこと
忘れてしまえと、口を噤んだ。


【お題:遠い約束】

3/27/2025, 3:42:31 PM


ばあちゃん家の縁側

庭には、梅に木蓮…それと桜が植えてある。
休みの日には時間があると
この縁側に吸い寄せられるように
近所のばあちゃん家に来てしまう。

ポカポカとした陽気が
心地よくて、ぶらぶらとつま先に
引っかけていた
ばあちゃんのつっかけが片方
ポテっと、落っこちた。

それも、お構いなしに
ゴロゴロとしていたら

『まったく、だらしない孫だね』

と、鼻で笑うように
ばあちゃんが奥の部屋から出て来た。

咥え煙草のばあちゃんは
お盆を、ぶっきらぼうに縁側に置くと

ふーっと煙を吐いた。

どっちが、だらしないんだよ…
なんて思いつつ
お盆に目をやると煎餅やら団子に
チョコレート…それにいつもの渋いお茶が
雑多に盛られていた。

『いいの!春うらら!
私は春を満喫してるんだから』

そう言いながら、どれにしようかなと
チョコレートを口に放り込む。

ばあちゃんは、ニヤっと笑って

『春は、木の芽時言うて
体調悪うしたり、おかしな奴もおるけどな』

…ばあちゃんは、いつもちょっとだけ
意地悪だ。

『そんなら、煙草辞めなよ。』

お茶を啜りながら、尚もぷかぷかと
煙草を燻らせるばーちゃんは
庭を眺めながら、笑った。

『今更、やめてもお迎えの方が早いわ』

私は、そうですか…と
期待通りのばあちゃんの返事を
聞きながら、次は煎餅に手を伸ばす。

煎餅を、バリバリと頬張りながら
庭を眺めるばあちゃんの横顔を見つめた。

そろそろ80を迎えるにしては
背筋は真っ直ぐに伸びて
いつも、どこか凛としている。
じいちゃんは、早くに亡くなって
家も庭も守りながら私の父や叔父さんたちも
女でひとつで、育ててきたのだから
そういうものなのだろうか。

『そんなに見ても、何も付いてないやろ?
あと、小遣いもやらんで』

ばあちゃんは、いつも私を小さく扱う。

『ご心配なく、ちゃんと稼いでますから!』

ふん!っと寝転んだ体勢から勢いよく
座り直す。

ばあちゃんは、私の方を向いて

『それなら、安心やなぁ』と
ニカっと笑って
私の頭を2、3度ポンポンと叩いた。

ふと見ると、桜の花びらが
ばあちゃんの髪に引っ付いている。

一瞬迷ったけど、なんだかそのままで
良いような気がして言わなかった。

この時間が、どれほど大切なのか
きっと2人して分かっているのだ。

だから、来年の春もばあちゃんと
この縁側で過ごすのだ。
春だけじゃなく、夏も秋も…

口は悪いし、煙草の煙は嫌だけど。

この縁側は…もうずっと
ばあちゃんの匂いがするから。


【お題:春爛漫】

3/26/2025, 1:07:50 PM

七色、ひとつひとつに

僕の気持ちを織り込んで
君の足元まで、虹色の橋をかけよう。

そうすれば、消えることなく
偶然でもなく

ずっと君の傍にいられるだろう?



そう、書き遺された文字は弱々しく
最後のほうは、読み取るのも
難しいくらいだった。

白い紙に書かれたその文字に
涙が溢れて、汚れてしまわぬように
私は顔を上げて静かに嗚咽した。

これ以上ないくらいの
貴方からの精一杯の言葉に愛情に
私はどうしたらいいの?

白い煙になって、旅立つ貴方を
見送ろうと…外に出ると
青空に、消えかけた虹が見える。

私の足元に、虹色の橋なんて
ないじゃない。
目の前に、居てくれなくちゃ
触れる事も叶わないじゃない。

それでも。
それでも、瞳を閉じると
ちゃんと見えたよ。

貴方の気持ちの七色も
私に、寄り添う優しい声も。

【お題:七色】

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