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5/27/2025, 1:46:22 PM

『Sunrise』『昨日と違う私』『そっと包みこんで』


「フハハハハ。
 やったぞ!
 ついにやったぞ!」

 私は布団の上で高笑いしていた。
 前々からの悲願である『早起き』を果たしたからである。
 『早起きが悲願?』と思われるかもしれないが、私にとって『早起き』というのは奇跡にも近い所業であった。

 というのも私はどうしようもなく朝が弱い
 アラームを設定しても起きれず、しょっちゅう学校に遅刻している。
 そのため授業の一限目にはほとんど出たことがなく、それどころか昼休憩の時間に登校するのも珍しくない。

 当然友達との約束の時間に間に合った事は無く、ついには『ヤツとの午前の待ち合わせはNG』と学校中で噂になったほどである。
 そんな私を、友人たちは『永久の遅刻魔』と呼び恐れた。

 馬鹿な自分は、二つ名を貰って調子に乗っていたのだが、昨日のHRの後に担任に呼び止められたことで事態は一変する。
「お前、このままだと留年な」
 死刑宣告に等しい言葉に、さすがの私も危機感を覚え対策を練ることにした

 だが普通にアラームをセットしても起きることは出来ない。
 だからと言って、他にいい方法もない。
 そこで考えたのが、アラームの設定をたくさん設定する事。
 下手な鉄砲も数打ちゃ当たる。
 一分ずつずらして100件設定すれば、どこかで起きることが出来ると踏んだのだ。

 そして今日、なんと90個目のアラームで起きることが出来た。
 今から走って行けばHRに余裕で間に合う。
 素晴らしい。
 これならば遅刻せずに登校出来る。

 革命である。
 革新である。

 さようなら、昨日までの私。
 こんにちは、昨日と違う私。
 これで遅刻魔の汚名も返上だ。

「おっとこうしちゃいられない。
 とっとと家を出よう」
 早く起きれたとはいえ、時間に余裕があるわけではない。
 私は朝食の食パンを口にくわえ、私は家を飛び出す。

「遅刻、遅刻~」
 家から出ると、朝特有の気持ちのいい空気が流れていた。
 起きた時はいつも日が高く昇っているので、こうして早朝に出るのは久しぶりである。
 道を急ぐサラリーマン、集団登校する小学生、自転車で私を追い抜かす同級生。
 なにもかもが新鮮で楽しい。

「素敵な朝ね。
 もしかしたら運命の出会いがあるかも」
 私は年相応に、まだ見ぬ運命の相手を妄想した。

 それがいけなかった。
 曲がり角に差し掛かろうとした時、角から人が出てきたのだ。
 妄想に夢中だった私はとっさに反応できず、そのままぶつかって転んでしまった。

「イタタ、まさか本当にぶつかるとは……」
 注意一瞬怪我一生。
 アホなことは考えるものでない。
 自分の迂闊さを呪いつつ強打した尻をさすっていると、目の前に手が差し伸べられる。

「ごめん、前を見てなかった。
 立てるかい?」
「いいえ、こっちも考え事してて――
 えっ」

 手を差し伸べてくれた相手はなんと、ストライクゾーンど真ん中のイケメンであった。
 金髪碧眼の日本人離れした風貌で、高貴な雰囲気を纏いまるで異国の王子様。
 ゲームや漫画にしか出てこないような美貌は、私の芽を釘付けにする。
 彼の金髪は朝日に照らされて輝き、まるで――

「Sunrise」
「え?」
「いえ、何でもないです」

 あまりの美貌に思わず心の声が出てしまった。
 迂闊な妄想はケガの元と分かっているのに、なぜ口に出してしまうのか?
 要反省である

 それにしても、相手が日本人ではないからと言って、まさか英語で感想が出て来るとは……
 私、だいぶテンパってる。

「それで、大丈夫?」
「はい、大丈夫で――痛っ!」
「足をひねってるみたいだね」
「うう、これじゃ留年しちゃう……」

 なんてことだろう……
 遅刻しないために早く家を出たのに、これではもう間に合わない
「ごめんね。
 僕の不注意であ悪いことしたね
 なら!」
「えっ」

 王子様に抱き上げられて、お姫様抱っこされる。
 心の準備が出来ていない私は、ただ口をパクパクさせるだけで何も言えなかった

「ごめんね、急にこんなことして」
「……いえ……」
「強引だと分かっている。
 でも怪我をさせた責任を取らせてくれ!」
「責任……」
「ああ、僕が責任をもって、学校に連れて行こうじゃないか!」

 なんて素晴らしい人なんでしょう。
 前方不注意の自分が悪いのに、責任を取ってくれるとは!
 今まで出会った人の中で、一番優しい人だ。
 普通の同級生ならばこうはいかない。

