とある恋人たちの日常。

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 最近、身体が疲弊しているのは知っていた。
 それでも救急隊員として、気軽に休めない時がある。
 〝少しだけの無理〟を沢山した結果、休みの日には全く動けなくなった。
 
 鍛え方が足りないと言われたらその通りなんだけど。それでも疲労は蓄積するものです。
 
 一緒に住んでいる恋人は、俺のその様子に何日か経った頃にはフォローの動きが増えていた。
 
 家事の当番を交代してくれたり、夕飯を好きなものにしてくれたり、お風呂の入浴剤を疲労回復するちょっと高いやつにしてくれたり。
 
 彼女の仕事も時々繁忙期が来るので、俺はその時に全力でお返しさせていただきます。
 
 そんなことを思いながら、今日も至れり尽くせりでベッドに倒れ込む。
 
「ちゃんとお布団の中に入ってくださいね」
 
 過去にベッドの上で寝落ちしていること数回。その経験から彼女はベッドに倒れた俺を見に来てくれる。
 
 本当に面目ない。
 でも、今日はもうひとつ、ごめんなさい。
 
 俺は彼女の手を取り抱きしめる。
 
「うわ」
 
 最近ね。仕方がないとはいえひとりで眠るのが寂しくて、少しだけ息苦しかった。
 
「ごめん。このまま……」
 
 お風呂上がりで自分の体温もまだ熱いけれど、それでも彼女の甘い香りと温もりには勝てない。
 
「仕方がないですねぇ」
 
 そんな声が聞こえた気がする。
 俺は彼女の声を聞きながら意識を手放した。
 
 
 
おわり
 
 
 
五六〇、心の深呼吸
 
 
 

11/27/2025, 2:06:58 PM