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4/1/2024, 9:34:40 AM

 ピピピ ピピピ
 幸せに寝ていた私を現実世界に引きずり出すべく、アラームが鳴り響く。
 夢の世界にしがみつこうとするも、目覚ましのアラームはずっと鳴り響き、健闘虚しく夢から覚める。
 幸せな時間を邪魔されたたことに怒りを覚えつつ、不快に鳴り響くスマホを取ってアラームを解除する。

 今の時間を見れば朝六時。
 いつもなら仕事に出る時間。
 だが今日は違う。
 今日は有休を取った。
 つまり仕事が無い日である。
 仕事が無い日である(大事な事なので二回言いました)。

 どうやら昨日の私はアラームを解除し忘れたらしい。
 まったく弛んでいるな。
 貴重な休日の朝を何だと思っているのか……
 その貴重な朝を無駄に寝て過ごすのが、私の趣味だ。
 なのに何が嬉しくて、こんな早くに起きなければいけないのか

 というわけで、これから二度寝タイム。
 じゃあ、さっきまで見ていた夢の続きを――


「ちょっと美幸!いつまで寝てんの」
 ドアが勢いよくあけ放たれ、母さんが入ってきた
「あと一時間~」
「いいから起きなさい」
「今日休みだよ。寝かせてよ」

――そんなこと言ってないで、布団から出なさい
 そう言われると思ったのに、返ってきたのはふかーい溜息だった。
「あんたねぇ。今日が何の日か分かってんの?」
 母さんが呆れたような顔で私を見る。
 なんの日かだって?
「昼まで寝ていい日」
 私の答えに母さんが心底呆れたような顔をする。

「今日はあんたの結婚式でしょ」
 母さんの言葉に一瞬戸惑う。
 けっこんしき? 
 どこか聞き覚えのある言葉。
 寝ぼけた頭を少しずつ回転させる

 けっこんしき……
 血痕四季………
 結婚式……
 ……
 …
 ぐう

「こら寝るな」
 いつの間にか側にいた母さんに頭を叩かれる。
「痛いんですけど」
「ならよかったっわ。痛くなるよう叩いたから」
 なんて親だ。

「それで思い出した?」
「思い出しました。今日は私の結婚式です。はい」
「はあ、全く……」
 母さんは何度目か分からないため息をこぼす。

「あんたが寝起きに弱いのは知ってたけど、まさかここまでとは……
 普通、自分の結婚式を忘れる?」
「あはは」
 目を逸らしながら笑う。

「そんなに寝ていたいのなら、結婚式キャンセルの連絡するけど……
 どうする?」
「起きます!」
 私はシュバッと布団から飛び出す。
「待ちなさい」
 身支度をすべく部屋を出ようとした私を、母さんが呼び止める。

「まだ何かあるの?」
 振り返ると、母が真剣な顔でこちらを見ていた。
「幸せになってね」
 予想外の言葉に私は目をぱちくりさせる。
「母さん、それは結婚式の後で言ってね」
「その時、あんた寝てるかもしれないじゃない」
「さすがに寝んわい!」
 ふざける母さんを置いて、洗面所に向かう。

 冷たい水で顔を洗えば、寝ぼけた頭が完全に覚醒する。
 そうだ、今日は私の結婚式。
 寝ている場合じゃなかった。
 急に実感がわいてきて、緊張していることを自覚する。

 鏡を見て、寝癖を軽く直し、リビングへ行く。
 何をするにも腹ごしらえをしてから。
 人生で一番長い一日が始まる。

3/31/2024, 10:30:27 AM

 タンスの角に足の小指をぶつけた。
 体を貫かれるような痛みが走り、声を出しそうになるが、すんでのところで堪える。
 普通の人間ならば耐えられないだろうが、俺はなら耐えられる。
 なぜなら、俺はハードボイルドだから。

 そう!俺は日本を代表するハードボイルド探偵!
 ハードボイルドとは、何があっても動じないこと。
 タンスの角に小指をぶつけても、動じてはいけない。
 なぜなら『何気ないふり』を極めなければ、ハードボイルドは務まらないのだ。