 ひょっとして向こうも私に運命を感じてくれたのだろうか?
 もしそうならば、こんなに素晴らしい事は無い。

 これはきっと運命の出会い。
 これをきっかけに、私たちの距離は縮まり、最後は一緒になって――


 ◇

 ピピピピピピピピ――

 聞きなれたアラームの音が周囲に鳴り響く。
 ふと周囲を見渡すと、目に映るのは見慣れた自分の部屋。
 なんでこんなところにいるのかと、一人首を傾げる

「あれ王子様は……?」
 いつのまにか王子さまはいなくなっていた。
 そしてお姫様抱っこされていたのに、今は布団の中。
 どういうことだ?
 霞がかかったような頭で考えることしばし、衝撃の事実に気づく

「まさか、夢……?」
 夢。
 王子様もなければお姫様抱っこもない。
 あるのは私をそっと包み込んでくれている布団だけ。
 すべては私の夢の中の出来事だ。
 私はどうしようもない絶望感に襲われる。

 私は信じられない思いで、スマホの時計を見る。
 時計を見ると、朝のHRの十分前。
 起きたと思われた時間より10分後の時刻だった。

 自分が設定した100番目のアラームで、尊厳を殴り捨て全力疾走すれば何とか間に合うと言う、最終防衛線の時間だ。
 今から走ればまだ間に合う。
 だが――

「ま、いっか」
 私は寝ることにした。
 だってそうでしょう?

 学校と王子様。
 比べるべくもない。

 それに遅刻もあと一回くらいなら遅刻は大丈夫。
 先生も『このままだと』って言ってたから。
 つまり誤差である。

 というわけで――

 さよなら、昨日と違う私。
 また会ったね、昨日までの私。
 今日も一日お願いします。

「おやすみなさい」
 私はもう一度王子様に会うために、もう再び夢の中へと旅立つのであった

5/23/2025, 2:13:28 PM

『まって』『どうしても……』『空に溶ける』


 遠くの空に、花火が打ちあがる。
 打ち上がった花火は、極彩色の花を夜空に咲かせた。
 それを皮切りに、次々と花火が打ち上げられる。
 もはや夜も遅いというのに、辺りは昼のように明るい。
 
 たくさんの花火が空を彩る風景は、まるで魔法のよう。
 夜空に咲く魔法の花に、人々の目は釘付けになり、私も空から目を離すことは出来なかった。
 でもシンデレラの様に、魔法はいつかは解けるもの。

 数百発の花火が打ちあがり、有終の美を飾る最後の花火が空に溶けた瞬間、辺りには静寂が訪れる。
 けれど、それは一瞬のこと。
 すぐに観客から盛大な拍手が巻き起こった。

「花火大会はこれにて終了です。
 皆様、暗いので足元に気をつけてお帰りください」
 アナウンスが終了を知らせ、周囲もゾロゾロと歩き始める。
 私たちも迷惑にならないよう、周りの人たちに合わせて歩き出す。

「沙都子、どうだった?
 私の地元も捨てたもんじゃないでしょう?」
 私は隣を歩く友人に声を掛ける。

「そうね、意外と良かったわ」
 沙都子は満足気な笑みを浮かべた。

 沙都子は海外暮らしが長い。
 花火大会に参加したことが無いと聞いて誘ったのだが、こうして喜んでもらえてなによりだ

「百合子に誘われたときは不安だったけど、来て良かったわ」
「なんで疑うのさ!」
「アナタ、いつも物事を大げさに言うのよ。
 自覚ある?」
「……少し」
「直しなさいね」
「……はい」
 なんで花火を見ていい気分の時に説教を受けなければいけないのか……
 私、悪い事した?

「アナタの普段の行いが悪いのよ」
「心読まないで」
 沙都子はたまに私の心の中を読む。
 それなりに付き合いが長いので察せられることはあるのだろうが、私は未だに沙都子の考えている事が分からない。
 不公平である。

「ところでこの花火大会は、なんで五月にやってるの?
 花火にはまだ時期が早いと思うけど」
「さあ?」
「呆れた!
 アナタの地元でしょうに」
「地元だからこそ疑問に思わない。
 子供の時から五月の花火が普通だったからね」
「そんなものかしらねえ……
 まあ、最近暑いし、熱中症がらみかしら……」
 沙都子がぶつぶつ言いながら、器用に人ごみを歩く。
 前を見ていないのに、人にぶつかる気配がない。
 エスパーか?

