彼とふたりで来たのは、見晴らしが良い景色が広がる場所。この都市が一望できる。
観光地と言うには穴場スポットらしくて、ここには大好きな彼と私だけだった。
きゅっと彼の手が強く握られる。
視線を彼に向けると彼と目が合った。
優しく笑ってくれる彼が大好きだ。
「いいところでしょ?」
「はい!」
「仕事で見かけてさ。君とここに来てみたかったんだ」
展望台から見る都市は、言葉にならないノスタルジックさがある。空気も澄んでいて心が洗われるようだった。
「連れてきてくれて、ありがとうございます」
「ん……」
私は景色を心に焼き付ける。
この都市に来て彼と出会って、彼に恋して、彼に愛された。
だから、この都市そのものが私の大切な場所だ。
そんな都市を見渡せる。それも愛しい彼と共に。
「そろそろ帰ろうか」
「はい、また連れてきてくれますか?」
「もちろん、また来ようね」
「はい!」
そう笑顔を返すと、彼も安心したように笑ってくれた。
私はもう一度だけ景色を見たくて振り返る。
この都市に来られて本当に良かった。
「またね」
そう小さく呟いて、彼の隣を歩き出した。
おわり
三一〇、byebye……
3/22/2025, 11:39:31 AM