〜愛言葉〜
「明日も晴れそう、これが合言葉ね」
明日も…晴れそう?
「うん!」
生まれた頃からずっと一緒にいる幼馴染
高校に上がってから教室の中では話さなくなった
女の子に囲まれていつもにこにこしている
黒髪メガネなのになんであんなにモテるのか…
なんでなんだ、俺はモテないのに
昼休みはいつもの場所
「合言葉は~」
明日も晴れそう
そう言うとガチャっと屋上のドアが開く
俺とアイツはいつもお昼休みは屋上で食べている
ここは合言葉がないと入れない
何故ならいつもアイツが扉の前に座っているからだ
何しても開かない
「今日はムスッとしてどうしたん?」
俺の頬をムニっと抓ってそう言う
おまえはなんれそんらにもへるんはよ…(お前はなんでそんなにモテるんだよ)
抓られている頬の痛みと心の痛みで目が潤む
びっくりしたように手を離し俺の頬を撫でる
「別にモテてはないと思うんだけど、そんなに彼女欲しいの…?」
悲しそうな顔して聞いてくるから欲しいなんていえなかった
ぐっと喉の奥に詰まらせた言葉を飲み込む
んな…ことねぇよ…
そこからはいつも通り
いつものように飯を食ってスマホで音楽を聴く
いつの間にか俺が寝落ちして時間が近づいたらアイツが起こしてくれる
「起きて、ほら」
方を揺すられる
ん……
ゆっくり目を開けてスマホを閉じる
重い体を起こして階段を降りて教室へ向かう
「夏目漱石が言った有名な言葉はなんだ」
先生が話す
俺はほぼ寝てたけどチョークを投げられて起きる
コツンと床に落ちたチョークが割れる
「起きなさい、ほら答えて」
なんの事だと目を擦ると
「夏目漱石が言った有名な言葉だよ」
隣の席のアイツが教えてくれる
……夏目漱石って誰っすか
クラスの奴らがいっせいに笑い出す
繊維は呆れた顔をして前の席の女子を当てる
【月が綺麗ですね】
その言葉は愛しているを遠回しに言った言葉らしい
帰り道に復習させられる
「ねぇねぇ、月が綺麗ですね」
は……?
月なんてどこにもと言おうとしたがハッと思い出す
【月が綺麗ですねは愛しているを遠回しに言った言葉だ、この言葉の他にも雨が止みませんねなどがある】
他にもあったような…それに、え?俺に言う?と困惑する
「返事はまた今度ね」
そう言って先に帰って行った
今日は屋上に行かない方がいいという気がしたから行くのをやめて教室で弁当を食べる
机に突っ伏してイヤホンを耳にはめて音楽を大音量で流す
【明日も晴れそうはあなたといると気分が晴れるということを意味して特別な存在だと言っていることになる】
音楽を聞いていると思い出す先生の言葉
あれ…明日も晴れそうって俺らの合言葉
寝ぼけた目で教室から出て階段を昇る
途中で思い出したように足を止める
ん……どうしよう、なんか気まずい
Uターンして階段をおりる
普通に歩いていたはずなのに足を捻って階段から落ちそうになる
ガクッと体を引っ張られる
「だ、大丈夫!?怪我は?!!」
え…あ、大丈夫だ、けど
足を捻ったなんて恥ずくていえなかったが、足をさすっていることに勘づいたのか俺の事を抱え保健室まで運び出した
え、えぇ…!?
恥ずくて死にそうだった
周りの視線は痛いし、あいつの心臓の音が聞こえてきて顔が赤くなる
「保健室の先生は…今日居ないのか」
ベットに運ばれ手当をされる
なんだか複雑で枕を抱えて顔を埋めてしまう
氷を取ってきて俺の足に当てる
「思い出した…?明日も晴れそうの意味」
そう言われやっとおさまった熱がまたフツフツと湧いてく顔が赤くなる
枕を取られ抱き寄せられる
「あれは、俺なりの愛言葉だよ…」
切なそうな声で話しかけてくる
風がなびくカーテンの裏
涙目の俺と耳を赤くさせたアイツが重なった
10/27/2022, 1:22:24 PM