毎年毎年、恋人にあげているバレンタインのチョコ。
普通のチョコにしたり、ホットチョコにしたり、結構工夫を凝らしてた。
でも、そろそろネタ切れになりそう〜と頭を抱えている。
うーん、どうしよー。
……色々考えても何も浮かばない。
自然と天井を見つめる。
瞳を閉じて彼のことを考えた。
初めて会った時も、優しくしてくれて、いつの間にか目が離せなくなった人だということ。
まだ恋人になる前に、おすそ分けでプレゼントした手作りチョコアイス。
その瞬間、目がパチッと開いた。
チョコアイス。
そうだ、チョコアイスだ!
あの時あげたチョコアイスは会社の社長にお世話になったから、そのお礼で作ったものだ。
彼のために作ってない。
私はその瞬間に冷蔵庫の扉を開いた。
牛乳もある、チョコレートは当然買ってある。
お菓子を使うかもしれないと思って用意した生クリームもある。
これだ!!
彼のためだけに気持ちを込めてチョコアイスを作ろう。
あの時とは違うチョコアイスをね。
そんなことを考えながら、私は材料を取り出して作業を開始した。
あの時のチョコアイス。
覚えていてくれているかな?
分からないけれど、喜んでくれたら嬉しいな。
おわり
六三九、バレンタイン
気になる彼の先輩が、この場所に彼が困っていると教えてくれた。
「彼を助けてあげてくれる?」
そう笑顔で修理代を先に払ってくれる。
ちょうど手が空いているのは私だけで、私が彼をどう思っているか、知らない……よね?
「早く行ってあげて」
彼の先輩は私の心を見通すように柔らかく微笑んでくれた。
気づかれているのかもしれない。
だとしたら、私はこの人に背中を押されている、そう思った。
私は深呼吸をして心を決めて彼の先輩を見つめた。
「はい、行ってきます!」
私は急いで出かける支度をして職場を出て、バイクにまたがった。
待っててください、今行きます!
おわり
六三八、待ってて
抑えている私の気持ち。
もう止められないくらいに溢れていた。
どうしよう……。
私は自分の身体を抱きしめる。
力強く抱きしめていても力が抜けていくみたい。
伝えたい。
伝えたい?
ホントウニ?
伝えたい。
そんな気持ちが溢れて。
同時に涙も溢れてきた。
このままこの気持ちも零れ落ちてしまえばいいのに。
おわり
六三七、伝えたい
彼女と初めて出会った場所。
彼女と友達になった場所。
そしてここは、彼女を気になるようになった場所。
乗り物が壊れて動けなくなった。
ひとり自己嫌悪している時に現れてくれた彼女。
寂しいことは苦手だったし、本当にやらかしていたから、さらに落ち込んでいる時だったんだよ。
該当の灯りを背中に俺を心配する声。
にこやかに出てきた彼女は、いつもの無邪気さよりもキレイで、俺の胸が高鳴ったんだ。
あれからより遊ぶようになって。
俺が守りたいって思っていたけれど、自分の足で立てる程に強くなっていた彼女。
そこに寂しさはあるけど、頼もしさの方を感じて目が離せない。
自然と目が合うことも多くなっていて、いつしか彼女をひとりじめしたい。そんなふうに思ってしまった。
俺だけを見て欲しい。
それを彼女に、伝えに行こう。
俺は車を走らせた。
きっかけのこの場所から、彼女との待ち合わせの場所へ。
おわり
六三六、この場所で
私の恋人はお医者さんです。
この都市に来たのは私と変わらない頃って言ってました。
少しずつ人々に頼られる優しいお医者さんになっていって、私は少し誇らしい。
誇らしいけどプレッシャーもある。
彼に想いを寄せた人たちもいたらしい。
でも彼が選んでくれたのは私だから、彼が自慢できる彼女でありたい。
仕事は優先だけど、彼のことを考える時は彼を優先にしたいんだ。
なんでも言うこときくみたいな話じゃなくて、誰よりも彼を大切にしたい。
彼がゆっくり休める場所を作るんだ。
もちろん、一緒に。
おわり
六三五、誰もがみんな