「懲りないねぇ。今回は誰にお熱なの?」
「サッカー部の杉咲くん」
そう言われて、私は杉咲の顔を思い出そうとする。
「駄目だ。思い出せない。誰よ、杉咲って」
「幽霊部員だからね」
「それ、サッカー部って言っていいのか?」
「試合しか出ないの。数合わせで入ってるだけだし」
「もう一度言うぞ。それサッカー部って言っていいのか?」
このまま続けても不毛そうなので話題を変える。
「なんで好きになったの?」
「んふー。弟が近くの小学生野球チーム入ってるんだけど、杉咲くんがそこで野球教えてるの」
「まさか本当にサッカー関係無いとは…」
「でね。弟に杉咲くんが教えるんだけど、その時の杉咲くんの表情、とってもカッコいいんだ」
「へぇ~」
「ちゃんと聞いてる?」
「聞いてるよ」
もちろん聞いているとも。
私はこの子の恋バナを聞くのが好きなのだ。
でも恋バナが好きって訳じゃない
この子の持っている熱が好きなのだ。
恋に興味がない私にさえ、いいかもと思わせるくらいの熱量。
熱が無い私に、彼女の熱が伝わる感覚。
結構気に入っている。
そうして何回も聞いていると、私の中にも熱を感じるようになった
彼女に比べたら、なんてこと無い微熱くらいの熱
気づいた時はびっくりしたけど、悪い気はしない
ちょっとだけ、恋してみようかな
11/27/2023, 9:23:32 AM