とある恋人たちの日常。

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3/22/2025, 11:39:31 AM

 
 彼とふたりで来たのは、見晴らしが良い景色が広がる場所。この都市が一望できる。
 観光地と言うには穴場スポットらしくて、ここには大好きな彼と私だけだった。
 
 きゅっと彼の手が強く握られる。
 視線を彼に向けると彼と目が合った。
 
 優しく笑ってくれる彼が大好きだ。
 
「いいところでしょ?」
「はい!」
「仕事で見かけてさ。君とここに来てみたかったんだ」
 
 展望台から見る都市は、言葉にならないノスタルジックさがある。空気も澄んでいて心が洗われるようだった。
 
「連れてきてくれて、ありがとうございます」
「ん……」
 
 私は景色を心に焼き付ける。
 この都市に来て彼と出会って、彼に恋して、彼に愛された。
 
 だから、この都市そのものが私の大切な場所だ。
 そんな都市を見渡せる。それも愛しい彼と共に。
 
「そろそろ帰ろうか」
「はい、また連れてきてくれますか?」
「もちろん、また来ようね」
「はい!」
 
 そう笑顔を返すと、彼も安心したように笑ってくれた。
 
 私はもう一度だけ景色を見たくて振り返る。
 
 この都市に来られて本当に良かった。
 
「またね」
 
 そう小さく呟いて、彼の隣を歩き出した。
 
 
 
おわり
 
 
 
三一〇、byebye……

3/21/2025, 2:29:04 PM

 
 さっきまで迷子になっていた恋人の手を繋いで目的の場所に歩いていく。
 こういう時に限って彼女のスマホの充電が付きかけているんだから、びっくりしちゃうよ。
 
 充電器を渡そうと思ったけれど、繋いでいる手を離さないといけなくなるから後回しにした。
 
 一緒にいるんだからいいや。
 
 一瞬、彼女に連絡を取りたい人がいたとしたら……いや、それは彼女の責任だ。まあ、察する人は俺に連絡寄越すでしょ。
 
「ごめんなさい、怒ってますか?」
「え!?」
 
 色々と思考を巡らせていたところ黙々と歩いてしまっていたので、彼女が不安の声をあげる。
 
「あ、ああ。いや、ごめん。違う違う。怒ってないよ」
 
 不安そうな彼女の正面に振り返り、彼女が安心するように笑顔を向けた。
 
「心配したんだよ」
 
 俺の言葉を聞いた彼女は、繋いだ手に力を入れる。
 
「心配させて、ごめんなさい」
 
 その悲痛な表情は、本当に後悔しているのが伝わる。
 繋いでいない手で彼女の頭を優しく撫でた。
 
「今日からスマホ充電チェックするからね」
 
 それを伝えたら彼女も安心したようにふわりと笑ってくれた。
 
「はい、お願いします」
 
 その言葉を聞いて俺はまた前に向いて目的地へ足を進める。
 
 今日は仕事関係で色々な所へ行った時、気になる場所があったから調べて仕事後のデートで連れて行こうとしたら、このハプニングだ。
 
 バイクや車では入れないところだから、そのまま歩き続けると空気感が変わってくる。
 
 開けたところに出ると都市を見渡すことが出来る展望台にたどり着いた。
 
「わあああ! 凄い景色!!」
 
 彼女が興奮気味に声をあげて走っていきそうになるけれど、繋いだ手が離れそうになるので、それは止めた。
 くんっと引っ張られて驚いた表情が俺を見る。
 
「今日は離さないって言ったでしょ」
 
 不服そうな顔をするかと思ったけれど、嬉しそうに微笑んでから俺の手をゆっくり引っ張った。
 
「なら、一緒に見に行きましょ」
 
 そして同じ歩幅で展望台に歩いていく。
 
 うん。
 君とこの景色を見たかったんだ。
 
 
 
おわり
 
 
 
