日本の年の瀬ということで、お蕎麦を準備する。
恋人は今日仕事納め、明日仕事始めでどうしてもこの時期は忙しくしていた。だから、彼を支えたくて家事を協力する。
料理が得意という訳じゃないけれど、彼に喜んでもらいたくて毎日お昼はお蕎麦の練習をしていた。
その甲斐あってか、お蕎麦を喜んで食べてもらえた。
「おいしかった〜、ごちそうさまでした〜!!」
「おそまつさまでしたー!」
食べ終わって落ち着くかと思いきや、彼が片付けようとするもんだから手のひらを正面に出して彼を止めた。
「だめです、ゆっくり休んでください!」
ピシャリと言い切るとなにか反論がありそうな顔をされるが、今日もお仕事で疲れているに違いないんだ。
明日も仕事なんだから、こういう時はゆっくりして欲しいの。
そう思って私は彼をソファに追いやってから急いで片付ける。
コソ練していたから片付けもお手のもので、洗い物も済ませてから暖かいココアを用意してから彼の座っているソファに向かった。
「あ」
腕を組んだままこっくりこっくりと首を動かしていた。
やっぱり仕事、お疲れじゃないですか。
彼の無防備な寝顔を見ていると自然と口元が緩んじゃう。
この寝顔は私だけのものだ。
お風呂を沸かしたら彼を起こそう。
その後で寝る前に言うんだ。
良いお年を、ってね。
おわり
五九四、良いお年を
玄関に入るといつものように恋人がひょこっと顔を出して、パァと弾けた笑顔で俺に飛び込んでくる。
「おかえりなさーい!」
「ん、ただいま」
正面から俺の胸に飛び込んではぎゅーっと抱きつく。これが俺たちの日課だ。
「冷たいですー」
「外、寒かったからね」
そう答えると、彼女はむーと頬を膨らませてからもう一度俺の身体を強く抱き締めた。
「あったかくなーれ」
そうやって自分の体温を分けてくれる彼女に自然と頬が緩んでしまった。
俺は今、星に包まれている。
星の名前を持った恋人に。
おわり
五九三、星に包まれて
今年の終わりも近づき、世間は慌ただしそうだ。
私は仕事納めをしているけれど、恋人はお医者さんだから年の瀬は仕事をしていた。
私は彼を助けたくて家事をしておく。
少しでも彼が家にいる時、リラックス出来るようにね。
年末年始のお休みが穏やかに終わってから、のんびりと過ごすことを楽しみに彼のフォローをしていこう。
おわり
五九二、静かな終わり
あまり本を読むのは得意じゃないんだけど……ちょっと気になった本を買ってみた。
このご時世だからデジタルで買っても良かったんだけど、手触りやページをめくる音も大切にしたくて紙の本を買ってしまったわけです。
年末年始は仕事だから恋人が身体を労わって欲しいと言うから最後の休みをのんびり過ごすことにした。
ぼんやりするのも悪くはないんだけど、恋人が隣にいて、温かいココアの香りが漂っている。そんな中で本を読む時間はとても贅沢だ。
ぱらり。
俺は本の世界に旅立つ。
ぱらり。
何回かめくっていると、彼女が体勢を変えて俺の膝に頭を乗せた。
「どうしたの?」
「んーん。紙の音が心地よいから少しお休みします」
そういうと嬉しそうな顔をしつつ瞳を閉じる。
その表情が愛らしくて胸が暖かくなった。
俺はもう一度本の中に旅立つ。
彼女のぬくもりを感じながらの読書は、最高に幸せだと思った。
おわり
五九一、心の旅路
寒くて目を覚ます。
隣で恋人が眠っている暖かいベッドから抜け出した。
ドアを開けると、眩い光と一緒に冷たい空気が入ってガラスが白くなっていく。
この寒さはおかしい。
私はドアを閉めて色々を見ていると、空気の入れ替えで窓を少し開けていたことを思い出す。
開けていた扉を閉めつつ、時計を見るともう起きた方がいい時間だった。
加湿器と暖房をつける。
彼が起きた時にはご飯が食べられるよう準備しちゃおうかな。
そう思った私は洗面所に足を向けた。
凍る……には程遠いけど白くなった鏡を濡らしたタオルで拭いていく。
さあ、新しい一日を始めよう!
おわり
五九〇、凍てつく鏡