G14

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「懲りないねぇ。今回は誰にお熱なの?」
「サッカー部の杉咲くん」
 そう言われて、私は杉咲の顔を思い出そうとする。

「駄目だ。思い出せない。誰よ、杉咲って」
「幽霊部員だからね」
「それ、サッカー部って言っていいのか?」
「試合しか出ないの。数合わせで入ってるだけだし」
「もう一度言うぞ。それサッカー部って言っていいのか?」

 このまま続けても不毛そうなので話題を変える。
「なんで好きになったの?」
「んふー。弟が近くの小学生野球チーム入ってるんだけど、杉咲くんがそこで野球教えてるの」
「まさか本当にサッカー関係無いとは…」
「でね。弟に杉咲くんが教えるんだけど、その時の杉咲くんの表情、とってもカッコいいんだ」
「へぇ~」
「ちゃんと聞いてる?」
「聞いてるよ」

 もちろん聞いているとも。
 私はこの子の恋バナを聞くのが好きなのだ。
 でも恋バナが好きって訳じゃない

 この子の持っている熱が好きなのだ。
 恋に興味がない私にさえ、いいかもと思わせるくらいの熱量。

 熱が無い私に、彼女の熱が伝わる感覚。
 結構気に入っている。

 そうして何回も聞いていると、私の中にも熱を感じるようになった
 彼女に比べたら、なんてこと無い微熱くらいの熱

 気づいた時はびっくりしたけど、悪い気はしない

 ちょっとだけ、恋してみようかな
 
 

11/27/2023, 9:23:32 AM