「ま、いいわ。
 花火大会も終わったことだし、それじゃね」
「え?」
 大きな交差点に差し掛かった時、沙都子は手を振りながら私と別の方向に向かって歩き始めた。
 それを見て、私は慌てて沙都子を引き留める。

「まって、沙都子。
 どこ行くの?」
「どこにって変なこと聞くのね。
 自分の家よ」
「ええ!?」
「なんでそんなに驚くのよ。
 自宅に帰ることが、そんなに変?」
「このまま私の家に泊まるんじゃないの!?」
「え……」
 沙都子が驚いたような顔をする。
 そして顎に手を当て少し考えた後、私を見た。

「そう言えばそんな話もしていたわね。
 すっかり忘れていたわ」
「ひどい!」

 てっきり泊まりに来ると思っていたので、本気で驚く
 そう言えば沙都子は荷物を持っていない。
 浮かれ過ぎて全く気づかなかった。
 一生の不覚。

「でも今から帰ると遅くなるよ。 
 電車だって混むよ」
「家族に迎え来てくるように言ってあるわ」
「それでもかなり遅くなるじゃん。
 ウチに来なよ!」
「でも着替えとかないし……」
「大丈夫!
 私の貸すから!」
「百合子、さすがに必死過ぎない?」

 私の剣幕に押されたのか、沙都子は若干引き気味だ。
 乗り気ではないようだ。
 でもここで諦めるわけにはいかない。
 私には引けない理由があるのだ。

「必死になるような理由、なにかあるのかしら?」
 沙都子は私の心の中をのぞくように、私の顔を見る。
 誤魔化すことは出来るけど、嘘を言って機嫌を悪くされるのも都合が悪い。
 それに、大げさに言うなと説教を受けたばかり。
 ここは正直にいこう。

「親に友達来るからって、お小遣い貰ったの。
 もう歓迎用のお菓子買ったから、これで沙都子が来なかったら私が食べたかっただけになっちゃう」
「いいじゃない、それでも。
 私が泊まったところで、お菓子はあなたが一人占めするでしょう?」
「そんなこと、ない、よ」

 沙都子の指摘に、私は言い澱む。
 たしかにお菓子を食べるのはいつも私。
 沙都子は食べないわけではないのだが、少食であまり食べないのだ。
 学校に持って来るお弁当も、びっくりするくらいミニマムサイズ。

 なので沙都子が泊まりに来てもお菓子を食べることはなく、結局食べるのは私だけ……
 じゃあ問題ないな。

 ではなく!

「いや、こういうのは気持ちだから!」
 危なかった。
 沙都子の言葉に乗せられることろだった。

「お菓子を一人で食べても意味が無いの。
 沙都子の側で食べるのが良いの!」

 そうだ。
 ただ一人でお菓子を食べてもつまらない。
 沙都子と一緒だからおいしいのだ!
 なので沙都子にはいてもらわないと困るのである。

 だが沙都子は手ごわい。
 並大抵の手段では意思を変えることは出来ないだろう。
 親の迎えもすぐ来るだろうし、手段を選んではいられない。

 ならば『アレ』しかあるまい。
 効果が強過ぎて封印していたが、そうも言ってられない。
 これを喰らえば、さすがの沙都子とて気が変わるだろう。
 私は大きく息を吸い、少し前かがみになる。
 
「どうしても……
 だめ……?」

 くらえ、必殺『上目遣い』!
 どんな人間でも、可愛らしさ全開でお願いすれば心が揺れる。
 そこに私の美貌か合わされば、強情な沙都子だって――

「付き合いの長い私にブリッコは効かないわよ」
 だめだった。
 予想に反し、沙都子の心は少しも動かなかったようだ。
 おかしいな。
 家族ならこれでイチコロなのに。
 沙都子って、ハニートラップには引っ掛からないタイプ?

 どちらにせよ、作戦は失敗だ。
 次なる手を打たないと。
 私が次の作戦を考えていると、沙都子が急にハッとした顔になった

「分かったわ、百合子。
 アナタの考えている事が……」
 沙都子は私の肩に手を置く

「分かったって、何が?」
「察せなくて悪かったわ」
「察するも何も、理由は全部言ったが?」
「要するにアナタ――」
「聞いちゃいない」

 沙都子は私の言葉を無視し、見たこともないくらい優しい顔で微笑みかける

「夜のトイレが怖いのね」
「違う!」
 いきなり何言うんだコイツ。

「暗いのは怖いものね。
 一緒に付いて行ってあげる」
「一人で行けるもん!」

 沙都子言葉に、つい大声を上げる。
 なんでこの年齢にもなって、夜のトイレの心配をされなきゃならんのだ。
 高校生の会話じゃない

「あら、一人で大丈夫なのね。
 じゃあ、私はいなくても大丈夫ね?」
「しまった」
 反論してしまったばかりに、泊まらなくてもいい理由を与えてしまった。
 もし肯定していれば、沙都子は今頃……

