私には希望が無くて、何も出来ない自分が嫌で、私は逃げた。
初めてたどり着いた場所には真っ白なキャンバスのようで、何も描かれていない。
何も出来なかった。
必要とされなかった。
それが悲しくて、悔しくて。人見知りで、泣き虫の自分から抜け出したくて新天地を目指したの。
ここでどんな未来が待っているか分からない。
ひとりぼっちで、ずっと必要とされていなかったから、私はここで大切な人に出会いたい。そんな夢を持っていた。
大切な人に出会って、愛されたい。
でもそれ以上に、私だってその人を大切にしたい。
顔を上げると、同じように新天地を目指した人達が集まっていた。
さあ、行こう。
ここで、希望を描くんだ!
おわり
三五八、夢を描け
手を伸ばす。
その手は夜空に浮かぶ星をつかめない。
これだけ離れていれば当然だけれど、どうしても手を伸ばして求めてしまう。
届かない……。
パシッと手が何かに掴まれる。その衝撃で俺はぼんやりとしていた意識を現実に戻された。
手には暖かい恋人の手がしっかり掴まれている。
心配そうに彼女の瞳が、俺を捉えていた。
「大丈夫ですか?」
不安の色をまとった瞳なのに、俺は彼女を見ていると安心して彼女の手を掴んだ。
驚きとともに彼女がふわりと笑顔をくれる。
彼女の手を自分の額に寄せて瞳を閉じた。
俺の、俺の星には手が届いた。
おわり
三五七、届かない……
「あったかいなぁ……」
「あったかいですねぇ……」
木々の隙間からこぼれ落ちる光は、ベンチに座る俺と恋人に心地よい温かさをくれる。暑くなろうという季節の中、木陰が暑すぎる光を程よく遮断してくれて心を穏やかにしてくれた。
休みの日にアクティブに動くのも楽しいけれど、たまにはこんな風に恋人とまったりのんびりと、木漏れ日に身を委ねて過ごしてもいいかもしれない。
おわり
三五六、木漏れ日
一人でぼんやりしていると、つい口ずさむ歌があった。本当に癖のようになっていて俺自身が気がついてないことがある、らしい。
先輩にも、仲間にも言われて結構驚く。
無意識に歌っているから気が付かないんだけれど……
「歌っている曲、熱烈なラブソングが多いよね。彼女のこと想ってるの?」
そんなふうに言われたことがしばしばあって、図星だからこのクセをやめたいって思った。
おわり
三五五、ラブソング
以前、恋人に何か欲しいものはあるかと聞かれた時、散々悩んでラブレターと答えたことがあった。
正直、何か欲しいと言うより彼が選んでくれるならなんでも嬉しいんだよね。だから無理に何かって言われてもちょっと困った。
どの状態でくれるのか分からないけれど、聞かれてから結構経っているなぁ……。
いつくれるかな。
それとも恥ずかしくてくれないかな?
誕生日はもう過ぎたから……どのタイミングでくれるのか、少しだけ気になっちゃう。
その手紙を開く瞬間、どんな気持ちになるか今から楽しみだな。
おわり
三五四、手紙を開くと