 とはいえ、俺に痛みを与えたタンスを許すかどうかは別問題である。
 俺は痛みの原因であるタンスを睨みつける。
 このタンスは、我が探偵事務所にもともとあったものではない。
 先月知り合いが捨てるところを、もったいないからと貰ったのだ。
 つまり捨てられそうになっていたコイツを救ったのは俺であり、間違いなく俺は恩人のはずである。
 にもかかわらず、このタンスは俺に何度も痛みを与えてくる。
 もうすでに5回はぶつけている。
 なんて恩知らずな奴なのだろうか?
 いっそ捨ててやろうか?

「どうかしましたか?」
 机で事務処理をしている助手が、帳簿から顔を上げてこちらを見ていた。
 急に立ち止まったので、不審に思ったのだろう。
 しかし、タンスに小指をぶつけたなんて知られるわけにはいかない。
 なぜならハードボイルドの俺がタンスに小指をぶつけたと知れば、彼女のハードボイルドに対するイメージを壊してしまう。
 だが、ぶつけてしまったものは仕方がないので、ここはハードボイルドらしく誤魔化すことにしよう。

「武者震いさ」
 決まった。
 そう思って助手の方を見るが、彼女はもすごい嫌そうな顔をしていた。
「はあ、事務所の外でそういうのやめてくださいね。仕事が減りますから」
 そう言いながら、助手は再び帳簿に目線を落とす。
 さすがに失礼じゃない?
 だが、タンスに小指をぶつけたことはバレなかったので、良しとすることにしよう。

 俺が安堵しているのも束の間、いきなり助手が立ち上がった。
「ど、どうした?」
 突然の事に驚いて少しかんでしまう。
 もしかして気づかれたか?
 助手は妙なところで察しがいいからな……

「集中切れてしまったので、コーヒーを飲もうかと」
「ああ、そう」
 助手はこちらを一顧だにすることなく、俺の横を通り抜けてキッチンの方へ入っていった。
 なんか怒らせたか?
 少し考えるも思い当たる節は無い。
 昨日、彼女のプリンを食べたことはすでに謝っているので、それではないはず。

 だが、『もしかしたら』と思うことはある。
 俺はハードボイルドだ。
 何事にも動じず、彼女の一挙手一投足にも、発言にも動じることは無い……
 もしかしたら、それが助手とって冷たく感じられて――

「冷たっ」
 首筋に冷たいものを感じ、思わず声を上げる。
 振り向くとそこには助手が立っていた。
 助手はコーヒーを淹れていたはずでは?

「コーヒーはどうした?」
「先生がボケっと突っ立っている間に入れ終わりましたよ」
 いつもに増して言い方がキツイ助手。
「ああ、そうだ。俺の分は?」
「は?あるわけないでしょう」
 とんでもなく冷たい目で言い放つ。
 え?マジで何に怒ってるの?

「はい、コレ」
 そう言って助手は俺によく冷えた保冷剤を渡してくる。
 さっきの冷たいのはコレか!
「それで冷やしてください」
 何を言われたのかわからず、聞き返そうとする。
 だが助手は言うべきことは言ったとばかりに、そのまま離れていった。

 と不意につま先から痛みの信号が送られてくる。
 そこで俺は、合点がいった
 ブツケた小指をコレで冷やせ、ということだろう。
 助手の優しさに感激して泣きそうになる。
 だが俺は泣かない。
 なぜなら、俺はハードボイルドだから。

 それにしても、まさか探偵の俺を出し抜くとはな……
 助手の『何気ないふり』がうまいことよ……
 何気なさ過ぎて、反応に遅れてしまった。
 それにしても、彼女はようやくハードボイル探偵の助手に相応しくなってきたようだ
 ハードボイルドを全く理解していないときのことを思えば、感慨深いものである
 この調子で行けば、日本一のハードボイルド探偵事務所として、日本中に名を知られることだろう。

