前までは一人で暮らしていたから、自分の力で起きなきゃいけなかった。
無機質な目覚まし音は盛大な音で鳴り響かせてようやく目が覚める。
――
「おはようございます!」
恋人が俺の身体を揺すってくる。
彼女の愛らしい声が心地よくて俺はこのまま眠れそうです。
「もー、起きないと朝ごはん冷めちゃいますよー!」
その言葉を聞き、眠りから意識が戻ってくる。気がつけばパンの焼けたいい匂いがして、お腹が空いていることも思い出させた。
目を擦りながらゆっくり身体を起こす。
愛しい彼女がふわりと微笑んでから、俺の身体をギュッと抱きしめてくれた。
「おはようございます」
「ん、おはよ」
無機質な目覚まし時計の音は、もう響かない。
おわり
五六二、失われた響き
11/29/2025, 1:17:29 PM