好きな彼女に想いを告げたんだけど……鳩が豆鉄砲を食らったような顔で俺を見つめ返してくる。
だめ……かな。
沈黙が続けば続くほど恐怖で背中に冷や汗が滝のように流れてた。
「えっと……俺のこと、好きになれない?」
「いえ……嫌いになれません」
それだけ言って、俺の胸に飛び込む。俺は嬉しくなって口角が上がった。
俺の肩を掴んだかと思うと、背伸びして俺の耳元から小さく囁いてくれる。
「わたしもだいすきです」
彼女の言葉に今度は俺の方が驚いて彼女を見つめ返した。
してやったり。と言わんばかりの彼女の微笑みが更に俺の心をときめかせる。
「だから嫌いになんてなれません」
おわり
三四八、好きになれない、嫌いになれない
明日が休みだから恋人と徹夜で映画を見るぞー!と息巻いて色々準備して映画を見ていた。ふたりが気になる映画をチョイスして見ていくうちに夜が明け、ふたり揃って寝落ちしていた。
いや、この映画は面白くてエンドロールまで辿り着いた記憶がある。
その時は彼女も起きていた……のに、ふたりともエンドロール中に寝落ちとか。
仲良いにも程がある。
なんて思いながら、俺に寄りかかって眠っている彼女を見つめた。
このまま寝かせよう。
俺は彼女を傾けて立ち上がろうとした。するときゅっと腕が絡まる。
「ごめん、起こした?」
「ん……」
目は開かない。うつらうつらしながら俺によりかかって元の体勢に戻される。
「ベッド行こ。それとも起きる?」
すると、やっぱりむにゃむにゃしながら俺の耳元に小さく囁いた。
「んーん、そばにいる」
俺の欲しい回答ではなかったのだけど……ハートを鷲掴みにした言葉をもらってしまい、俺は諦めて彼女に寄りかかり眠る体勢をとる。
夜は明けたけれど……おやすみなさい。
おわり
三四七、夜が明けた。
ぼんやりと彼女と一緒にいると、彼女がとても綺麗で目が離せない時がある。
色素の薄い髪色が光を透き通らせる。
ふとした瞬間に見せる笑顔を見ていると、いつだって胸がときめくんだ。
「どうしましたか?」
無垢な笑顔が俺を捕えた。俺は手を伸ばして彼女の頬に手を添える。
「好きだよ」
それだけ伝えると、徐々に彼女の頬が紅くなって俺から視線を逸らした。あわあわと慌てていたけれど、一息ついてから俺を見つめ直して笑顔をくれた。
「私も……です」
おわり
三四六、ふとした瞬間
部屋がいつも以上に広く感じる。
というのも、今日は恋人が会社の友人たちと旅行に行ってしまった。
元々決まっていた予定だから特に何か思うことじゃないのだけれど……。
「さみしいー……」
俺は小さく呟きながらソファにゴロンと寝転がる。
俺が出張している時にも寂しさはあったんだけど、普段ふたりで過ごす家に独りで居るのは寂しさを加速させた。
それどころか、彼女の体温を欲してしまい、人恋しさ極まってる。
彼女は彼女で楽しい時間を過ごしているのは分かっているけど……。
「あー、会いたいー……」
毎日会ってる。
毎日抱きしめあってる。
それだけに会えないことが、こんなに心が冷えるとは思わなかった。
俺は身体を起こして立ち上がって外を見つめると夜空が広がる。星がきらきらと煌めいて、その輝きが彼女の嬉しそうに笑う時の瞳を思い出した。やっぱりきらきらしていて……それが愛おしい。
きらきらきらきら。
ポコン。
スマホから音が鳴る。そのままスマホを覗くと彼女からのメッセージが届いていた。
『今夜は星がきれいですよ!』
そのメッセージを見て笑ってしまった。
どんなに離れていても同じ星空を見ているんだな。
俺はスマホのメッセージを返す。
「奇遇だね、俺も見てたよ。会いたいねっと」
送信した後、もう一度ソファに座って瞳を閉じた。
帰ってきたら離れていた分の補給をさせてもらおう。
おわり
三四五、どんなに離れていても
先日、想い人とようやくお付き合いができるようになって、少し舞い上がっていた。
ああ、彼女に会いたいな。
とはいえ、彼女は俺の事情を考えてしまい、わがままを言わないタイプ。俺が彼女に惹かれたところでもあるんだけど、もう少しわがまま言って欲しい気持ちがある。だから先日、そう伝えた。
そう言えば、今週は会えていないなぁ……。
……会いたいな。
そんなことを考えているとスマホが震える。咄嗟にスマホを見ると彼女からの電話だった。
「どうしたの?」
『あ、おはようございます』
「うん。おはよ」
『声が聞きたくなって……電話かけちゃいました!』
誇らしく言い切る彼女なんだけど、その内容があまりにも大したことないと言うか、些細と言うか、規模が小さくて顔がにやけてしまう。
それが彼女の精一杯だと言うのも分かるから吹き出さないよう必死でこらえた。
『私、頑張ってわがまま言ってみました!』
電話越しでもドヤァッと胸張って鼻高々としている彼女の姿が想像ついて口を抑えた。そうしないと吹き出しちゃう。
「嬉しいよ」
『えへへ、私も声が聞けて嬉しいです』
胸が暖かくなる。
本当に大したことないのに、これすら彼女の全力のわがままなのだから愛しさが込み上げる。
「ねえ、声だけでいいの?」
『え!?』
「俺に会いたくないの?」
『あ……えっと……会いたいです!』
即答できないのが実に彼女らしい。でも決めたら言い切るもんだから口角が上がる。
「会いに来てよ」
『え!?』
「会いたい」
俺もわがままを言ってみる。俺もこれくらいのわがまま言うんだから、彼女にも言って欲しい。
その思いが伝わったのか、電話越しに彼女も少し考えている。
『……えっと。こ、こっちに来てください』
おっと?
躊躇いながらもわがままを言ってくれて、俺は嬉しくなる。
「分かった」
『え!?』
ほら、人の良さが出ちゃってる。
「なんで、驚くの?」
『だって……迷惑じゃ……』
「俺に会いたくないの?」
『会いたいです!』
「ブハッ!」
『え、なんですか!?』
もう笑いを耐えられずに笑ってしまった。
「ううん、嬉しいよ。今から会いに行くね」
『……はい』
「じゃ、また後で」
『はい……あの!』
「うん、どうしたの?」
躊躇いながらも息を飲みハッキリと言葉にしてくれた。
『気をつけて、来てくださいね』
精一杯のわがままだけれど、本当の心配の気持ちを俺に伝えてくれる。
「……ありがとう、すぐ行くね」
『はい、待ってます』
俺はタイミングを見て許可をもらい、彼女のいる職場にバイクを走らせた。
おわり
三四四、「こっちへ恋」「愛にきて」