 いや、さすがに無理だな。
 私にもプライトがある。
 トイレにも行けん高校生とは思われたくない。

「あ、ママの車だわ」

 一人で悶々していると、沙都子の親の車が来た
 沙都子はわき目もふらず、車に近づく。

 もう時間切れ。
 今回は沙都子のお泊りは諦めたほうがいいようだ。
 心残りはあるけれど、ちゃんと確認しなかった私も悪い。

 なに、次の機会がある。
 その時は、ウザがられるくらい確認すればいい――

「お待たせ」
 とか思っていたら沙都子が戻って来た。
 親が乗って来たらしき車は、そのままUターン。
 どこかへ行ってしまう。

「あれ、沙都子。
 帰るんじゃないの?」
「まさかさっきの話本気にしたの?」
 沙都子はイタズラが成功したような笑みを浮かべる

「私が約束を忘れるわけないでしょう」
 と、さっきまで持っていなかったバッグを、私の前に持ち上げる

「花火を見る時まで持っていたら邪魔でしょう?
 着替えは後から持ってきてもらうように、お願いしていたの」
「ええ!?」

 自分が沙都子に遊ばれている事にようやく気付く。
 何度目か分からないイタズラの成功に、沙都子の顔は満面の笑みだ。

「さ、行きましょう。
 この辺りの道は分からないから案内よろしくね」
「……うん」

 もし願いが叶うのなら、沙都子の心を読めるようになりたい。
 そうすれば、こんな邪悪な企みなんて二度とひっかからないのに……

「無理だよ」
「だから心読まないで!」

 次こそ絶対に騙されない。
 私は決意を新たにして、ニヤニヤする沙都子を家へと案内するのであった

5/19/2025, 10:03:09 PM

『光り輝け、暗闇で』『手放す勇気』『まだ知らない世界』

「コウ君、そのズボン、パパにちょうだい」
「イヤだイヤだ」
「そんなこと言わず、ね?」
「イヤだイヤだ」

 息子が生まれてはや二年、息子はイヤイヤ期の絶頂期であった。
 拒否の言葉を叫びながら、息子は全力で抵抗してくる
 なんにでも『イヤだ』という息子であったが、まさかジュースを零したズボンすら離さないとは……
 体全体を使って抱きしめるので、無理やり奪うことも出来ない。

 妻はこんな時どうするのだろうか……
 今はいない妻を思う。

 先週の事である。
 妻が神妙な顔で言った。

 『推しのライブがあるから遠征したい。
  その間、息子の世話を任せてもよいか?』

 自分はすぐに了承した。
 無理をさせている妻の希望は、可能な限り叶えてあげたかったからだ。

 ウチでは専業主婦である妻が息子の世話をしている。
 言い訳がましいが、仕事が忙しく手伝うことが出来ないのだ。
 そんな中、妻は自分の趣味であるアイドルの追っかけを我慢し、子供の面倒を見ているのだ。

 そんな妻が、推しのライブに行きたいと言う。
 ならば行かせてやらねばなるまい。
 会社には『絶対に外せない用事がある』と休みを取り、不退転の覚悟を持って息子の世話に臨んだ。

 だが甘く見ていた。
 まさかイヤイヤ期が、こんなにも苛烈な物だったなんて……

 何を言っても嫌と言う。
 好きなお菓子を上げても嫌と言う。
 何をしても嫌と言うし、しなくても嫌と言う。
 頭がおかしくなりそうだった。

 妻はこれに耐えていたというのか。
 頭が下がる思いであると同時に、もっと休みを取って楽をさせてやりたいと思う。
 そのためには仕事量を調整して……

「イヤだイヤだ」
 そんな事を考えている間も、息子はずっと叫んでいた。
 確かに未来の計画は大事だが、それは後回し。
 今は目の前のことに集中だ。

「イヤだイヤだ」
 息子は疲れを知らないのか、ずっと泣き叫んでいる。
 泣き疲れるのを待って回収することも考えたが、今回諦めた方がいいらしい。

 かといって無理矢理奪うとさらに酷くなるので、ぜひとも自分の意思で離してもらいたいところ。
 どうすれば息子はズボンを離してくれるのだろうが……
 ヒントを得るために、部屋を見渡す

 すると、息子のお気に入りの戦隊ひヒーロー、ユウキマンのソフビ人形が目に入る。
 これだ!

「コウ君、ユウキマンのセリフ、覚えているかな~?」
「ユウキマン?」
 息子の無き声がピタリとやみ、心の中でガッツポーズする。
 さすが正義のヒーロー、ユウキマン!
 怪人イヤイヤキもイチコロだぜ。

「『勇気を持て』」
「うん、そうだね
 だからコウ君も勇気を持つんだ」
「何の?」
「ズボンを手放す勇気!」
「パバが離せば?」

 論破されてしまった。
 理不尽な要求にも屈せず、即座に言い返されるとは……
 少し前まで言葉すら話せなかったのに、素晴らしい返しだ!
 成長したな、息子よ!

