今日僕は有名な占い師の元に来ていた。
自分の運命の相手を占ってもらうためである。
この占い師は、未来を確実に当てる美少女占い師との評判だ。
『的中率100%』
『マジで当たる』
『占いが外れたら、それは未来のほうが間違っている』。
と、とんでもない評価だ。
有名なだけあって、いつ来ても長い行列があり、一時間待ちが普通と言う状況が続いていた。
きっとこの占い師なら、僕の運命の相手を占ってくれるだろうと思っていた。
とはいうものの、僕も男なので、どうしても『占いをしてもらう』ことに抵抗がある。
なので占ってほしいと言う感情とは裏腹に、ずるずると行かない日が続いていた。
ところがである。
今週の初め、僕は『受験に専念するため、今週いっぱいで占い師を辞める』と聞いてしまったのだ。
僕はその言葉を聞いた僕は、今を逃せば運命の相手に出会えないと思い、こうして占い師のもとにやってきたのだった。
そして行列に並んでから耐える事、三時間。
ついに僕の番が回ってきた。
「次の方、どうぞ」
「はい」
僕は声に促されるまま、緊張しながら占い師の個室に入っていく。
そこにはいかにも、占い師ルックの女性がいた。
顔は隠されており美少女化は分からなうが、神秘来な雰囲気を醸し出して――
「はい、未来が見えました」
「え?もう!?」
早い!
まだ何も言ってないのに……
「時間がありませんからサクサク行きましょう」
たしかに、僕の後ろにはまだ多くの人が並んでいた。
だけど、こうも雑に扱われると、少々気分が悪い。
だがあまりごねても、他の人に迷惑なので、ぐっと不満を飲み込むことにする。
「実は僕の運――」
「筋トレしなさい」
『僕の運命の相手が知りたい』。
そう言い切る前に、占い師が僕の言葉にかぶせてくる。
「どういう――」
「月曜日になったら、学校の図書室に行き、最初に目に入った筋トレ本の借りて、そこに書いてあるメニューを忠実にこなしなさい」
占い師は僕の都合などお構いなしに言葉を紡ぐ。
「待って――」
「ああ、あと馬術部に入りなさい」
「何で――」
「そうすれば、あなたは運命の相手に出会える」
「!」
最後の占い師の言葉に、僕はドキリとする。
「これがあなたの知りたいことですよね。鈴木さん。鈴木 雅之さん」
全部お見通しらしい。
さすが占い師。
何も言ってないのに、名前や知りたいことを当てて見せた。
矢継ぎ早に繰り出される占い師の言葉に若干引き気味であったが、この占い師は信頼できる
実は半信半疑であった
でも認識を改める。
間違いなく本物だ。
「ありがとうございます」
「はい、がんばってください」
そして僕は占い小屋を出て、さっきの事を考える。
『そうすれば、あなたは運命の相手に出会える』
彼女の言葉が
なにも分からないが、とりあえず筋トレを始めることにしよう。
馬術部というのもよく分からないが、とりあえず従っておこう。
運命の相手が馬術部にいるのかもしれない。
まだなにも分からないが、未来に会うであろう運命の相手のため、筋トレをすることを誓うのだった。
🔮 🔮 🔮
私は佐々木さんの相手を終え、一息つく。
かなり緊張したが、やるべきことはやったので一安心だ。
私の『未来予知』で、筋トレと乗馬に励む佐々木さんを見る。
どうやら信じてくれたようだ。
これで一安心。
あとは時が来るのを待つだけ。
そして私は理想の彼氏をゲットするのだ。
そう……
さっきのやりとりは事は私が理想の彼氏を得るための、布石……
佐々木さんは同じ学校のクラスメイト。
顔と性格は私好みで学業優秀、将来有望ののハイスペック男子だ。
ほとんど文句なしだが、唯一の欠点はひょろ過ぎる事。
風が吹けば飛びそうなほど、ヒョロイのだ。
さすがにこれはいかんと思い、あらゆる策略を張り巡らせた。
ここに来るように仕向け、筋トレを行わせる。
そして筋トレで鍛え抜かれた彼は、馬術部で飼われている白馬に乗って私を迎えに来る。
もちろん、そう仕向ける。
私の未来予知を使えば、造作もない。
二人は結ばれた後、田舎の広い土地に庭付の小さな家を買うの。
庭で遊ぶのは、私たちの子供。
ああ、私たちのキューピットである白馬の住む場所も作らないとね。
そして二人は結ばれ永遠に幸せに過ごす。
なんて完璧な未来予想図。
どんどん私の妄想が広がっていく。
これが私の――いや、これが私たちハッピーエンドだ。
3/30/2024, 9:42:56 AM