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〜理想郷〜
祈れば叶った
母の病気を治してくださいと祈った
姉を志望校に受からせてください
そう願った
何度も何度も手を合わせて願った
それは全て叶った
「神様が」「天の人が!!」そう言って姉や母は喜んでいた
父は元々いなかったから生き返らせてくださいと願った
でもその願いだけは叶わなかった
「死者は生き返らせることはできません、それを願えばそれ相応の代償が伴うでしょう」
神父様にはそう言われた
それでも、ニコリと優しく笑うお父さんの姿が、家族みんなでご飯を食べるところが懐かしかった
お願い…します……
淡い光の差し込むステンドグラスは色美やかに光っている
「私は止めました、それでどうなってしまっても私はお救いすることはできないでしょう」
それでもいい…だから、お願いします
そう願う
グラッと視界が揺らぎ当たりが白くなる
その反動で後ろに倒れかけるが神父様が抱えて下さり間一髪頭を打たなくてすんだ
「これがあなたのお迎えになるでしょう、私が天までお送り致します。どうかお達者で……」
それが僕の聞いた神父様の最後の声だった
急激な眠気に襲われて目を閉じる

【ニュースのお時間です、今日未明○○県○○市の廃教会で遺体となって10代の男性が見つかりました。
体に損傷はなく警察は自○と考えて捜索しております】

ようこそ理想郷へ
私はここの神父です
ここはあなたの理想を叶るための場所
信者になればあなたの願いは全て叶うでしょう
ですが、死者を蘇らせるのはおやめ下さい
それ相応の代償が伴われます
ご自分の命はお大事になさってくださいね
守りの使いがあなたを天界へとお見送り致します

10/31/2022, 1:54:36 PM