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11/28/2023, 9:00:24 AM

 私はイチゴを愛情込めて育てている。

 私はアパートに住んでいて庭がないので、ベランダで育てている。
 最初は育つのだが、イチゴがならなかったり、枯らしたりして大変だった。

 でも水やりの頻度、日当たり風通しなどが分かってきたときくらいから、大きなイチゴを付けてくれるようになった。

 今では見るだけで調子がわかるようになった
 これを、愛と呼ばずしてなんと呼ぼう!

 込めた愛情を返してくれたのだ、というほど私はロマンチストではない
 多分、イチゴはいい感じの水といい感じの土、いい感じの日当たりで自分のしたいことをやっているだけなのだ。
 私という存在を認識しているかすら怪しいものである

 ならばイチゴのしたいことはなんだろうか
 赤いイチゴという魅惑の果物を作り、他の存在に恵みを分け与える
 それは実に慈悲深く、愛に溢れた行為だ

 もしかしてイチゴは、私よりずっと愛情深い存在なのかもしれない

11/27/2023, 9:23:32 AM

「懲りないねぇ。今回は誰にお熱なの?」
「サッカー部の杉咲くん」
 そう言われて、私は杉咲の顔を思い出そうとする。

「駄目だ。思い出せない。誰よ、杉咲って」
「幽霊部員だからね」
「それ、サッカー部って言っていいのか?」
「試合しか出ないの。数合わせで入ってるだけだし」
「もう一度言うぞ。それサッカー部って言っていいのか?」

 このまま続けても不毛そうなので話題を変える。
「なんで好きになったの?」
「んふー。弟が近くの小学生野球チーム入ってるんだけど、杉咲くんがそこで野球教えてるの」
「まさか本当にサッカー関係無いとは…」
「でね。弟に杉咲くんが教えるんだけど、その時の杉咲くんの表情、とってもカッコいいんだ」
「へぇ~」
「ちゃんと聞いてる?」
「聞いてるよ」

 もちろん聞いているとも。
 私はこの子の恋バナを聞くのが好きなのだ。
 でも恋バナが好きって訳じゃない

 この子の持っている熱が好きなのだ。
 恋に興味がない私にさえ、いいかもと思わせるくらいの熱量。

 熱が無い私に、彼女の熱が伝わる感覚。
 結構気に入っている。

 そうして何回も聞いていると、私の中にも熱を感じるようになった
 彼女に比べたら、なんてこと無い微熱くらいの熱

 気づいた時はびっくりしたけど、悪い気はしない

 ちょっとだけ、恋してみようかな
 
 

11/26/2023, 7:49:28 AM

 暑い
 それが外に出たときの感想
 
 ジリジリと照りつける太陽のもと、道を歩いていく
 暦上は冬だと言うのにこの暑さはなんだろう。
 道行く人々は大量の汗をかき、ミイラになって転がっているやつもいる。
 気温計を見れば、今の気温は100度。
 ふざけてる

 おれは暑いのが大嫌いだ
 たとえお天道様が許しても俺が許さない
 ま原因はお天道様なんだけども

 だとしたら倒すべきは太陽。
 今すぐ破壊しなければ
 俺は、持っていたミサイル発射装置を押し、太陽に向かってミサイルを発射。
 太陽を破壊に成功する
 やった

 だが未だに暑いのが消えない。
 なぜだ
 なぜこんなにも暑いんだ



 俺は思わず飛び起きる
 自分の体は汗でびっしょりだった。
 思わず空を見上げると未だに太陽がある
 馬鹿なと思ったが、頭が徐々に覚めてきてあれは夢だと言うことに気づく

 そうだ
 天気がいいからと言って庭でぼーっとしていたのだが、いつの間にか寝ていたらしい。

 しかも太陽は高い位置にあり、一番気温の高い時間帯だ。
 汗もかくはずだ。

 着替えるために一度家に戻ろう。
 部屋に入ってから、もう一度太陽を見る

 やっぱり暑すぎるので、一度破壊すべきでは?

