とある恋人たちの日常。

Open App
6/1/2024, 11:24:47 AM

 今日の夕飯は俺が作った。
 恋人は季節柄か、体調を崩してソファにぐったりしている。ベッドで休むほどではないとは言え、頭痛が酷く身体が重いと言うのだ。
 
 職業柄、彼女を診た。診断結果を分かりやすく言うなら気象病と言うやつだ。
 
「頭痛い〜」
「うんうん。この気圧じゃ仕方がないね。今日は俺がやるから休みな」
「うう……ありがとうございます……」
 
 へこたれている彼女の頭をゆっくり撫でた。
 
「雨が少ないところなのに、それでもよく雨が降るね」
「明日も、みたい……」
 
 スマホで明日の予報を見ている。その画面を覗くと紺色の傘マークがあった。こりゃ、相当降るな。
 今度は俺自身のスマホて気圧で頭痛が来るかアプリをら確認する。見事に〝超警戒の爆弾マーク〟があった。
 
 俺はシフトを思い出しながら、彼女が落ち着くようにぽんぽんと肩を音頭をとって叩いた。
 
「これからの季節的に仕方がないよ。天気が相手なんだから気にしないで。本当に無理しちゃダメだからね」
「はい、ありがとうございます……」
 
 彼女はしょんぼり項垂れる。動物の耳があったらしょぼんと耳が落ちている状況だな。
 
「だから、元気になったら俺を助けてね」
 
 いつもは俺が助けて貰っているんだから。
 
 
おわり
 
 
お題:梅雨

5/31/2024, 11:41:31 AM

 彼女のイメージカラーは白か、かなり薄い水色。
 本人も全体的に色素が薄くて透明度の高い。そんな彼女。
 
「なんですか、そんなに見て」
 
 夕飯後。
 のんびりとソファに座りながら、そんなことを考えていた。ぼんやりと彼女を見つめていたものだから、不審に思った彼女から声がかかった。
 
「いや……キレイだなって」
「な、に、言っているんですか!?」
 
 慌てながら、視線を逸らす彼女。よく見れば耳まで赤い。
 
「なんというか、汚れてない感じ?」
 
 それを伝えた瞬間。唇を尖らせてこっちをねめつける。
 ゆっくり近づいたかと思うと、膝に乗っかった。
 
「わたし、そんなに無垢じゃないですよ」
 
 そう言うと、彼女の温もりが全体に伝わった。
 
 
 
おわり
 
 
お題:無垢

5/30/2024, 11:26:22 AM

「これってどう思います?」
「うーん、難しいなあ……」
「ですよね。でも、うちの会社では結構大きな問題になっているんです」
 
 家に帰って、夕食を済ませた二人。ソファに座って二人が抱えている悩みを話し合っていく。
 
 あーでもない。
 こーでもない。
 
 職種の違う二人は、違う目線で話し合う。
 費やす時間は短いものではなかった。
 
「難しいねぇ……」
 
 青年がソファに身体を預けながら言う。さすがに煮詰まった感が否めなかった。
 
「大事になり過ぎると、私たちじゃどうにも出来ませんしねぇ……」
 
 そう言いながら、彼女は立ち上がって台所に足を向ける。
 
「どうしたの?」
「糖分入れましょう!」
 
 彼女は取っておきのグラスを出し、冷蔵庫を開けて、氷と炭酸を注ぐ。棚からシロップを出し、鮮やかな色に変化させる。そしてポンとアイスクリームを乗せた。
 
「クリームソーダ!!」
「はい!!」
 
 彼女が作ってくれたクリームソーダを口に含むと、その甘さが身体に染み渡る。疲れた脳みそにも効くというものだ。
 休憩にしっかりと時間をかけると肩の力が抜けた気がした。

「まだまだ?」
 
 青年は恋人に挑戦的なほほ笑みを向ける。
 
「明日、休みですから、まだまた、です!」
 
 二人の話し合いは、まだ。
 
 
おわり
 
 
 
お題:終わりなき旅

5/29/2024, 11:11:21 AM

 いつもにも増して、視線が痛い。
 頬を膨らませた恋人が、正座した俺の目の前で仁王立ちしていた。
 
 心当たりは、まあまあある。
 
 アレかな、コレかな。
 あ、この前、彼女用のクリームソーダを勝手に飲んだからかな?
 考えれば考えるほど、心当たりしかなくて苦笑いしてしまった。
 
「え、えっとね、喉が乾き過ぎたのと、甘いものが欲しくてつい……」
 
 思い当たるものが多過ぎるが、その中で当たりどころの大きいものから、謝ろうと言葉を選ぶ。
 
「そんなことで、怒りません。あ、嘘です。今度、クリームソーダ買ってきてください」
 
 アレ? これじゃない?
 じゃあ、どれだ?
 
 思いついたものを片っ端から謝罪していくが、どれも違った。
 
 話せば話すほど、彼女の首は横に振られ、的が外れていく。
 
 なんだ〜?
 なんで、こんなに怒っているんだ〜?
 
 頭の中に宇宙の渦のようなものが出来上がっていく。
 
「今日、お仕事しているところ、見えたんです」
 
 彼女がゆっくりとしゃがみ、俺と視線を合わせてから、静かに話し始める。
 それは、今日の仕事のこと。
 
 思い起こすのは、救助を優先し過ぎて、少し危ないことになりかけた。隊長からも、その事はコテンパンに怒られたけれど、まさかそれを見られた?
 
 彼女が正面から俺を抱き締める。
 
「もっと自分を大切にしてください。私が怒っているのはそこです」
 
 顔は見えないけれど、涙声になっているのは分かった。
 
 彼女が一番怒ること。
 俺自身が、俺を大事にしない時だった。
 
 逆ならきっと俺も同じ怒り方をするなと思うと、申し訳なさが増して、彼女を強く抱きしめ返した。
 
「ごめん。本当に、ごめんね」
 
 
 
おわり
 
 
お題:「ごめんね」

5/28/2024, 11:33:55 AM

「すっかり夏だねぇ」
「その割には湿度が高くないから、過ごし易いですよね」
 
 居間にあるベランダへ出られる大きな窓から、日が差すとある休日。
 二人はソファに座りながら、喉を潤す。透き通った琥珀色の飲み物に氷が入り、ストローを回す。グラスと氷がぶつかり、からんからんと涼やかな音を立てていた。
 
「明日も暑いのかな」
「んーっと……」
 
 彼女はスマホですいすいとアプリを立ち上げた。
 
「明日も暑いみたいです」
「そっか〜……」
 
 なんとも嫌そうな声に恋人が疑問符を浮かべる。
 
「夏や暑いの、嫌いでしたっけ?」
 
 恋人の至極単純な疑問に、青年は彼女から視線を逸らした。
 
「別に嫌いじゃないけど……君が半袖の薄着になるでしょ。それが嫌なのっ」
 
 背中から彼女の強い視線を感じる。
 思春期の学生じゃないのに、こんなふうに思う青年は顔も耳も熱くなっていた。
 
 
 
おわり
 
 
お題:半袖

Next