とある恋人たちの日常。

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10/31/2024, 11:10:48 AM

 
 恋人と暮らして、それなりに経つ。
 最初は戸惑いもあったけれど、ちょっとずつ俺と彼女の過ごしやすい家になっていた。
 
 視線を巡らせると、彼女と決めた部屋で、家具も、食器も。気がつけば彼女と選んだものばかりだ。
 
「どんどん楽になっていくなー……」
 
 便利になったわけじゃない。
 一人で暮らしていた頃に比べて不便になったところもあるけれど、それでもふたりで過ごすには精神的に楽な〝家〟になっていた。
 
 ちらりと恋人に視線を送る。
 
 いつか、家族になったら、もしかしたらこの家でも場所が足りなくなったり……するのかな?
 
 それがどういうことか、改めて考えると顔から耳から熱くなる。
 
 まだまた理想郷には遠い……かな?
 
 
 
おわり
 
 
 
一六八、理想郷

10/30/2024, 11:56:48 AM

 
 明日はハロウィンだ。
 と、言うことで恋人との思い出が脳裏に浮かぶ。
 
 恋人の職場は割とコスプレを容認していて、今みたいな季節だとノリノリになる。去年、そのコスプレ期間内に彼女の職場で要救助者が出て、俺が助けに行ったことがあり、そこでのやり取りを思い出していた。
 
 今思うと、彼女を守りたいと思ったのはあの頃かもしれないなー。
 
「なんだか懐かしいねぇ……」
「なんの話しですか?」
 
 ソファでのんびりお茶を飲んでいた恋人に、俺はぼんやりと声をかける。首を傾げた彼女が俺を見つめた。
 
 思い出してよかったのかな……と思わなくもないけれど、あれから関係が進んで、今は一緒に暮らしている仲だからいいよね?
 
「あのすんごい格好した君の姿。俺びっくりし……」
「忘れてくださいっ!!!」
 
 言葉が最後まで出る前に、持っていたクッションが押し付けられ、顔が埋まる。いや、息、息!!
 
 あの頃の彼女の会社の社員は、一人以外が全員女性。人数がいたからか、統一してかなり過激な格好をしており、救助に行った時にびっくりして「そんな格好するの!?」と裏側から声が出た記憶がある。
 
「思い出さないで!」
「いや、無理でしょ」
 
 俺は恋人を腰から抱きしめた。
 
「今更何を隠す必要がある。てか、今の時期ならあの格好してるんでしょ?」
「ま、まあ、制服だから着てますけど……」
「他人が良くて、恋人の俺だけ忘れろなのお?」
 
 少しだけ不満気な声を出すと、返す言葉が見つけられないのか、耳まで赤くしながら俺の視線から逃れようとする。
 
「てか、あの頃からでしよ、セクハラ受けるようになったの」
「うう……。あ、でもちゃんと成敗したから!」
 
 むん! とガッツポーズをするもんだから、またため息をついてしまう。俺が言いたいのはそこじゃないんだけれどな。
 
「それで俺が救助に呼ばれてどうするのさ」
 
 俺は彼女を横抱きにして自分の膝に乗せ、抱き寄せた。
 
「俺は君のナイトで呼ばれたいの」
 
 
 
おわり
 
 
 
一六七、懐かしく思うこと

10/29/2024, 12:23:10 PM

 
 眠っていたところ、突然後ろに引っ張られる感触に驚いてぼんやりとだけれど目を覚ました。
 何事かと思って虚ろな瞳で振り返る。仄暗い中で見えたのは、愛しい彼が切なそうな表情で私を強く抱きしめていた。
 
 ああ、大好き。
 
 この落ち着く温もりは私を安心させるものだから、彼に体重をあずけた。すると彼の顔が肩に埋められる。
 
 少し寂しいのかな。
 
 そんなことを思いながら、抱きしめられた腕に手を添えていると、涼しくなった気温が彼の温かさをより感じさせて心地好くなる。
 
 大好きな温もりに包まれて、このまま意識を手放しちゃおうと思った。
 
 
 
おわり
 
 
 
