とある恋人たちの日常。

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「私を閉じ込めておきたいって思ったこと、ありますか?」
 
 不意に、恋人から問われた質問に言葉を失った。中々に重い質問に思う。
 
「うーん、どうだろう……」
 
 俺は視線を逸らしながら、はぐらかす言葉を探す。だって、思ったことあるもん。
 
「思ったこと、ありますか?」
 
 なんでそんなふうに思ったのか分からないけれど、誤魔化しはきかない気がした。
 俺は大きくため息をついて、恋人をしっかり見つめた。
 
「あるよ」
 
 意外だと、彼女の表情は語った。
 苦笑いしながら、俺は言葉を続ける。
 
「だって、自分が目を引くほどに可愛いって分かってないでしょ」
「可愛くないですよ」
「ほら分かってない」
 
 彼女は不服そうに俺を見上げるけれど、俺だってこれは譲れない。
 
「可愛いし、スタイルだって良いんだよ」
 
 俺が本当に好きになったのは、きみの優しさ。でも、それは言葉にしない。これは俺だけが知っていればいいんだ。
 
「そっちだって、モテるじゃないですか」
「俺のはモテるんじゃなくて、からかわれているだけ!」
 
 彼女の周りの異性の視線を見れば分かるよ、俺と同じ熱を持って見ていることくらい。
 だけど、彼女たちは違うもん。
 
「鈍感です!」
「どっちが!?」
 
 ぷくぷくに頬を膨らませた彼女。
 俺は、その頬を人差し指で押して萎ませる。
 
「ぶー、なにするんですか!?」
 
 俺はその表情に笑ってしまった。
 
「いや、やっぱり可愛いな〜って」
「からかってます?」
 
 彼女は少し不満そうに俺を見ているけれど、本気で怒っていないのは分かってる。
 
「からかってないよ」
 
 くすくす笑ってしまったけれど、改めて彼女をしっかり見つめた。
 
「実際にそんなことはしないけど、閉じ込めたいと思うくらい、好きってこと」
 
 
 
おわり
 
 
 
お題:鳥かご

7/25/2024, 12:44:46 PM