 俺は輝かしい未来に思いをはせつつ、足の小指を冷やすのであった。

 

3/30/2024, 9:42:56 AM

 今日僕は有名な占い師の元に来ていた。
 自分の運命の相手を占ってもらうためである。
 この占い師は、未来を確実に当てる美少女占い師との評判だ。
 『的中率100%』
 『マジで当たる』
 『占いが外れたら、それは未来のほうが間違っている』。
 と、とんでもない評価だ。
 有名なだけあって、いつ来ても長い行列があり、一時間待ちが普通と言う状況が続いていた。

 きっとこの占い師なら、僕の運命の相手を占ってくれるだろうと思っていた。
 とはいうものの、僕も男なので、どうしても『占いをしてもらう』ことに抵抗がある。
 なので占ってほしいと言う感情とは裏腹に、ずるずると行かない日が続いていた。

 ところがである。
 今週の初め、僕は『受験に専念するため、今週いっぱいで占い師を辞める』と聞いてしまったのだ。
 僕はその言葉を聞いた僕は、今を逃せば運命の相手に出会えないと思い、こうして占い師のもとにやってきたのだった。

 そして行列に並んでから耐える事、三時間。
 ついに僕の番が回ってきた。
「次の方、どうぞ」
「はい」
 僕は声に促されるまま、緊張しながら占い師の個室に入っていく。
 そこにはいかにも、占い師ルックの女性がいた。
 顔は隠されており美少女化は分からなうが、神秘来な雰囲気を醸し出して――

「はい、未来が見えました」
「え?もう!?」
 早い!
 まだ何も言ってないのに……

「時間がありませんからサクサク行きましょう」
 たしかに、僕の後ろにはまだ多くの人が並んでいた。
 だけど、こうも雑に扱われると、少々気分が悪い。
 だがあまりごねても、他の人に迷惑なので、ぐっと不満を飲み込むことにする。

「実は僕の運――」
「筋トレしなさい」
 『僕の運命の相手が知りたい』。
 そう言い切る前に、占い師が僕の言葉にかぶせてくる。
「どういう――」
「月曜日になったら、学校の図書室に行き、最初に目に入った筋トレ本の借りて、そこに書いてあるメニューを忠実にこなしなさい」
 占い師は僕の都合などお構いなしに言葉を紡ぐ。
「待って――」
「ああ、あと馬術部に入りなさい」
「何で――」
「そうすれば、あなたは運命の相手に出会える」
「!」
 最後の占い師の言葉に、僕はドキリとする。

「これがあなたの知りたいことですよね。鈴木さん。鈴木 雅之さん」
 全部お見通しらしい。
 さすが占い師。
 何も言ってないのに、名前や知りたいことを当てて見せた。
 矢継ぎ早に繰り出される占い師の言葉に若干引き気味であったが、この占い師は信頼できる
 実は半信半疑であった
 でも認識を改める。
 間違いなく本物だ。
「ありがとうございます」
「はい、がんばってください」

 そして僕は占い小屋を出て、さっきの事を考える。
『そうすれば、あなたは運命の相手に出会える』
 彼女の言葉が
 なにも分からないが、とりあえず筋トレを始めることにしよう。
 馬術部というのもよく分からないが、とりあえず従っておこう。
 運命の相手が馬術部にいるのかもしれない。
 まだなにも分からないが、未来に会うであろう運命の相手のため、筋トレをすることを誓うのだった。

 🔮 🔮 🔮

 私は佐々木さんの相手を終え、一息つく。
 かなり緊張したが、やるべきことはやったので一安心だ。
 私の『未来予知』で、筋トレと乗馬に励む佐々木さんを見る。
 どうやら信じてくれたようだ。
 これで一安心。
 あとは時が来るのを待つだけ。
 そして私は理想の彼氏をゲットするのだ。

