気になる彼の先輩が、この場所に彼が困っていると教えてくれた。
「彼を助けてあげてくれる?」
そう笑顔で修理代を先に払ってくれる。
ちょうど手が空いているのは私だけで、私が彼をどう思っているか、知らない……よね?
「早く行ってあげて」
彼の先輩は私の心を見通すように柔らかく微笑んでくれた。
気づかれているのかもしれない。
だとしたら、私はこの人に背中を押されている、そう思った。
私は深呼吸をして心を決めて彼の先輩を見つめた。
「はい、行ってきます!」
私は急いで出かける支度をして職場を出て、バイクにまたがった。
待っててください、今行きます!
おわり
六三八、待ってて
抑えている私の気持ち。
もう止められないくらいに溢れていた。
どうしよう……。
私は自分の身体を抱きしめる。
力強く抱きしめていても力が抜けていくみたい。
伝えたい。
伝えたい?
ホントウニ?
伝えたい。
そんな気持ちが溢れて。
同時に涙も溢れてきた。
このままこの気持ちも零れ落ちてしまえばいいのに。
おわり
六三七、伝えたい
彼女と初めて出会った場所。
彼女と友達になった場所。
そしてここは、彼女を気になるようになった場所。
乗り物が壊れて動けなくなった。
ひとり自己嫌悪している時に現れてくれた彼女。
寂しいことは苦手だったし、本当にやらかしていたから、さらに落ち込んでいる時だったんだよ。
該当の灯りを背中に俺を心配する声。
にこやかに出てきた彼女は、いつもの無邪気さよりもキレイで、俺の胸が高鳴ったんだ。
あれからより遊ぶようになって。
俺が守りたいって思っていたけれど、自分の足で立てる程に強くなっていた彼女。
そこに寂しさはあるけど、頼もしさの方を感じて目が離せない。
自然と目が合うことも多くなっていて、いつしか彼女をひとりじめしたい。そんなふうに思ってしまった。
俺だけを見て欲しい。
それを彼女に、伝えに行こう。
俺は車を走らせた。
きっかけのこの場所から、彼女との待ち合わせの場所へ。
おわり
六三六、この場所で
私の恋人はお医者さんです。
この都市に来たのは私と変わらない頃って言ってました。
少しずつ人々に頼られる優しいお医者さんになっていって、私は少し誇らしい。
誇らしいけどプレッシャーもある。
彼に想いを寄せた人たちもいたらしい。
でも彼が選んでくれたのは私だから、彼が自慢できる彼女でありたい。
仕事は優先だけど、彼のことを考える時は彼を優先にしたいんだ。
なんでも言うこときくみたいな話じゃなくて、誰よりも彼を大切にしたい。
彼がゆっくり休める場所を作るんだ。
もちろん、一緒に。
おわり
六三五、誰もがみんな
何をきっかけにそう思ったのか忘れちゃったんだけど、『彼女に似合う花ってなんだろう』って思った。
いちばん似合うのは白だと思うけど白だらけにしてしまうと、手向けの花みたいだな。
そうじゃなくて!
色が薄くて、青色系がいい。
俺と彼女ふたりが好きな色。
どうでもいいことなのに、考えたら止まらなくなってしまった。
もちろん仕事の時は違うよ。
仕事は仕事だからね。
でも仕事から離れると、つい彼女に似合う花を探してしまう。
そもそも青い花が難しいもんな。
夕飯の買い出しで入ったスーパーで当たり前のように置いてある花束に目が行った。白い小さな花がふわふわと集まっている花。
これって、かすみ草……かな。
でも色が付いてる?
かすみ草って白以外あったっけ?
そんなことを考えつつ、色とりどりのかすみ草についてスマホで調べてみた。
水色のかすみ草は本来存在している色ではなくて、白い花に色をつけているんだって。
ついでに花言葉は『清い心』『無邪気』『誠実』。
本当は思いやりに関する花言葉があるとさらに良かったんだけど、この三つでも十分だと思ってしまった。
小さくて守りたくなる花。
それだけの花束でも柔らかい存在感。
自然な花じゃないんだけどさ。
彼女に似合いそうだな。
そう思ったら自然と顔が緩んでしまった。
おわり
六三四、花束