〜理想郷〜
祈れば叶った
母の病気を治してくださいと祈った
姉を志望校に受からせてください
そう願った
何度も何度も手を合わせて願った
それは全て叶った
「神様が」「天の人が!!」そう言って姉や母は喜んでいた
父は元々いなかったから生き返らせてくださいと願った
でもその願いだけは叶わなかった
「死者は生き返らせることはできません、それを願えばそれ相応の代償が伴うでしょう」
神父様にはそう言われた
それでも、ニコリと優しく笑うお父さんの姿が、家族みんなでご飯を食べるところが懐かしかった
お願い…します……
淡い光の差し込むステンドグラスは色美やかに光っている
「私は止めました、それでどうなってしまっても私はお救いすることはできないでしょう」
それでもいい…だから、お願いします
そう願う
グラッと視界が揺らぎ当たりが白くなる
その反動で後ろに倒れかけるが神父様が抱えて下さり間一髪頭を打たなくてすんだ
「これがあなたのお迎えになるでしょう、私が天までお送り致します。どうかお達者で……」
それが僕の聞いた神父様の最後の声だった
急激な眠気に襲われて目を閉じる
【ニュースのお時間です、今日未明○○県○○市の廃教会で遺体となって10代の男性が見つかりました。
体に損傷はなく警察は自○と考えて捜索しております】
ようこそ理想郷へ
私はここの神父です
ここはあなたの理想を叶るための場所
信者になればあなたの願いは全て叶うでしょう
ですが、死者を蘇らせるのはおやめ下さい
それ相応の代償が伴われます
ご自分の命はお大事になさってくださいね
守りの使いがあなたを天界へとお見送り致します
〜懐かしく思うこと〜
高校の頃は屋上で過ごすことが多く教室に向かうことは朝のHRと昼ごはんを取りに行く時、終礼の時くらいでクラスの人とは親しみを持ってない
出席日数は足りているしテストも赤点ギリギリを狙って解いてるし特に何不自由なく生活している
家での毎日のように続く家族喧嘩も妹たちを宥めることは面倒臭いが慣れた
屋上は俺以外人は来ないから楽で静かでとても居心地がいい
1人が元から好きだったしこの状態が俺にとっては最適な環境
一人暮らししてぇな…そうすれば面倒なことからも開放される…
そんなことを思いながら入口の上の所で寝る
が、ガチャっと扉が空く音で目が覚める
スマホを見るともう昼休みで珍しくここに飯を食いに来たやつがいるみたいだ
めんどくせぇ、脅かすか…それとも、殴るか?
「あれ、だけ人いない?」
げっ……
驚いてそいつにしがみつくやつ、何故か逃げる奴、腰抜かすやつ
なんだコイツら
「おまえ……何見えてんだよ!!」
「だからあそこに人が…あれ、今居たんだけどな」
これが幽霊を見た最後の日でそれは今でも記憶の中に染み付いている
その話は今では笑い話でそれでもってとても懐かしい
一言
1つ前のお題書けなかったですね、うん
どうしよ!?書こうとしてたら書けなかったです…(´;ω;`)
今日はいつもよりも短めで、視点がぐるぐるしてますね、この後の少年はどうなるんですかね
あと、ネタバレすると彼はゆうれ((殴
なんでもないです、次のおだいが関連するものなら続き的なものを書いてみようかなとか思ってます
Clock
〜暗がりの中で〜
幼少期から暗いところや狭いところが苦手だった
閉所恐怖症・暗所恐怖症だと聞いた
小さい頃はお化けが出てくると思っていたからそこからの恐怖心だろうと思っていた
今はお化けではなくリアルなストーカーや酔っ払いのおじさんなど夜に会うと死ぬほどびっくりするようなものが怖い
猫でも驚くようになった
そして修学旅行で知らないところに来ているということもあって今は感覚的なものは敏感だ
少しの物音や家なりでさえもビビってしまう
時間的にはそこまで遅くないから大丈夫だが夜中きっとトイレには行けない
怖すぎ……何かで、出てきそう……
顔を真っ青にしている俺を心配そうに顔をだす
ひゅ…っと喉の奥から変な音が鳴る
び、ビビった……
「お前大丈夫か?なんか顔色悪いぞ」
のぞき込まれた瞳の中に僕が映る
確かに顔色悪く見えるのかもしれない
震える手を必死に押えて我慢する
さすがに迷惑かける訳にも行かない……
昼まではワイワイしていたが夜になってくると次第にテンションが下がってくる
楽しいよりも優先的に怖い怖いや気持ち悪いが侵食してくる
