とある恋人たちの日常。

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7/28/2024, 12:32:25 PM

 今日はデパートに買い物へ来た。
 それというのも、今度、この都市でお祭りがあり、その浴衣を探しに来たのだ。
 
 どんなのがいいか悩みはするものの、彼女がどんな浴衣を選ぶのか楽しみだった。
 
「どうしようかなー」
 
 彼女が色とりどりの浴衣を、ひとつひとつ見ていく。
 
「色は水色?」
「はい!」
 
 彼女は肌色だけではなく、全体的に色素が薄い。だから白メインの浴衣よりかは、水色や藍色の浴衣の方が可愛い気がする。
 青年がそんなことを考えている横で、彼女は楽しそうに浴衣を選んでいた。
 
 彼女が見ているところとは少し別のところに、青年は足を向ける。そこは華やかな髪飾りが並んでいた。
 
 その中に、大きな水色の花の髪飾りがあった。
 一番大きな水色の花の周りに、薄い黄色やクリーム色の小さい花々。キラキラした石も付いており、照明が反射して眩い。そして結紐も使われており、かなり手の込んだものだと、アクセサリーに詳しくない青年にも分かる。
 
 彼女の髪は短いから、垂れ下がった結紐はとても際立つ。だからこそ、この髪飾りを横に挿したら、華やかさが増しそうな気がした。
 
 青年はその髪飾りを手に取り、彼女の元へ向かう。
 
「どうしましたか?」
 
 首を傾げる彼女をよそに、青年は彼女の耳の上にその髪飾りを見立てる。
 
「かわいい」
 
 自然とこぼれた青年の言葉に、ふたりで驚き頬を赤らめる。
 
「あ、いや、似合いそうだなって……」
 
 慌てて言い訳をするが、今見立てた時の彼女は、自然と言葉が落ちるほど愛らしいと思った。
 
「ねえ。この髪飾り、俺がプレゼントするよ。だから、これに合う浴衣にしない?」
 
 青年は甘えた声でおねだりしてみる。この髪飾りを付けた浴衣姿の彼女を見たいのだ。
 
 彼女は、「仕方ないですね」とくすくす笑ってくれた。
 
「この髪飾りに合う浴衣を一緒に探してくださいね」
 
 そう微笑んでくれる彼女に頷きながら、一緒に浴衣を探した。
 
 
 
 お祭りの日の当日。
 浴衣姿は可愛いだけではなく、とても艶やかだということを、青年は初めて知ることになる。
 そして、選んだ髪飾りは、彼女の愛らしさに拍車をかけ、家から出したくないかも……という気持ちで溢れることとなった。
 
 
 
おわり
 
 
 
お題:お祭り

7/27/2024, 12:54:05 PM

 夏はキューピッド達が、日々仕事に追われる季節。一夜の恋から、本当の恋に発展することもある時期なのだが、日々育んでいる恋もある。
 
 一人のキューピッドは、以前、神様が偶然に依頼をして、出会った男女を見ていた。
 それは救急隊の青年と、不器用な女性。
 
 二人とも異性に好意を持たれるタイプだけれど、本当に求めるものはお互いなのを知っていた。
 
 偶然に背中を押してもらったけれど、さらに踏みだすものが欲しい。
 
 そう思ったキューピッドは、自分の持つ弓に手をかける。

 すると、キューピッドが居たところに影が落ち、神様がキューピッドの目の前に降り立った。
 
「あの二人に手出しは無用だよ」
 
 神様は茶目っ気たっぷりにウィンクをしてキューピッドの手を止める。
 
「ほら、ごらん」
 
 神様がその美しい手でキューピッドの視線を二人に導く。
 
 彼女は不器用ながらに青年の車を直しつつ、当たり前に のように彼を尊重している。
 彼はその様子に驚きつつ、心に明かりが灯っているのが見えた。
 
 青年は彼女に、「遊びに行こう」と声をかけると、今度は彼女の心に明かりが灯って、薄かった糸が少しずつ濃くなっていく。
 
「ね、君が手を貸す必要は無いよ。他の恋の背中を押してあげておくれ」
 
 キューピッドはひとつうなづくと、神様に一礼をしてから飛び立った。
 
「あの二人は大丈夫だから」
 
 
 
おわり
 
 
 
お題:神様が舞い降りてきて、こう言った

7/26/2024, 10:34:48 AM

 夕飯後、まったりとソファーに座っていると、彼女から抱き締められた。
 なにごとかと思って慌てたけれど、落ち着いて優しく抱き締め返す。
 
「どうしたの?」
 
 彼女はぎゅうっと強く抱き締めながら囁いた。
 
「わたしの……」
 
 それだけ?
 と言うか、この『わたしの』は俺のこと?
 
 ああ、なるほど。
 何があったかは分からないけれど、全力の甘えモードに入っていることは分かった。
 
 普段、遠慮して甘えることがない恋人が、時々全力で甘えてくるこのモードが俺はたまらなく好きだった。
 本当に相手を思って自分を押し殺すタイプの彼女が、全力の甘ったれを行使する。不安が解消されていく瞬間だ。
 
「俺は君のものだよ」
 
 甘えモードには、甘さを込めた言葉が効く。だから、俺も彼女に甘く囁いた。
 
「付き合い始めた頃に、あなたを好きな人がいたら、私はその人のために退けた」
「うん」
「でも……もう無理。今は退けない」
 
 彼女が顔を上げて俺をじっと見つめる。目の端に光る雫が頬に流れた。
 
「退かれたら、俺が困っちゃう」
「ん……」
「まあ、退かれても、俺が捕まえに行くからね」
 
 彼女に安心して欲しくて、そう言ってから再び強く抱き締めた。
 
 
 
