とある恋人たちの日常。

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 仕事に追われて余裕がなくなってくる。冷静にならなきゃダメなのに、それが難しくなってきていた。
 出動の連絡が入る。
 俺は着替えて準備を行い、出動した。
 
 そんな感じで今日の仕事は中々休憩が取れないうえ、残業してようやく落ち着いたから家に帰る。
 
 体力的には余裕はあっても、なんというか息苦しい。身体も足も重いからより窮屈感があった。
 
「ただいまぁ……」
 
 家の玄関を開けて小さくそう言うと、奥から恋人がすっ飛んで来て、俺の胸に飛び込んでくる。
 
「おかえりなさいっ! 心配しました!!」
 
 心配?
 あ。
 俺はスマホを取りだすと、画面に通知があった。
 
『遅くなりますか?』
『なにかありましたか?』
『電話ください』
 
「あああああ、ごめん。仕事が忙しくて余裕なくて見てなかった」
 
 彼女は俺の身体を力強くぎゅうううっと抱きつく。
 
「いいです、無事なら。おかえりなさい」
 
 力を抜いてから俺を見上げ、ふわりと笑ってくれる彼女を見ていると内側から込み上げてきて、俺も彼女を抱きしめて顔を埋めた。
 
「ただいま」
「うふふ。おかえりなさい」
 
 今度は優しく抱きしめてから、俺の背中をポンポンと軽い力で叩いてくれる。
 彼女の温もりを身体で感じていると心が軽くなって、澄んだ空気が身体に入り込んだ。
 
 力を抜いて、改めて彼女の顔を見ると、嬉しそうに微笑んでくれた。
 
 ああ、癒される。
 
 
 
おわり

 
 
三六三、酸素

5/14/2025, 12:22:36 PM