一六六、もう一つの物語
(一六五、暗がりの中で のもう一つの物語)

10/28/2024, 1:06:20 PM

 
 ゆっくりと目を開け、身体を起こした。周りを見渡すとぼんやりとした光で現在の時刻を知らせる。俺が眠ってから二時間くらいしか経っていない。
 
 暗がりの中で視界が慣れ、横を見ると背中を向けた恋人が安心した表情ですやすやと眠っていた。
 彼女の気の抜けた顔に自然と口角が上がってしまう。
 
 俺は彼女を背中から抱きしめると、むにゃむにゃと俺の体温に反応した。
 軽く振り返って俺を確認すると、ふにゃりと微笑んでから安心したように身体をあずけてくれる。
 
 そのまま俺も彼女の肩に顔を埋め、もう一度瞳を閉じると、彼女の優しい香りが鼻をくすぐった。
 
 ああ、やっぱり安心する。
 
 俺は彼女の温もりに包まれながら意識を手放した。
 
 
 
おわり
 
 
 
一六五、暗がりの中で

10/27/2024, 12:24:05 PM

 
 今日のデートは恋人の青年のリクエストでレトロな喫茶店に来た。
 開店より少し前に到着していたけれど、既に行列が出来ていて、開店してから少し時間を置いてようやく入りテーブルに案内される。
 
「季節的に気候がちょうどいいから、待つのがそんなに苦じゃなくて良かったね」
「はい! 思ったより人が並んでいたのは驚きましたが……」
 
 周りを見てみると女性客の方が多く、みんな手元に来た食事や飲み物にカメラを向けた後、それぞれを楽しんでいるようだ。
 
 自分たちも今日の目的はハッキリしている!
 
 店員さんと目が合うと、静かにテーブルの傍に来てくれた。
 
「ご注文をおうかがいします」
 
 店に来る前からメニューを決めていたから、青年はピースを店員に向ける。
 
「季節限定のクリームソーダ、ふたつ!」
「季節限定のクリームソーダ、ふたつですね。以上でよろしいでしょうか?」
「はい!」
 
 そう、ふたりの目的はクリームソーダ。
 このお店のは季節限定でクリームソーダの味や見た目を変えていると知り、今の季節のクリームソーダを飲みに来たというわけだ。
 
「シックで素敵なお店ですね」
「そうだね、クラシカルな感じもあって、落ち着くかも」
「家とは違うくつろぎですね」
「そう、それ」
 
 ふたりで談笑していると、華やかな香りが彼女の鼻をくすぐった。柑橘系の香りだろうかと、辺りを見回す。
 
「とうしたの?」
「なんか、いい香りがして……」
 
 それは近くのテーブルに置かれた紅茶の香りだった。
 甘やかであり、華やかさもある。珈琲とは違った香りに気持ちが奪われた。
 
 くすり。
 青年が彼女を見て笑う。その声に慌てて振り返った。
 
「気になるなら頼もうよ。俺もこの香り気になるよ」
 
 楽しそうに笑ってくれる青年は、手を挙げて店員を呼ぶ。すると香りの話しと合わせて聞いてみると、アールグレイの紅茶のようだった。
 
 そこから聞いてみると、この店はクリームソーダもそうだが紅茶も力を入れている喫茶店で、アールグレイだけでも数種類があると説明を受けた。
 そうしてふたりは紅茶のメニューを見て悩み出してしまった。
 
「俺、違いがよく分からないから一般的……あ、もしくはオススメの紅茶を……あー……」
 
 視線の先にはふたりが先に注文していたクリームソーダを持った店員がいた。
 
「……飲み終わったらゆっくり選んで頼もうか」
「そうですね」
 
 テーブルに置かれるクリームソーダを見てメニューを閉じる。
 
「まずは今日の目的、だね」
「はい!」
 
 ふたりは冷たいクリームソーダに舌鼓をうちながら、幾度となく通り過ぎる紅茶の香りに誘われながら、優雅なひとときを過ごした。
 
 
 
おわり
 
 
 
一六四、紅茶の香り

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