 なんて、バカなことを考えている場合じゃない。
 次なる策を考えてないと……
 と、息子が来ているTシャツを見て、あることを閃いた。
 息子の着ているシャツ、それは……

「コウ君、ユウキマンはこうも言ってたよね」
「言ってない」
 交渉する前に坊やに否定される。
 ちょっとへこむけど、理不尽にめげず言葉を続ける。

「『輝け、暗闇で』」
「!」
 坊やの目の色が変わる。
 イヤイヤ期でも、ヒーローは特別らしい。
 息子の反応を見て、成功を確信する。

 『輝け、暗闇で』は、ユウキマンのセリフだ。
 と言っても本編のセリフでは無い。
 CMでのセリフである。

 そのCMとは『光るパジャマ』のCM。
 蛍光塗料が塗ってあり、暗い場所に行くとヒーローの姿が浮かび上がると言う魔法のアイテムだ。
 息子はこれが大のお気に入りで、寝る前はいつもこのシャツを着ている――と妻が言っていた。

「じゃあ、ユウキマンに会うために、寝る準備をしないとね。
 ほら歯磨きに行ってきなさい」
「うん!」

 今までの悪魔のような振る舞いとは打って変わり、天使のような笑顔を見せる息子。
 それを見て、自分も自然と笑顔になる。
 さすがヒーローだ。
 子供だけでなく、大人も笑顔にするのだから敵わない。

 息子は抱きしめていたズボンを放り投げ、洗面所と向かう。
 それを見送ってズボンを回収し、息子の目につかない所に置く。
 これで一安心。
 あとは機を見て洗濯機に放り込むだけである。

 だがまだ油断はできない。
 これから寝かしつけが待っているのだ。
 妻が言うには、息子は寝る直前が一番元気らしい。

 自分がまだ知らない世界。
 何が起こるか分からないが、挫けるわけにはいかない。
 寝かしつけなければ、自分も寝ることが出来ないからだ。

「これからが本当の闘いってわけか……」
 強敵との戦いに臨むヒーローの心情は、こんな感じなのだろうか……
 寝かしつけと言う最終決戦。
 これに勝たなければ、自分に安眠は訪れない。

「ユウキマン、力を貸してくれ……」
 そう呟きながら、新しい戦いに備えるのであった

5/17/2025, 12:17:27 PM

『ただ君だけ』『記憶の海』『酸素』


「――つまり脳は記憶の海です。
 今まで経験した膨大な体験を脳に蓄えることで、より深くより広い海を形成します。
 その中から特定の海水をくみ出すこと――つまり記憶を取り出す事を『思い出す』といいます。
 脳はその高度な機能によって、必要に応じて適切な記憶を思い出すことが出来るのです。

 しかし、脳も万能ではありません。
 皆さんも経験があるように、思い出そうとして思い出せない事があります。
 これは一般的に『忘れる』という現象です。
 記憶が深い海の底に沈み、容易には取り出せなるのです。

 これは脳の通常の働きで、使わない記憶は海の奥底に沈め、よく使う記憶は海の表面に漂わせるのです。
 こうすることで、迅速に記憶を取り出すことに成功しているのです

 しかし、脳が『必要ない』と忘れてしまった記憶の中には、後々必要になったという事もよくあります
 では忘れてしまった記憶を思いだすにはどうすればいいか?
 次の講義では、具体的な方法を説明します」

 パチパチパチパチ。
 
 盛大な拍手の中、ジェニファーは丁寧なお辞儀をし、部屋を出ていく。
 その姿は二十歳になったばかりとは思えない程堂々としたもので、誰もが彼女から目が離せなかった。
 若くして教授になった彼女であるが、嫉妬されるどころかファンクラブがあるほど人気がある
 さらに、彼女の多大なる功績から彼女専用の研究室を与えられ、研究室で論文を読むのが彼女の日課であった。
 そして今日も講義が終わり、日課の論文を読もうと研究室の前まで戻って来た時であった。

「相変わらず素晴らしい講義だよ、ジェニファー」
 彼女の後ろから声をかけてくる男がいた。
 彼の名前はスティーブ。
 ジェニファーより少し年上で、鍛え上げられた体が印象的な男性であった。
 それもそのはず、スティーブは学生ではなく、犯罪に立ち向かう警察官なのである。

「スティーブ、アナタが講義を聞いていたのは知っていたわ。
 でも本当に素晴らしいと思ってる?」
「思ってるよ、なぜだい?」
「だってアナタ、寝てたじゃない。
 ぐっすりと」
 ジェニファーの鋭い指摘に、スティーブはポリポリと頭を掻く。

「あー、難しい話は苦手でね。
 すぐ寝てしまうんだ。
 でも素晴らしいと思ったのは本当さ!」
「そう、ならいいわ。
 で、要件は何?」
「君に会いに来たのさ」
「嘘」
「嘘じゃない!」
「アナタがただのファンなら信用するけど――」
 ジェニファーは言葉を一旦区切った。
「アナタはいつも厄介事を持ってくるわ」
 ジェニファーはうんざりしたようにため息をつく。