11/25/2023, 8:20:50 AM

 俺は自分の衣装箱を漁っていた。

 昨日、彼女との会話で
「寒くなってきたね。去年あげたセーターまだ持ってる?あれ、一緒に着てペアルックしようよ」
 と言われ、セーターを探している。
 愛する彼女の願いに、俺は断るすべを持たない

 しかし、おかしなこと仕舞ったはずのセーター見当たらないのだ。
 愛する彼女からもらったセーターを捨てるわけがないのだ。
 それに加え、仕舞い込んだはずのヒートテック、長袖のシャツ、防寒用上着も見当たらない。

 これは異常事態だ。
 冬用の衣装が尽くなくなっている。
 間違いない
 これは妖怪冬着隠しの仕業だ。

 メルカリで買った数珠を握りしめ、部屋の中央に立つ。
「妖怪よ。姿を表わせ」
 数珠が光り輝き、部屋を光で満たす。
 そうして光が収まった部屋には、俺以外に妖怪が立っていた。
 そいつは俺のセーターとヒートテックと防寒用上着を着ていた。
 犯人は間違いなくコイツだ!

「ちっ。見つかったか」
 妖怪はそう言うと、部屋から逃げようとする。
「逃がすか。悪霊退散」
 俺は手の持っていた数珠を妖怪に投げつける。
「ぐわー」
 数珠が当たった妖怪は悲鳴を上げながら燃え上がる。

「くそ、ただで死んでたまるか」
 そう言うと、妖怪は着ていたセーターを粉々に破いて、そのまま、燃え尽きてきた。
「なんてことだ」
 俺は膝から崩れ落ちる。
 これでは彼女とペアルックが出来ない。

 ということにして、彼女に謝ることにしよう。
 …怒られるかな
 どっちにしろ、セーターは見つからないので謝るしかない
 どうやって謝ったものかと考えていると、彼女からラインが来た

「ゴメン。妖怪冬着隠しにセーターをやられた。セーターのペアルックはまたこんどにしようね」

11/24/2023, 9:36:42 AM

 どこまでも落ちていく夢を見て、思わず飛び起きる。
 周りはまだ真っ暗だったので、枕元にあるスマホを手に取り、時間を見ると午前2時の真夜中だった。

 寝直そうとすると寒い空気を肌に感じた。
 おかしい。
 エアコンをつけているので寒くなるはずが無いのだ。
 寝ぼけ眼をこすりながら、寒さの元をたどると窓が開いているようだった。
 しかも閉まりきってなくて少し開いているというのではなく、窓全開である。
 寒いはずだ。

 寒さの原因は分かったが、ひとつ疑問が残る。
 窓が全開で開いていると言うのに、私が今まで寒さを感じないのはおかしい。
 つまりついさっき誰かが開けたということだ。

 その瞬間、私は背中に気配を感じ、振り返るが誰もいなかった。
 念のため部屋を見渡していると、窓の外からドサッという音がする。
 何かを落ちたのだろうか?

 そう思い外を見ようとして―

 さっと横に体をずらす。
 すると後ろから私の背中かを押そうとした人影が、勢い余って人影の体半分が窓の外に出る
 人影は驚いたようにこっちを向くが、その顔には何もなく完全な闇であるため、私は相手が悪霊だということを確信する。

 悪霊は体勢を立て直そうとするが、その前に私は力いっぱい悪霊突き飛ばし、窓の外に押し出す。
 悪霊は何か言おうとしたようだが、そのまま下に落ちていく。
 ここはアパート十階だ。
 悪霊とはいえ、ただでは済むまい。

 ここ最近、さっきの悪霊が毎晩窓を開けるので困っていたのだ。
 しかし、悪霊は退治したので、寒くなることはあるまい。
 私は清々しい気持ちで眠りに落ちていくのだった。
 

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