家に帰ると、お互いに「ただいま!」という言葉とハグし合う。お互いの体温と心臓の音が感じられてすごく安心するんだ。
「大好き」
「俺も」
どちらからともなく言う言葉。
好きという気持ちをストレートに伝えられたら嬉しい。
そして、言葉通りに伝わる彼女だから、毎日もっと好きになる。
「毎日言ってますけど、飽きませんか?」
「飽きない。なんならもっと言って欲しい」
「ふふ、私もです」
頬を紅く染めながら嬉しそうに微笑んでくれる恋人に、愛らしさを感じて自然と彼女を抱き寄せてしまう。
「大好き」
「私もです」
おわり
一六三、愛言葉
一度実家に戻っている間に、大好きな友達が知り合いの救急隊員の彼といい感じになったみたいで……。
可愛くて可愛くて仕方がない職場の同僚。仕事は彼女の方が先輩なんだけど、人懐っこさもあって、妹みたいに守りたくなる子なの。
私のギャグにも鋭いツッコミを入れてくれて、ぽやぽやしているように見えるけれど、恐らく頭の回転は結構早いと思う。
人が一人になりそうになると、自然とみんなの輪の中に入れてあげられるタイプ。
色素が薄い彼女は、私から見たイメージカラーは白。本人が水色を好きだから本当に薄い水色が似合う。
声も愛らしさがあるから、少しだけずるいと思うほど。
仕事も前向きで頑張っていて、その全てが大好きなんだ。
で、そんな彼女を狙っていると!? 既に付き合っていると!?
許せるわけないじゃないか!!
私は件の彼が会社に来た時に、とっ捕まえて仁王立ちになってこう言った。
「彼女と付き合いたいなら、私を倒していってもらおうか!!」
簡単に〝おつきあいを〟許してなるものか!
おわり
一六二、友達
恋人が風邪をひいてしまった。
少し前に俺が風邪を引いた。その時は彼女が看病してくれたが、風邪はうつらなかった。
時間が経ち、また寒暖の差にやられてしまい気がついたら発熱していた。
「体温計で熱を計るまでもないよ。今日は家でゆっくりしててね」
俺はスマホを取り出し、彼女の職場に電話をかけながら扉から部屋を出ていった。
『はいはーい、どうしたん?』
「あ、すみません。彼女が熱を出しちゃったので、今日は休ませて欲しいんです」
『ああ、了解、了解。知らせてくれて、ありがとね』
「いえ、こっちこそ、ありがとうございます」
『ほななー』
通話が終わって部屋に戻ると、ベッドで俺に向かって手を伸ばし、その瞳から涙を溢れさせた彼女がいた。
「社長に連絡したからね……ってなに!? どうしたの!?」
彼女が片手を伸ばしている姿に気がつくと、血の気が引いた。俺は顔色を変えて床を蹴る。
そして、強く、強く抱き締めた。何かを言うわけではなく、彼女の熱を受け取るように抱き締めた。
「やだ、行かないで……そばにいて……」
普段は元気で笑顔が耐えない彼女。それが、こうやって俺にわがままを言うのは本当に珍しい。自分の意見が無いわけじゃなくて、相手を尊重する子だから。
だからこそ、彼女の言葉に胸を締め付けられた。
彼女の頭を優しく撫でながら、彼女の体重を俺に寄せる。
「そばにいるよ」
「うん……」
彼女の身体をゆっくり倒し、隣に寄り添った。
「ずっとそばにいるからね」
「うん」
熱があるからか、少し息遣いが荒い。それでもどこか安心したように、瞳を閉じた。
彼女が眠ったら、俺も職場に連絡しよう。
今日……なんて言ったけれど、俺はずっとそばにいるよ。
ずっとね。
おわり
一六一、行かないで
調整で救助用のヘリコプターに乗り、上陸すると身体に独特な浮遊感がくる。
視界はビル群。それを抜けるとどこまでも続く青い空が広がった。
「やっぱりこの空が好きだな……」
俺はこの機会を仕事で得ることが出来たが、恋人はそうじゃない。
いつか、お金を貯めるだけ貯めて、ヘリコプターをチャーターして、いつか恋人にこの空を見せたい。
俺の中に新しい目標が出来た。
まだまだ仕事が頑張れそうだ。
おわり
一六〇、どこまでも続く青い空
灼熱のような暑い夏から、気温が下がり金木犀が香るようになった。数日前に比べて頬を掠める風の冷たさは身震いするほどだ。
と言ってももうすぐ十一月。長袖がないことがおかしいと少しの夏物を残して衣替えを始めた。
「あ、このジャケット……」
それは恋人の青年のブラウンのダウンジャケット。彼女にとっては思い出深く、自然と抱きしめてしまった。
「なに、どうしたの? 俺のジャケット抱きしめちゃって」
その様子を見ていた青年は嬉しそうに笑っていた。
彼女は、もう一度青年のダウンジャケットを見つめ、再び抱きしめる。
「だって……このジャケットを着た貴方と沢山の思い出があるんですもん」
色々出かけた。
何よりこのダウンジャケットは青年に似合っていて、ドキドキしたことが何度もある。そういう意味でも大切で、大好きなダウンジャケットなのだ。
思い出に浸る彼女を苦笑いする青年は、彼女からダウンジャケットを剥き取った。
「ちゃんとこの冬も着るよ。まずはクリーニングに出さないとね」
「はい!! 今年も沢山思い出作りましょうね!!」
満面の笑みを青年に向けて、この冬への期待を膨らませた。
おわり
一五九、衣替え