「違うんだ。
 ただ君だけに会いに来ただけで――」
「じゃあ、楽しくお話したことだし、ここでお別れをしてもいいわね?」
「それは……」
「ほら、早く話しなさい。
 私は忙しいの」
 ジェニファーは研究室の扉を開け、中へ入るように促す。
「中で話しましょう」
 ジェニファーの有無を言わせない気迫に、スティーブは肩をすくめてから部屋へと入るのであった。




「被疑者の名前はジョン。
 性別は男性、年齢は君と同じ20歳」
「彼、何をしたの?」
「前々から不仲だった隣人の家を放火した。
 ボヤの時点で発見されたのでけが人はいなかったが、家にあった登山用の酸素ボンベに引火して全焼。
 放火して逃げようとしたところを隣人が取り押さえ、警察が来てそのまま現行犯逮捕さ」
「なら冤罪の線はなしと……
 なら、なぜ私の所に来たのかしら?」
「彼は無罪を主張している」
「現行犯なのに?」
「彼の弁護士が言うには、被疑者はそんな記憶が無いと言うんだ」
 ジェニファーは呆気にとられる

「呆れた!
 警察はその場しのぎの嘘を信じてるわけ?
 記憶ないからやってないとでも!?」
「そうもいかないんだ」
 スティーブの言葉に、ジェニファーは訝しむような表情を見せる。

「被疑者は忘却薬を使われたと主張している」
「忘却薬……」

 忘却薬――文字通り特定の記憶を忘却する薬の事。
 PTSDの治療に使用し、トラウマの原因である記憶を忘れさせるのが本来の用途である。
 普通は一般人が手に入る薬ではないが、医療関係者の横流しによってそれなりの量が流出していた。

「被疑者の弁護士は、隣人が被疑者を陥れるために忘却薬を使ったと主張している。
 『記憶が無い事をいい事に、隣人が好き勝手言ってる』ってな」
「でも現行犯なんでしょ?
 犯人の戯言なんて聞かず、そのまま裁判すればいいじゃない」
「被疑者が放火したと言うめぼしい証拠が他に無くてな。
 証言しているのは取り押さえた隣人だけ。
 二人は険悪だからその可能性も否定できず、決め手に欠けているんだ」
「なるほどね……
 で、私に何をして欲しいの?」
「被疑者の当時の記憶を思い出させてほしい。
 思い出しさえすれば、食い違いを検証できるからな」
「いいわよ」
「本当かい?
 助かるよ」
 スティーブは

「てっきり断られるかと……」
「忘却薬について、仮説があってね
 試してみたいかったから丁度よかったわ」
「なんだ、自分の都合かよ……」
「いいじゃない別に。
 別にいい加減な仕事をするつもりはないしね。
 それよりも、成功したらご飯奢ってね」
「はいはい」
 スティーブは胸中に不安な思いを抱えながら、ジェニファーを警察署へと送るのであった。


 ★

「助かったよ、被疑者もばっちり記憶が蘇ったと言っていた」
「それは良かった」
「断言できないが、俺の見立てでは被疑者が犯人で間違いないな」
「根拠は?」
「刑事の勘」
「非論理的ね……」
「安心しろ。
 裏取りはしっかりするさ」
 スティーブは胸をドンと叩き、自信のほどを伺わせた。
 だが自信満々なのは一瞬だけ。
 すぐに真剣な顔に戻り、ジョセフィーヌを見た。

「だがな、一つだけいいかな?」
「何かしら?」
「たしかに頼んだのはこちらからだが、あまり手荒な事はして欲しくない」
「ああ、被疑者を脅しつけた事を言っているの?」
 ジョセフィーヌは、スティーブに見せつけるように手ハンマーを持ち上げる。
 それを見て、つい先ほどの光景を思い出したスティーブは少し後ずさりした。

「今回に限り、あの方法が適切なのよ」
「そうは言ってもな。
 『殴られたくなけば思い出せ』って、正気の沙汰じゃない
 結果として思い出せたから良かったとはいえ、被疑者怯えていたぞ」
「忘却ってね、忘れるだけじゃダメなの」
「なんだって?」
 スティーブは、急な話題の転換に戸惑い思わず声を上げる。
 どういう意味か問いただそうとしたが、思い直しそれ以上追求することは無かった。

「忘れた上で、他の記憶に覆いかぶさって、あったことすら思い出せなくなるのが忘却なの」
「分かったぞ。
 君の話で例えるなら、被疑者の記憶の海の底に沈んではいたが、その上から砂で覆われてなかったから汲み上げることが出来た、かな?」
「あら講義を聞いていたのね。
 そうよ、忘れただけなら切っ掛けがあれば思い出せるのよ」
「命の危機に瀕すれば、単に忘れた記憶ぐらい思い出せるってか。
 たしかに走馬灯ってあるもんな」
 方法が過激ではあったが、ジョセフィーヌの言葉には一理あるとスティーブは納得する。
 それでもハンマーをもって被疑者に迫るのは、やりすぎという考えは変えなかったが。

