とある恋人たちの日常。

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5/14/2025, 12:22:36 PM

 
 仕事に追われて余裕がなくなってくる。冷静にならなきゃダメなのに、それが難しくなってきていた。
 出動の連絡が入る。
 俺は着替えて準備を行い、出動した。
 
 そんな感じで今日の仕事は中々休憩が取れないうえ、残業してようやく落ち着いたから家に帰る。
 
 体力的には余裕はあっても、なんというか息苦しい。身体も足も重いからより窮屈感があった。
 
「ただいまぁ……」
 
 家の玄関を開けて小さくそう言うと、奥から恋人がすっ飛んで来て、俺の胸に飛び込んでくる。
 
「おかえりなさいっ! 心配しました!!」
 
 心配?
 あ。
 俺はスマホを取りだすと、画面に通知があった。
 
『遅くなりますか?』
『なにかありましたか?』
『電話ください』
 
「あああああ、ごめん。仕事が忙しくて余裕なくて見てなかった」
 
 彼女は俺の身体を力強くぎゅうううっと抱きつく。
 
「いいです、無事なら。おかえりなさい」
 
 力を抜いてから俺を見上げ、ふわりと笑ってくれる彼女を見ていると内側から込み上げてきて、俺も彼女を抱きしめて顔を埋めた。
 
「ただいま」
「うふふ。おかえりなさい」
 
 今度は優しく抱きしめてから、俺の背中をポンポンと軽い力で叩いてくれる。
 彼女の温もりを身体で感じていると心が軽くなって、澄んだ空気が身体に入り込んだ。
 
 力を抜いて、改めて彼女の顔を見ると、嬉しそうに微笑んでくれた。
 
 ああ、癒される。
 
 
 
おわり

 
 
三六三、酸素

5/13/2025, 1:27:44 PM

 
「そういえばさ、いつから俺のこと好きになったの?」
「ふえ!?」
 
 ソファに座って彼女に質問をすると、飛び跳ねるくらいにびっくりしていた。
 
「え、そんなに驚く?」
「いや、だっていきなり言うんだもん……」
「あ、ごめん。いきなりじゃなくてね」
 
 俺はデジタルフォトフレームを指した。
 
「帰ってくる前にフォトフレームの写真を見ていたんだけど古いのがあってさ。付き合うかなり前のイベントのやつ。俺、あのイベントに君が居たの知らなかったからビックリしちゃって」
「イベント……?」
 
 彼女は眉間に皺を寄せて思考をめぐらせている。そしてなにかに思いついたようだった。
 
「あの写真、入ってたんてすか?」
「え、入れたんじゃないの?」
「違います、抜き忘れました!!」
 
 それ、俺に言っていいのかな?
 
 慌てる彼女を横目にそんなことを思った。
 彼女はスマホを取り出してデジタルフォトフレームの写真を確認し始める。指でスライドしまくっていた。
 横からスマホの画面を覗くと大量の写真が流れている。
 
 凄いな。
 まるで俺たちの記憶の海みたいだった。
 
 
 
おわり
 
 
 
三六二、記憶の海

5/12/2025, 11:18:39 AM

 
 うーん。
 少しだけ胃がムカムカするというか……。
 
 俺は病院の裏にある公園でひとり座っていた。
 都会の喧騒の中でひとりで天を仰ぐ。眩い光が差し込んで暖かいけれど、心の中にあるトゲが身体を冷やしていた。
 
 そうだな。
 俺は今、怒っているんだ。
 
 目を閉じて深くため息を着く。
 脳裏に浮かぶのは、想いを寄せる彼女のなんとも言えない顔だった。
 呆れたような、悔しそうな顔。
 
 いつもキラキラとした笑顔を見せてくれる彼女。
 先日、悩みを聞いたら想像より重い相談が来て驚いた。あの時も悲痛な表情を初めて見て胸が締め付けられた。
 
 今回は、同期の友人が何度も何度も人に迷惑をかけていて……。公正して欲しくて手を差し出していたのに、彼女の友人はそれを無碍にしていた。
 
 その事を知ったのはたまたま見かけて話を聞いた時に、その友人について相談されたからなんだけれど……。
 
 ダメだな。
 時間が経てば経つほど腹が立ってくる。
 
 本当に彼女を面倒なことに巻き込まないで欲しい。
 
 医者としてじゃなく、ひとりの人間として思う。
 俺は彼女に笑って欲しいのに。
 
 ただ彼女だけには――
 
 
 
おわり
 
 
 
三六一、ただ君だけ

5/11/2025, 11:29:16 AM

 
 先日、俺には天使のような家族が増えまして。
 愛しい奥さんが天使を連れてきてくれました。
 
 出産にも立ち会ったし、許可を貰って抱っこさせてもらったけれど、天使の命の重さに涙が溢れた。
 
 そして俺は改めて自覚する。
 父親になったのだと。
 
 まだ彼女と天使は病院にいるけれど、俺は仕事をしつつ、立ち寄れる時間は彼女たちに会いに行く。
 
 顔を見るたびに、気が引き締まるんだ。
 俺は手のひらに視線を向けて、ゆっくり拳を握る。
 
「頑張ろう」
 
 そう、呟いて空を仰いだ。 
 
 俺は天使の未来を背負ってる。
 彼女を大切にして、彼女と手を取って、俺たちの天使の未来の船を出せるように頑張るんだ。
 
 
 
おわり
 
 
 
三六〇、未来への船

5/10/2025, 1:49:46 PM

 
 都会の喧騒には慣れたものだけれど、心が疲弊することもある。
 まあ、それは俺も恋人も元々は都会ではないところから来て生活しているからだと思う。
 
 俺の職場は中心部にある救急隊だから、慣れたものだけれど、それでも削られるものがあった。
 
 無意識に顔に疲れが出たみたいで、恋人が休みにお出かけしようと言ってくれた。
 
「そんなに顔に出てた?」
 
 そんなわけで、彼女の運転している車に乗っている。ビル群から離れていき、少しづつ木々が増えていっていた。正直、どこへ行くかも分かっていないが、彼女は楽しそうに笑みを浮かべる。
 
「多分、他の人だと気がつかないかもですが……」
 
 運転しているから視線は俺に向けられることは無いけれど、頬を紅くして俺を包み込んだ。
 
「私はあなたの恋人ですから!」
 
 弾ける笑顔に胸が高鳴る。そこには彼女から俺への想いと一緒に恋人であることの〝誇り〟のようなものを感じて……運転中じゃなければ抱きしめたいくらいだ。
 
 自然と口角が上がり、座席に身体を沈めて瞳を閉じる。俺の様子を感じたのか、彼女は車のスピードを落として端に寄せてエンジンを落とした。
 
 車の通りも少なくて、風が吹くと木々が触れ合って音を響かせる。
 暖かい光と風が奏でる木々の音に荒んでいた心が穏やかになっていくのが分かった。
 
 風が止むと静寂の中に、静かな音を感じる。
 
 頬に彼女のやわらかい手が触れた。
 俺はその手に自分の手を重ねて、穏やかな時間を身を委ねた。
 
 
 
おわり
 
 
 
三五九、静かなる森へ

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