 そう……
 さっきのやりとりは事は私が理想の彼氏を得るための、布石……
 佐々木さんは同じ学校のクラスメイト。
 顔と性格は私好みで学業優秀、将来有望ののハイスペック男子だ。
 ほとんど文句なしだが、唯一の欠点はひょろ過ぎる事。
 風が吹けば飛びそうなほど、ヒョロイのだ。

 さすがにこれはいかんと思い、あらゆる策略を張り巡らせた。
 ここに来るように仕向け、筋トレを行わせる。
 そして筋トレで鍛え抜かれた彼は、馬術部で飼われている白馬に乗って私を迎えに来る。
 もちろん、そう仕向ける。
 私の未来予知を使えば、造作もない。

 二人は結ばれた後、田舎の広い土地に庭付の小さな家を買うの。
 庭で遊ぶのは、私たちの子供。
 ああ、私たちのキューピットである白馬の住む場所も作らないとね。
 そして二人は結ばれ永遠に幸せに過ごす。
 なんて完璧な未来予想図。

 どんどん私の妄想が広がっていく。
 これが私の――いや、これが私たちハッピーエンドだ。

3/29/2024, 9:59:57 AM

 とあるアパートのとある部屋で、男が机に向かって勉強をしていた。
 彼はレベルの高い大学に入学するため、アパートの一室を借り勉強に励んでいるのだ。
 お金を出してくれる親に感謝しつつ、絶対に恩返しすることを誓う。
 いい大学に入って、いい会社に入る。
 それが男の目標であった。


 そしてある日の事。
 いつものように男が勉強に励んでいると、ふと背後から視線を感じた。
 後ろを振り返ってもなにも無く、あるのはボロい壁だけ……。
 男は壁を少しの間見つめた後、机に戻って勉強を再開する。
 その間も男は視線を背中に感じているにも関わらず、さらに集中を深め問題集を解き進めていく。
 
 この視線の正体は何か?
 それは二体の幽霊である。
 この部屋に住みつく幽霊たちが彼を見ているのだ。

 だが男に向ける彼らの視線は怨嗟に満ちたものではなく、諦めと感心が入り混じった複雑なものであった。
 男に霊感があまりなく、自分たちの姿に驚いてくれない……というのもある。
 それ以上に、幽霊たちは男の根性に驚嘆していたのだ。

「今日も反応薄いっすね、センパイ」
 チャラそうなコウハイ幽霊がセンパイ幽霊に声をかける。
「ああ、そうだな」
 特に感情を込めずに、センパイ幽霊は短く答える。

「あの、もう一度確認なんすけど、あの男はオレたちに気づいてるっすよね」
「それは間違いない。あの男は確実に俺たちに気づいている。霊感が無いゆえに、視線しか感じないようだが……」
「おかしいすよね。普通逃げるっすよね、幽霊なんていたら……
 オレ幽霊になったばかりだから分かんねえすけど、こういう事ってあるんですか?」
 コウハイ幽霊の疑問に、センパイ幽霊は少し考えた後答えた。

「そうだな、俺は色々な人間を見てきた。
 俺たちの存在に気づいた奴の反応は様々で、泣き叫ぶヤツ、霊媒師を呼ぶヤツ、逃げないヤツや無視するヤツもいた。
 だが、この男のようなヤツは初めてだよ。気づいたうえで、俺たちを利用する……そんなヤツはな……」
 センパイ幽霊はため息とともに吐き捨てる。
 
「やっぱり、そうすよね。この男がおかしいんですよね」
「ああ、そうだ。この男がおかしい。
 誰もいないと、勉強をサボってしまう。
 しかし誰かに見つめられると途端にサボれなくなる。
 だからこうして見られてる方が都合がいいというのは、さすがに……」
「ですよねえ」
 二体の幽霊はため息を吐きながら、男を眺めていた。
 その幽霊たちの視線の先で、男はより一層集中を深めていた。
 
