気になるあの子のことが頭から離れなくて、頭を冷やそうと外に出る。
頬に当たる風が冷たい。
秋色から冬に季節が一気に進んだ気がした。
空を見上げると冬空の大気は澄んで星をより眩い。
たくさんの星空が輝いていて、キラキラした彼女の瞳を思い出してしまう。
自分が彼女に惹かれているのは、なんとなく察してる。
でも、認めるのが怖いんだ。
頭を冷やそうと思ったのに、かえって彼女を思い出してしまうほど、想いは募っているのだと痛感した。
おわり
五六四、凍てつく星空
今日は恋人と一緒に役所に行って書類を提出する。それは何事もなく受理されて、俺と彼女は正式な家族になった。
家に帰ってから、用意していたプラチナのリングをお互いの薬指にはめ合う。
その時の彼女は頬を赤く染めて、口元が緩んでいる。
「うふふ、嬉しいです」
「俺もだよ」
薬指の指輪を改めて見て、俺に向けて見せてくれた。
「家族のしるしです!」
えへんと胸を張る姿がまた愛らしい。
「これからもよろしくね」
「はい!」
そう、これからも共に。
おわり
五六三、君と紡ぐ物語
前までは一人で暮らしていたから、自分の力で起きなきゃいけなかった。
無機質な目覚まし音は盛大な音で鳴り響かせてようやく目が覚める。
――
「おはようございます!」
恋人が俺の身体を揺すってくる。
彼女の愛らしい声が心地よくて俺はこのまま眠れそうです。
「もー、起きないと朝ごはん冷めちゃいますよー!」
その言葉を聞き、眠りから意識が戻ってくる。気がつけばパンの焼けたいい匂いがして、お腹が空いていることも思い出させた。
目を擦りながらゆっくり身体を起こす。
愛しい彼女がふわりと微笑んでから、俺の身体をギュッと抱きしめてくれた。
「おはようございます」
「ん、おはよ」
無機質な目覚まし時計の音は、もう響かない。
おわり
五六二、失われた響き
しんと静まり返った朝。
無音という音が響き渡る。
なんだかいつもより寒くて身体がブルっと震えた。
ベッドの中では恋人と肌を寄せあっているけれど、かけているマルチケットでは肌寒いと感じて目が覚める。
彼女が同じように寒くならないように、するりとベッドから抜け出た。
ああ、これは寒い。
そろそろ厚手のパジャマを用意しないといけないなと考えながら、大きいブランケットを彼女にかけてか、ベッドに潜り込む。
ほんの少しだけ冷気が彼女に触れた瞬間、むにゃむにゃと動くけれど上から抱きしめると安心したように眠りについた。
もうすっかり冬だな。
おわり
五六一、霜降る朝
最近、身体が疲弊しているのは知っていた。
それでも救急隊員として、気軽に休めない時がある。
〝少しだけの無理〟を沢山した結果、休みの日には全く動けなくなった。
鍛え方が足りないと言われたらその通りなんだけど。それでも疲労は蓄積するものです。
一緒に住んでいる恋人は、俺のその様子に何日か経った頃にはフォローの動きが増えていた。
家事の当番を交代してくれたり、夕飯を好きなものにしてくれたり、お風呂の入浴剤を疲労回復するちょっと高いやつにしてくれたり。
彼女の仕事も時々繁忙期が来るので、俺はその時に全力でお返しさせていただきます。
そんなことを思いながら、今日も至れり尽くせりでベッドに倒れ込む。
「ちゃんとお布団の中に入ってくださいね」
過去にベッドの上で寝落ちしていること数回。その経験から彼女はベッドに倒れた俺を見に来てくれる。
本当に面目ない。
でも、今日はもうひとつ、ごめんなさい。
俺は彼女の手を取り抱きしめる。
「うわ」
最近ね。仕方がないとはいえひとりで眠るのが寂しくて、少しだけ息苦しかった。
「ごめん。このまま……」
お風呂上がりで自分の体温もまだ熱いけれど、それでも彼女の甘い香りと温もりには勝てない。
「仕方がないですねぇ」
そんな声が聞こえた気がする。
俺は彼女の声を聞きながら意識を手放した。
おわり
五六〇、心の深呼吸