koyagi

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10/13/2024, 12:02:56 PM

「えーやだ」「無理なんだけど」「めんどくさーい」
俺の彼女は、我儘だ。
いや彼女であるかも危ういが。
全部拒否るか逃げるかするのだ。
正直やめて欲しいし、多分小学生の方が
彼女より聞き分けがいいだろう。
「ねぇ、別れよ」
そう話した時も、彼女はスマホを見ながら駄々をこねた。
「やだー、別に別れなくてもいいじゃん」
「お前とは、もう関わりたくない」
「…ひどいね」
彼女はいかにも悲しそうに泣きはじめた。
面倒くさすぎる。
絶対俺は悪くないはずなのに、
泣いてる彼女と俺しかいないこの部屋の空間では、
俺が悪いかのように感じるから、不思議だ。
話し合いでなるべく平和に終わりたかったのだが、
中々泣き止まない彼女から漏れる俺への不満を聞いて、
段々イラついてきた。
泣けば許されると思ってそうなところが、
無性に腹が立つ。
キリがないとおもった俺は、
泣きヒロイン彼女の真似をして、
めんどくさいからやらない!
もう知らん、という鋼メンタルで
全力で部屋を荒らしたあと、
帰ってやった。
大人っぽさなんか、
最初から要らなかったんだ。

10/12/2024, 11:24:53 AM

「先輩、ちょっと話しませんか」
「ん?いいよー!バレないようにね笑」
ついに、明日は3年引退の日。
明日になって欲しくなくて、帰りたくなくて、
思わず先輩を引き留めてしまった。
本当は、校門前に溜まって話すのはダメだけど、
どうしても話したくて学校のシンボルでもある
大きな木を都合よく利用させてもらうことにする。
木の影に隠れて、暗くなった蒼い空の下、
僕と先輩は沢山の話をした。
「本当に、引退して欲しくないです」
「僕達だけでやっていける自信がなくて__」
全部本心だったけど、
やっぱり家に帰りたくないだけだった。
そんな長い話にも先輩は笑顔で頷いてくれた。
「大丈夫だって笑」
「私達も最初は怒られてばっかだったしさ」
「それに、」
先輩は僕の目を見て微笑んだ。
「君が1番頑張ってるの、知ってるよ」
あぁ、
なんでこの人は、先輩は、
こんなにも欲しい言葉をくれるのだろうか。
だから、引退して欲しくないんだ。
この先輩にいて欲しいんだ。
「ありがとうございます…っ」
そして、
「今までありがとうございました、」
深々と頭を下げた。
精一杯の感謝を伝えたかった。
自分の声が、震えていた事には気づかなかった。
「ううん、こちらこそありがとう」
先輩の声も震えていた。
泣くのは明日にしよう、と2人だけの約束をして、
今日はもう帰ることにした。
名残惜しそうに手を振って歩き出した先輩の背中を、
僕はただ、目に焼き付けた。
貴方みたいな素敵な先輩になれるように。

10/11/2024, 11:54:30 AM

微かに、何かを引っ掻くような、
そんな音が聞こえた気がした。
幻聴とか、空耳だと思って思い流すことも出来たのだけれど、
とても暇だったこともあって、
私はその音の正体を探すことにした。
正直、心霊現象とか怪奇現象だったらと考えるだけで
それはそれは恐ろしかったが、
全然そんなことは無かった。
結論、音の原因は猫だったのだ。
外の小さな庭に繋がる大きい窓の外に、
猫はいた。
毛並みが綺麗な黒猫だった。
金色のお月様みたいな瞳で見つめてくる。
くりくりとした可愛い瞳に見つめられて、
一瞬で恋に落ちた私は、その猫ちゃん(くんかもしれない)を
家の中に入れた。
人懐っこいのか、すりすりと足元にやってくる。
猫に対する知識を持ってなかったので、
取り敢えず水をあげた。
可愛い。
可愛すぎる。
私と黒猫は、今日をもって、友達になった。
夜になり、ある時間にカーテンをめくると、窓の外には猫がいる。
そんな日常の一コマ。

10/10/2024, 11:42:43 AM

僕は、大の大人が、
それも自分の父親が涙を流すのを初めて見た。
夜中、トイレに僕が起きたとき、
何やらリビングの電気が付いていることに気づいた。
ドア越しに父の影が見えたから、ドアを開けようとして、
開ける手が止まった。
微かに、すすり泣く声が聞こえてきたからだ。
ちょっとだけドアをそーっと開けた。
隙間から覗き見ると、
酒の入ったコップと、空になった容器がある机。
そして、涙を流す父さんがいた。
僕はかなり動揺して、呆然としていた。
どうすればいいかわからなかった。
声を掛けようとして、不器用なこともあって、言葉が見つからず、声をかける勇気も無く、そのまま静かに自室に戻った。
ベッドに横わたるけど、眠れない。
さっき見た父さんの姿が脳裏にあった。
意味もなく天井を見つめているうちに、
気付けば、眠っていた。

「おう、おはよう」
僕は安心した。
いつもの父さんで、いつもの下手くそな笑顔だったから。
もしかすると、昨日のは寝ぼけて見た夢だったのかもしれない。
ただ、昨日覗き見た時に机にあった酒の容器は、
記憶の通りのもので、ゴミ箱の中に乱雑に入っていた。


そんな心の内に閉まっていた昔の話を、
ついに父さんに話した。
一緒に酒を飲んでいると、懐かしい話になったのだ。
でも、父さんは教えてくれなかった。
あれは夢ではなく現実だったのか。
何で泣いていたのか。
そして、声を掛けれなくてごめんと謝ったけれど、
誤魔化すように笑ったあと、
別の話をし始めて、僕の疑問は流れて行った。
多分、見せたくない涙だったんだよね。
今もあの時の真相は知らないけど、
弱さを見せないところが、やっぱり、
父さんらしいや。

10/9/2024, 11:27:41 AM

「さよーならー」
階段を降りて、体育館へ向かう。
しかし、その足取りは重い。
今日も部活か…。
決して、楽しくない訳じゃない。
ただでさえ授業で疲弊している。
この後のきつい練習を考えれば頭も抱えたくなるのだ。
そしてなんとも顧問が苦手。
指導内容は間違って無いかもしれないけど、
指導方法がちょっと……。
士気が下がるような事ばっか言ってるし、
自分が1番偉いと思ってるし。
来年飛ばないかなー。
内心で愚痴大会している内に、体育館に着いてしまった。
性格の悪い僕は、練習時間を少しでも縮めるため、
わざと時間をかけて、ユニフォームに着替え、
バッシュを履いた。
部員のほとんども、今日は疲れた顔をしている。
うんうん分かるぜとだる絡みしたいほどだったが、
辞めておいた。
黙々とウォーミングアップに取り組む。
すると、続々と先輩達がやってきた。
ミーティングの時間だ。
部長が前に立って話す。
神妙そうな表情で話し始めた。
何かあったのかと不安が募る。
「今日は……」
部員全員、ゴクリと唾を飲み込んで次の言葉を待った。
永遠とも思われる数秒が経ったあと、
突然嫌な笑みを浮かべて、叫んだ。
「顧問が、出張でいませーーんっ!!」
その言葉を瞬時に聞き取り、理解した僕たち。
部長が全部を言い終わらない内に、飛び上がって
雄叫びを上げた。
「うぇぇぇぇい!!!!」
疲れなんかどこかに吹き飛んだ。
今日はなんて素晴らしい日なんだ。
「まじか!えぐいえぐいww」
「何する!?何する!?」
「よっしゃぁ!」
「今日は、」
『祭りだぁっっっ!!』

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