 今日も今日とて、幽霊たちの背中に視線を受けて、男は勉学に励む。
 時折、幽霊のため息を感じながら、粛々と問題集を解き進めるのであった

3/28/2024, 10:20:33 AM

 彼を見た瞬間、私は心を奪われた。
 彼の姿に私は膝から崩れ落ち、気づけば涙を流していた。

 『怪盗ラグドール』。
 先輩たちはそう呼んでいた。
 彼を見た者は全て虜にしてしまうと言うので、そう呼ばれているらしい。
 彼は一歩、また一歩と私に歩み寄ってくる。

 事の発端は、クラブ紹介の集まりの事である。
 一年生としてこの学校に入った私は、先輩方から熱烈な勧誘を受け、文芸部に入ることになった。
 この学校は部活は絶対に入らないといけない。
 あんまり部活に出たくない私は、手ごろな部活と思われる文芸部を選んだ。
 なんせ本を読むか、やっても読書感想文を書くくらいだ。
 まあ、文化祭は忙しいかもだけど、きっと楽なはず
 その時私はそう思っていた。

 そうして入った文芸部。
 部員は二人、新入部員は私一人。
 計三人の、ゆるゆる文科系部活。
 勝った! 
 先輩に睨まれない程度に部活をさぼろう。

 その決意を悟られぬよう、先輩たちの前で軽く自己紹介を行う。
 そして『軽く本でも読むか』と意気込んで、部室にある本棚に視線を移した時の事である。
「まだ紹介していない部員がいるんだ」
 そう部長は言った。
 その言葉に私は目を瞬《しばたた》かせる。

「え?でも部員は三人ですよね」
 すると部長と副部長は、にんまりと、まるで悪魔のような笑みを浮かべた。
「うん、三人さ。でも名誉部員がいるんだ」
「名誉部員?」
 なんだそれ?
 とため口で聞きそうになるのを堪える。

「付いてきたまえ」
 そう言って先輩たちは部室から出ていく。
 『名誉部員の所へ行くのだろうか?』『ていうか文芸部なのに、本読まんのかい』と思いつつ、先輩たちの後ろを付いて行く。

 そして部室から出ていった先は、なんと校舎裏で合った。
 『さぼろうとした魂胆がバレて制裁か!?』と本気でビビる。
 そして先輩二人はニコニコと笑顔で私を見ていた。
 その顔やめて、私の心はガラス製なのよ。

「では名誉部員を紹介しよう」
 部長がそう言うと同時に、草陰から物音が聞こえた
 
 そして出てきたのは――
「ニャア」
 猫だった。
 可愛いらしい猫。
 その愛くるしい姿で、私の心を一瞬で掴んだ。

「フフフ、『怪盗ラグドール』私たちはそう呼んでる」
「ラグ……ドール?」
「そうこの子の品種ね。とてもおとなしいの。抱っこしてあげて、喜ぶから」
 トテトテと歩いてきた『怪盗ラグドール』を腕に抱く。
 嫌がる様子もなく、彼は大人しく抱かれた。

「その子、この裏にある家で飼われいるみたいなの。
 散歩の時間みたいで、この時間はいつもいるのよ」
「そう、なんですか」
「フフフ、新入部員の仕事はね、この子の遊び相手をすること。毎日ね。
 この子に逆らっちゃだめよ。だって名誉部員なのだから」
「分かりました」
 私は抱いた彼を撫でながら宣言する。
「喜んで、彼の遊び相手を努めさせていただきます」
「うむ、よろしい」
 部長は満足したように頷く。

 部活をサボる?
 誰だ、そんなこと言ったのは!
 この子と遊ぶ以上に大事なことなんてない

 と決意を新たにしていると、先輩二人が近づき、彼をなで始めた。
 怪盗ラグドールは満足そうに目を細める。
 その猫撫の手つきは熟練の技そのもの。
 コヤツ出来る

「じゃ下校時間が来るまで遊ぼうか」
「はい!」
 私の心は彼の物。
 誠心誠意つくすことにしよう
 そうして私達は、『怪盗ラグドール』の気が済むまでずっと遊んだのであった。


 ……あれ、結局部活どうするんだ?

 ま、いっか。

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