三〇九、君と見た景色

3/20/2025, 12:32:51 PM

 
「も〜ようやく見つけたよ!!」
 
 道に迷った恋人がヘルプを出してきたのは良いんだけれど、まさかのスマホの充電が殆ど無い状態だった。
 
 最後の最後まで使えるように、必要最低限のメッセージだけで彼女を見つけることが出来た。
 
 本当に焦ったよ。
 
 俺は救急隊として仕事をしていて、人探しも仕事のうちだったから、そのスキルをフル動員して彼女を探した。
 
 彼女が安心した顔をして、俺に迷わず抱きついてくる。俺も彼女の身体を抱き締め返した。
 
 人の目なんか気にするもんか。
 道に迷った彼女をようやく見つけたんだ。温もり含めて実感させて欲しい。
 それでも一分もしないくらいで身体を離した。
 
 そのまま彼女の手を取る。
 
「うえ!?」
「今日は、もう離さないからね」
 
 びっくりした顔をしていたけれど、すぐに満面の笑み。
 その顔はズルいでしょ。
 
 絶対にこの手を離してあげない。
 
 
 
おわり
 
 
 
三〇八、手を繋いで

3/19/2025, 11:36:15 AM

 
 こういううっかりは、いつかすると思っていたよ。
 
 彼女から道に迷ったと連絡があって、嫌な予感がした。
 
「ねえ。そう言えば昨日の夜、スマホ充電した?」
『……してないかも……』
 
 こういうタイミングに限ってー!!
 なんかそんな気がしたんだよね。
 
「どれくらいで充電切れそう?」
『分からないですけど……』
「確認してみて」
 
 ゴソッと音が聞こえる。
 
『……15%でした』
「ウソでしょ!?」
『仕事でも今日使ったんです』
「より充電しなきゃダメでしょ!?」
 
 と、話している間にも充電は減っていく。
 
「ごめん。とりあえず充電が無くなると困るからメッセージでやり取りしよ」
『はい、ごめんなさい』
「今後、家に帰ったら充電チェックするからね!」
『はーい』
 
 ごめんなさいと言っているけれど、さすがに今みたいな状況はヤバすぎる。可愛いけれど注意はしなきゃ。
 
 とりあえず通話を切ってから、彼女が行ったであろう場所の近くまでバイクで向かう。
 バイクを駐輪場に停めて、元々の待ち合わせの場所に向かうが当然彼女はいない。
 
「さて……」
 
 どこから捜そう……。
 
 とはいえ、救急隊で救助や捜索もするからな。
 本気で捜すからね。
 
 見つけたら、充電器を渡して彼女から離れないようにしないと。
 
「本当にどこへ行ったんだか……」
 
 深呼吸をしてから、俺は彼女の性格や仕事で培った経験を元に探しに行った。
 
 
 
おわり
 
 
 
三〇七、どこ?

3/18/2025, 12:12:36 PM

 
 夕食後、彼女とソファに座って微睡んでいた。
 いたんだけど……。
 
 彼女が俺の身体に絡みつくようにひっつき、ふわふわと緩みきった顔をしていた。
 
 身体をある程度鍛えている職業だから、少しくらいなら耐えられるんだけれど、まあまあいい時間このままだったりする。
 
 彼女に視線を送ると、嬉しそうに、幸せそうに緩みきった表情で俺にしがみついていて、重い……とは言いにくい。
 
 でも、足も痺れてきて、限界が近いと思った。
 
 俺は彼女を持ち上げて、隣に座らせると頬がぷっくりと膨らんだ。めちゃくちゃ不満顔してる〜。
 
 俺は少し考えたあと、彼女の頭を撫でた。
 
「ごめん、ベッドで横になろう。そうしたらもう好きにしていいよ」
 
 その言葉を聞くと、ぱあっと花が咲いたような可憐な笑顔に戻る。
 
 その後はベッドでゴロゴロしながら、彼女が幸せそうな顔をして俺に抱きついた。やっぱり絡みついているという言葉が正しい。
 
「安心します……」
 
 本当にさ。
 本当に俺のこと大好きだよね。
 
 
 
おわり
 
 
 
三〇六、大好き

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