「やっぱり顔色悪いよ?吐きそう?」
部屋で話しかけてきた同室の男子
今は助けを呼べる状況じゃなかったからコクリと頷く
水を差し出されそれを少しずつ飲む
吐き気は治まってもぜぇぜぇと喉の奥から音が聞こえてくることに変わりなかった
「先生にはいってきたから、部屋戻ろっか、1人で帰れる?送っていこっか?」
今は楽しい修学旅行の時間
思い出はめいいっぱいに作って欲しいから着いてきてもらうのはやめた
廊下に出るとヒヤッとした空気と真っ暗で何も見えなかった
1歩足を進めるとヒタッヒタッとスリッパを履いた足に冷たさが伝わってくる
寒い……
部屋の近くまでは来れたもののそこの鍵を持っていなかったから中に入れず入口の前で縮こまっていた
カツカツと人が歩く音が聞こえる
こちらに近づいてくる足音が怖くて仕方なかった
足を抱えている手の力を強める
「あ、居た居た縮こまってどうした?なんか怖いことあった?鍵もってきたけど中入ろっか」
そう言ってガチャっと鍵を開けて中に入れてくれる
僕がこっちに行ってる時に鍵のことを思い出して持ってきてくれたと言う
優しいな……でも、戻らなくて、いいのかな……
「一人でいるの怖くない?俺怖いわw俺は怖いから残るよ、寝てな」
ポンポンと頭を撫でられてそのまま眠りにつく
怖いって言ってたのに暗がりの中で僕のことを助けに来てくれたのかな…優しい
じんわりと目が潤んでポカポカとした暖かい感覚がする
深夜くらいに目を覚ましたが彼はまだ起きていてほかの友達などは眠っていた
「お、起きて大丈夫か?キツくないか?」
質問攻めに合うが全て大丈夫で返した
初めの頃より落ち着き今はよく寝たという思いが強い
寝なくてもいいのか……?
「少しだけ遊ぼうぜ、スマホ持ってきたしさ」
その後は1時間くらいスマホで動画を見たりゲームをしたりして遊んでLINEも交換した
この学校に入ってから初めてLINE交換したかもしれないとウキウキした
その後は体調を酷く崩すことも無く修学旅行を満喫できた
学校を卒業する日も大学に入ったあとも彼とは仲良くしていたい
〜紅茶の香り〜
薔薇園の一角にある小さなテーブル
そこではお嬢様と御曹司達が紅茶やお菓子を楽しむフリースペース
学園の大半がそんなお金持ちの人達だから僕はものすごくうくのだ
「相変わらずいい匂いしてるね~楽しそう」
友達はティーパーティーをしている御曹司立ちを羨ましそうに眺めている
そこま、でかな……
堅苦しいブレザーを来てにこやかに笑っている人達
あの仲間に入るのは何千年も早いだろうな…
そんな妄想をする
堅苦しいものが苦手だからいつもパーカーかニットのジャンパーを着ているからやはり程遠い
「君達もどうだい?我々と一緒にお茶しないかい」
そう誘ってくれる人も初めはいたが恐れ多くて度々理っていた
少し後悔
「こんにちは、お話いいかな」
珍しく話しかけてくる御曹司とその取り巻き
え、は、はい……
なんだろ
カツアゲされるのかな
御曹司だからさすがにかつあげなんてされ、ないよね?
顔が真っ青になっていく気がしてフードを深く被る
「今度お茶会をするんだけど一緒にどうだい?お友達も」
いいんですかと言うように目をキラキラさせる友人を横目に冷や汗をかく
ブンブンと首を横に振り断る
「いやいや、いこうよ!絶対楽しいよ」
無理無理…正装とか、堅苦しすぎて無理……
ああいうのは正装で敬語で堅苦しくて息ができない
「別にそんなのは必要ないよ」
「えぇ、楽にしていてください、お近づきしたかったんですよ?」
そう言われて嬉しかったがやはり断った
友人は1人でルンルンに向かっていった
教室からその薔薇園の一角をじっと見ている
楽しそうにお嬢様や御曹司の人と話している友人はやはりフレンドリー
僕には絶対できない御業だ
「おや?行かなかったんですか、楽しそうにしていますよ」
ビクッと肩が跳ねる
ギギギッとカチコチな動きで後ろを振り向く
このクラスで1番の御曹司
話しかけてくるなんて恐れ多い……
ふらっと香る香水と風に乗ってくる紅茶や焼き菓子の匂い
「では、一緒にお茶はどうですか?教室で」
付け加えられた言葉は僕を逃がそうとしない
は、はい……
引きながらもその言葉にのる
「前々からあなたのこと気になってたんですよ」
その言葉にお茶を吹き出しかける
あの、あの御曹司、様が……僕に興味を…?