「つまり被疑者は嘘をついていた?」
「どちらかと言えば、思い込みね。
 『忘却薬を飲んだ』から『思い出せない』と思い込んだの。
 そもそも思い出す努力をしないから、結果として『思い出せない』の」
「そこで『殴られたくなけば思い出せ』と言って、思い出す努力をさせたと」
「本来の用途のPTSDの治療もね、薬だけじゃなく、いろんな治療を並行して行って少しずつ『思い出せなく』していくのよ。
 トラウマを思い出す努力をさせないようにね」
「忘却薬も、名前程便利な物じゃないんだな」
 先入観って怖いなと、スティーブは呟く。
 そこに気づかないままであれば、この事件はもっと面倒なことになったあろう。
 だがジョセフィーヌの助言によって、被疑者の記憶は取り戻せた。
 あとは証言の裏取りを行うだけである

「これで事件は終わったようなもんだな」
 スティーブは肩の荷が下りて、清々しい気分であった。
 今日は久しぶりにベットで寝れるかもしれない。
 スティーブはそんな事を考えていたが、そうは問屋が卸さない。
 浮かれたスティーブの前に、ジョセフィーヌがすっと一歩前に出る

「スティーブ、食事はどこへ連れて行ってくれるのかしら?」
 ジョセフィーヌが、今日一番いい笑顔を向ける
 その言葉を聞いて、スティーブは目をパチクリさせた。

「何の話だ?」
「奢ってくれるって言ったじゃない」
「そんなの言ったか?
 記憶に無いな」
 だがけんもほろろに、スティーブは否定した。
 それを受け、ジェニファーは微笑みを崩さずハンマーを軽く持ち上げる。

「悪かった、思い出した!
 思い出したから!
 そのハンマーを下ろせ」
「それは良かった。
 じゃあ、行きましょうか」
「給料日前だから安いところで頼む」
「前から気になってたカフェがあって」
「聞いて」

 ジョセフィーヌは、はたして自分の懐事情を記憶してくれるのだろうか。
 そんな事を思いながら、スティーブは彼女の後ろを付いて歩くのであった

5/11/2025, 2:32:38 AM

『ラブソング』『木漏れ日』『届かない』


 とある春の晴れた日。
 種まきを行うための前準備として、広い畑を耕していた。

 春らしく、暑くもなく寒くもないちょうどいい気温。
 鳥たちは歌を歌い、蝶は優雅に舞っていた。
 典型的な、穏やかな春の日。

 しかし、今の俺は優雅さには程遠い状態だった
 農作業は簡単に見えても地味に重労働、作業を始めてから時間は経ってないのに、すでに汗でびっしょりだった

「だいぶ耕したが、まだ先は長い。
 ここらで少し休もう」

 休める場所はないかと辺りを見渡したころ、大きな木の下に影が出来ているのが見えた。
 地面には木漏れ日が差し込み、キラキラと輝いている。
 あそこならゆっくり休めそうだ。
 そう思いながら木の元に向かう。

 だがこういった時に事件は起こるものだ。
 鼻歌を歌いながら歩いていると、なにかが足にぶつかった。

「あっ」
 視線を向けて見ると、祠らしきものがあった。
 そう『あった』のだ。
 俺が足をぶつけて壊してしまい、今はただの瓦礫だった。

「やっべえ。
 これ壊すなって言われたのに……」

 ここで農業を始める際、扱いに注意するように耳にタコが出来るくらい言われた祠だ。
 特に近所の人がこの祠を大事にしていて、自分が壊したと知られると何を言われるか分からない
 バレる前に逃げよう。

「お前!
 祠を壊したのか!」
 だが逃げることは出来なかった。
 後ろから声をかけられ、タイミングを失ってしまう。
 まさか人がいたとは。

「わざとじゃないんです!
 許してくださ……」
 謝りながら振り返ると、そこにいたのは古風な着物を着た美少女だった。
 あまりにも場違いな格好に驚き、最後まで言葉を言えなかった。

「ふん、口だけならなんとでも言える。
 どうしてくれようか……」
 腕を組んでプリプリと怒っている少女。
 田舎なので近所の人間は全員顔見知りなのに、目の前にいる少女は見たことが無い顔だった。

「えっと君は……」
「そこの祠に住んでいたモノじゃ!」
 いきなりとんでもない事を言う。
 いつもなら『揶揄うんじゃない!』と一蹴するところだが、その少女が纏う雰囲気は普通じゃない。

 まるで江戸時代から来たような服装、年頃なのに化粧っ気のない顔。
 古臭い言い回し。
 なにより少女の持つオーラが、その言葉に説得力を持たせていた。

「それは……
 この祠で祭られてた神様ということ」
「神様と言われるほど偉いもんじゃないがの。
 概ねその通りじゃ。
 しかし……」
 少女はためを作りながら、俺の足元を見る。

