明日はハロウィンだ。
と、言うことで恋人との思い出が脳裏に浮かぶ。
恋人の職場は割とコスプレを容認していて、今みたいな季節だとノリノリになる。去年、そのコスプレ期間内に彼女の職場で要救助者が出て、俺が助けに行ったことがあり、そこでのやり取りを思い出していた。
今思うと、彼女を守りたいと思ったのはあの頃かもしれないなー。
「なんだか懐かしいねぇ……」
「なんの話しですか?」
ソファでのんびりお茶を飲んでいた恋人に、俺はぼんやりと声をかける。首を傾げた彼女が俺を見つめた。
思い出してよかったのかな……と思わなくもないけれど、あれから関係が進んで、今は一緒に暮らしている仲だからいいよね?
「あのすんごい格好した君の姿。俺びっくりし……」
「忘れてくださいっ!!!」
言葉が最後まで出る前に、持っていたクッションが押し付けられ、顔が埋まる。いや、息、息!!
あの頃の彼女の会社の社員は、一人以外が全員女性。人数がいたからか、統一してかなり過激な格好をしており、救助に行った時にびっくりして「そんな格好するの!?」と裏側から声が出た記憶がある。
「思い出さないで!」
「いや、無理でしょ」
俺は恋人を腰から抱きしめた。
「今更何を隠す必要がある。てか、今の時期ならあの格好してるんでしょ?」
「ま、まあ、制服だから着てますけど……」
「他人が良くて、恋人の俺だけ忘れろなのお?」
少しだけ不満気な声を出すと、返す言葉が見つけられないのか、耳まで赤くしながら俺の視線から逃れようとする。
「てか、あの頃からでしよ、セクハラ受けるようになったの」
「うう……。あ、でもちゃんと成敗したから!」
むん! とガッツポーズをするもんだから、またため息をついてしまう。俺が言いたいのはそこじゃないんだけれどな。
「それで俺が救助に呼ばれてどうするのさ」
俺は彼女を横抱きにして自分の膝に乗せ、抱き寄せた。
「俺は君のナイトで呼ばれたいの」
おわり
一六七、懐かしく思うこと
10/30/2024, 11:56:48 AM