頭の上にハテナを並べている僕を見て楽しそうに微笑む御曹司様
心が飛び跳ねる感覚とドキッと言う感覚
紅茶と香水の香りが混ざった教室
落ち着く匂いに息をそっと吐く
紅茶を口に運び1口飲む
ふわっと香る紅茶の匂い
きっとこの一時は一生の思い出になるだろう
僕の心は彼に奪われた
あの紅茶の匂いを纏った彼に
〜愛言葉〜
「明日も晴れそう、これが合言葉ね」
明日も…晴れそう?
「うん!」
生まれた頃からずっと一緒にいる幼馴染
高校に上がってから教室の中では話さなくなった
女の子に囲まれていつもにこにこしている
黒髪メガネなのになんであんなにモテるのか…
なんでなんだ、俺はモテないのに
昼休みはいつもの場所
「合言葉は~」
明日も晴れそう
そう言うとガチャっと屋上のドアが開く
俺とアイツはいつもお昼休みは屋上で食べている
ここは合言葉がないと入れない
何故ならいつもアイツが扉の前に座っているからだ
何しても開かない
「今日はムスッとしてどうしたん?」
俺の頬をムニっと抓ってそう言う
おまえはなんれそんらにもへるんはよ…(お前はなんでそんなにモテるんだよ)
抓られている頬の痛みと心の痛みで目が潤む
びっくりしたように手を離し俺の頬を撫でる
「別にモテてはないと思うんだけど、そんなに彼女欲しいの…?」
悲しそうな顔して聞いてくるから欲しいなんていえなかった
ぐっと喉の奥に詰まらせた言葉を飲み込む
んな…ことねぇよ…
そこからはいつも通り
いつものように飯を食ってスマホで音楽を聴く
いつの間にか俺が寝落ちして時間が近づいたらアイツが起こしてくれる
「起きて、ほら」
方を揺すられる
ん……
ゆっくり目を開けてスマホを閉じる
重い体を起こして階段を降りて教室へ向かう
「夏目漱石が言った有名な言葉はなんだ」
先生が話す
俺はほぼ寝てたけどチョークを投げられて起きる
コツンと床に落ちたチョークが割れる
「起きなさい、ほら答えて」
なんの事だと目を擦ると
「夏目漱石が言った有名な言葉だよ」
隣の席のアイツが教えてくれる
……夏目漱石って誰っすか
クラスの奴らがいっせいに笑い出す
繊維は呆れた顔をして前の席の女子を当てる
【月が綺麗ですね】
その言葉は愛しているを遠回しに言った言葉らしい
帰り道に復習させられる
「ねぇねぇ、月が綺麗ですね」
は……?
月なんてどこにもと言おうとしたがハッと思い出す
【月が綺麗ですねは愛しているを遠回しに言った言葉だ、この言葉の他にも雨が止みませんねなどがある】
他にもあったような…それに、え?俺に言う?と困惑する
「返事はまた今度ね」
そう言って先に帰って行った
今日は屋上に行かない方がいいという気がしたから行くのをやめて教室で弁当を食べる
机に突っ伏してイヤホンを耳にはめて音楽を大音量で流す
【明日も晴れそうはあなたといると気分が晴れるということを意味して特別な存在だと言っていることになる】
音楽を聞いていると思い出す先生の言葉
あれ…明日も晴れそうって俺らの合言葉
寝ぼけた目で教室から出て階段を昇る
途中で思い出したように足を止める
ん……どうしよう、なんか気まずい
Uターンして階段をおりる
普通に歩いていたはずなのに足を捻って階段から落ちそうになる
ガクッと体を引っ張られる
「だ、大丈夫!?怪我は?!!」
え…あ、大丈夫だ、けど
足を捻ったなんて恥ずくていえなかったが、足をさすっていることに勘づいたのか俺の事を抱え保健室まで運び出した
え、えぇ…!?
恥ずくて死にそうだった
周りの視線は痛いし、あいつの心臓の音が聞こえてきて顔が赤くなる
「保健室の先生は…今日居ないのか」
ベットに運ばれ手当をされる
なんだか複雑で枕を抱えて顔を埋めてしまう
氷を取ってきて俺の足に当てる
「思い出した…?明日も晴れそうの意味」
そう言われやっとおさまった熱がまたフツフツと湧いてく顔が赤くなる
枕を取られ抱き寄せられる
「あれは、俺なりの愛言葉だよ…」
切なそうな声で話しかけてくる
風がなびくカーテンの裏
涙目の俺と耳を赤くさせたアイツが重なった