とある恋人たちの日常。

Open App

「すっかり夏だねぇ」
「その割には湿度が高くないから、過ごし易いですよね」
 
 居間にあるベランダへ出られる大きな窓から、日が差すとある休日。
 二人はソファに座りながら、喉を潤す。透き通った琥珀色の飲み物に氷が入り、ストローを回す。グラスと氷がぶつかり、からんからんと涼やかな音を立てていた。
 
「明日も暑いのかな」
「んーっと……」
 
 彼女はスマホですいすいとアプリを立ち上げた。
 
「明日も暑いみたいです」
「そっか〜……」
 
 なんとも嫌そうな声に恋人が疑問符を浮かべる。
 
「夏や暑いの、嫌いでしたっけ?」
 
 恋人の至極単純な疑問に、青年は彼女から視線を逸らした。
 
「別に嫌いじゃないけど……君が半袖の薄着になるでしょ。それが嫌なのっ」
 
 背中から彼女の強い視線を感じる。
 思春期の学生じゃないのに、こんなふうに思う青年は顔も耳も熱くなっていた。
 
 
 
おわり
 
 
お題:半袖

5/28/2024, 11:33:55 AM