「しかしわしの家はもうない。
 お前さんが壊したからの」
「うぐ」
 痛いところを突かれ、思わずうめき声を上げる。
 この点に関しては自分が全面的に悪いので、何も言い返せない。
 その様子を見抜いたのか、少女は目を怪しく光らせる。

「祠を壊したのじゃ。
 命をもって償ってもらう」
「そ、それだけは勘弁してください!
 何でもしますから!」
「今『なんでも』って言った?」
 少女の顔がにちゃりと歪むのを見て、背筋に冷たい物が走る
 『言ってないです』と言いたかったが、そんな事が言える立場じゃないので口をつぐむ。

「よろしい。
 お前さんの熱意に免じ、命だけは見逃してやろう」
「ありがとうございます」
「では代わりにだが……
 ラブソングでも歌ってもらおうかの……」
「はい、喜んで――え?」
 ラブソング?
 聞き間違えたかな。

「わしに愛の歌を捧げるのだ。
 わしを満足させることが出来れば、命を助けてやろう」
「えっと?」
「なんだ、不服か?
 なら殺してやる!」
「そうではなく」
 俺は慎重に言葉を選ぶ。

「こういう時の相場って、供物をささげるとかじゃないの?
 例えば狩った鹿の死体とか、あるいは俺の血とか」
「……わし、グロイの嫌い……」
「うす」
 あー、最近多様性だからね。
 そういう神様がいてもいいよね。

「で、どうする?
 死ぬか、ラブソングか?」
「ラブソングでお願いします」
「よかろう。
 では魂を込めて歌うがいい!」

 少女の合図で、流行りのラブソングを歌う。
 アカペラかつ歌に疎いのもあって歌詞は怪しいが、心を込めて歌えたはずだ。

 歌い終わり、少女を見る。
 すると少女は小さく頷き、鐘を叩いた。

 カーン。
 金属音が悲しく響く。
 テレビで見る時は笑っていたが、実際自分の立場になると結構ショックだった。
 渾身のラブソング、彼女の合格基準には届かないようだ……

 ……というかどこから取り出したの、それ?
 突っ込むべきか悩む俺をよそに、少女は歌の論評を始めた。

「だめじゃな、全然気持ちがこもっとらん。
 ラブソングで気持ちがこもってないって、致命的じゃぞ」
「そりゃ初対面ですし、会って五分ですし。
 プロの歌手でもないのに、気持ちを込められたら気持ち悪いですよ」
「罰ゲーム!」
「もう一度チャンスを!」
「いいぞ」
 あっさりとOKが出たことに驚く。

「わしとて鬼ではない。
 お前さんが諦めないと言うなら、最後まで付き合ってやろう」
「本音は?」
「暇なので出来るだけ引き伸ばして楽しみたい」
「暇つぶしかよ」
「しかたなかろう!
 ただ見守るだけって、変化がなくてつまらないんじゃよ!
 文句があるなら殺すが?」
「ありません」
「では歌え!
 わしを失望させるなよ」
 こうして俺と神様の、数年にわたる耐久ラブソングバトルが始まったのだった。


 ◇

 数年後。

「おぎゃあ、おぎゃあ」
「おーよしよし、いい子いい子」

 俺の手の中で、生まれたばかりの息子が大泣きしていた。
 体をゆすったりしてあやすが、一向に泣き止む気配がない。
 仕方ないと、俺は大きく息を吸う。

「ねんねんころりよ、おころりよ~
 坊やはよい子だ、ねんねしな~」
 俺が子守唄を歌うと、息子はスヤスヤと寝息を立て始めた。
 子守歌の才能があるのか、息子はすぐ眠りにつく。
 ようやくひと段落付いたと子供を布団に寝かせると、こちらを見ていた嫁と目があった。
 
「おまえさん子守歌だけは上手いのう。
 ラブソングは未だにヘタクソだと言うのにな!」
 妻の嫉妬のこもった言葉に、思わず苦笑する。
 息子が生まれて以来、毎日のように繰り返したやりとり。
 けれど少しも不快にならないのは、愛ゆえか。

「まあいい。
 息子も寝たことだし、今度はわしの番じゃな」
 見るからにウキウキし始めた妻に、思わず笑いがこぼれる。
 何年も聞いているのに飽きないらしい。

「じゃが次もダメじゃろうな。
 才能がない」
「そんな事は無い。
 昨日とは違う俺の歌を聞かせてやるよ」

 そうして俺はラブソングを歌う。
 今日もきっと鐘一つでだろう。
 だがそれで構わない。
 俺はまだ愛を伝えてきれないのだから。

 俺と神様のラブソングバトルは、まだ終わりそうにない

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