 後で『甘えてごめんなさい』と言われてしまう、彼女の甘ったれモード。
 実のところ、俺にはただのご褒美タイムなんだよな。
 
 
 
おわり
 
 
 
お題:誰かのためになるならば

7/25/2024, 12:44:46 PM

「私を閉じ込めておきたいって思ったこと、ありますか?」
 
 不意に、恋人から問われた質問に言葉を失った。中々に重い質問に思う。
 
「うーん、どうだろう……」
 
 俺は視線を逸らしながら、はぐらかす言葉を探す。だって、思ったことあるもん。
 
「思ったこと、ありますか?」
 
 なんでそんなふうに思ったのか分からないけれど、誤魔化しはきかない気がした。
 俺は大きくため息をついて、恋人をしっかり見つめた。
 
「あるよ」
 
 意外だと、彼女の表情は語った。
 苦笑いしながら、俺は言葉を続ける。
 
「だって、自分が目を引くほどに可愛いって分かってないでしょ」
「可愛くないですよ」
「ほら分かってない」
 
 彼女は不服そうに俺を見上げるけれど、俺だってこれは譲れない。
 
「可愛いし、スタイルだって良いんだよ」
 
 俺が本当に好きになったのは、きみの優しさ。でも、それは言葉にしない。これは俺だけが知っていればいいんだ。
 
「そっちだって、モテるじゃないですか」
「俺のはモテるんじゃなくて、からかわれているだけ!」
 
 彼女の周りの異性の視線を見れば分かるよ、俺と同じ熱を持って見ていることくらい。
 だけど、彼女たちは違うもん。
 
「鈍感です!」
「どっちが!?」
 
 ぷくぷくに頬を膨らませた彼女。
 俺は、その頬を人差し指で押して萎ませる。
 
「ぶー、なにするんですか!?」
 
 俺はその表情に笑ってしまった。
 
「いや、やっぱり可愛いな〜って」
「からかってます?」
 
 彼女は少し不満そうに俺を見ているけれど、本気で怒っていないのは分かってる。
 
「からかってないよ」
 
 くすくす笑ってしまったけれど、改めて彼女をしっかり見つめた。
 
「実際にそんなことはしないけど、閉じ込めたいと思うくらい、好きってこと」
 
 
 
おわり
 
 
 
お題:鳥かご

7/24/2024, 12:21:04 PM

「男女の友情って存在すると思う?」
 
 俺が洗ったお皿を受け取り、恋人の彼女は手元のタオルで拭いている中、彼女に疑問を投げてみた。
 
「突然どうしたんですか?」
 
 俺は視線を彼女に向けることなく、丁寧に洗い物をしながら言葉を続ける。
 
「いやね、今日仕事中にそんな話題になってさ。俺はあると思うんだ。今一緒に仕事してくれる相棒も女性だし、俺を教育してくれたバディも女性だし」
 
 その言葉を言い切って、しっかりと彼女を見つめた。
 相棒もバディも同じ意味だと、突っ込まないでいてくれるのはありがたい彼女です。
 
「彼女たちに友情はあっても、俺の恋人は君だから」
 
 友情と愛情は紙一重だ。それは師匠にあたるバディが教えてくれた。
 でも俺は、職場の異性に友情を持っていても、彼女のような愛情は持てない。
 
「うーん……難しいですね」
 
 異性の友情は、友になった異性に恋人が出来た場合、嫉妬されてしまう、もしくはしてしまう。異性の友人に友情以上のものが見えると言われてしまうのだ。
 
「俺が仕事で異性とペアを組んでいたら、妬けちゃう?」
「……どうでしょう。私も仕事で異性と仕事しますけれど、妬きます?」
 
 ふたりとも洗い物と片付けの手を止めて、うーんと考えてしまった。すると彼女は顔を上げる。
 
「……異性とか同性とか、関係ない気がします」
「どうゆうこと?」
「状況によって相手が男性でも女性でも、妬いちゃう時はあるかも」
 
 目からウロコな回答だった。
 
 俺がそこに思い至らなかっただけで、確かにそうかも。
 
 彼女の会社の社長は彼女よりお姉さんだけれど、彼女を大切にして家族のように扱っている。
 そこには、俺が入れない絆があるし、言い換えればそこも友情だ。いや、家族愛か?
 
 それでも入れない絆に、寂しさを覚える時は……確かにある。
 もちろん、普段からそう思うわけじゃない。
 明確に入れないものがあると分かる瞬間に、ほんの少しだけ感じるんだ。
 
「難しいー!!」
 
 最後のお皿を彼女に渡しながら、叫ぶと「難しいですね」と笑いながら同意してくれる。そのお皿を拭き、棚にしまいながら彼女はぽつりとこぼした。
 
「……答えがあるものじゃないのかも、ですね」
「ん?」
「明確な括りをしなくても、曖昧でもいいものなのかも」
 
 棚の扉を締めてから、俺に振り返る。
 
「私たちも、最初は友情から……じゃないんですか?」
 
 俺は彼女の言葉に頭を捻る。
 
 うーん、俺の場合は友情よりも先に、庇護欲の方が先だった。友だち……まあ、確かにあったけれど、すぐに特別と思っちゃったからな。
 
「違うんですか?」
 
 俺は思った言葉をそのまま伝えた。
 みんなとは違う、明確な感情は確かにあったのだから。
 
 その日はずっとその事を話した。
 いい加減に眠ろうとなった時に、ふたりで至った結論は、「明確な結論が出せるものじゃない」というものだった。
 
 難しいね。
 
 
 
おわり
 
 
 
お題:友情

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