Clock

Open App

〜紅茶の香り〜

薔薇園の一角にある小さなテーブル
そこではお嬢様と御曹司達が紅茶やお菓子を楽しむフリースペース

学園の大半がそんなお金持ちの人達だから僕はものすごくうくのだ
「相変わらずいい匂いしてるね~楽しそう」
友達はティーパーティーをしている御曹司立ちを羨ましそうに眺めている
そこま、でかな……
堅苦しいブレザーを来てにこやかに笑っている人達
あの仲間に入るのは何千年も早いだろうな…
そんな妄想をする
堅苦しいものが苦手だからいつもパーカーかニットのジャンパーを着ているからやはり程遠い
「君達もどうだい?我々と一緒にお茶しないかい」
そう誘ってくれる人も初めはいたが恐れ多くて度々理っていた
少し後悔

「こんにちは、お話いいかな」
珍しく話しかけてくる御曹司とその取り巻き
え、は、はい……
なんだろ
カツアゲされるのかな
御曹司だからさすがにかつあげなんてされ、ないよね?
顔が真っ青になっていく気がしてフードを深く被る
「今度お茶会をするんだけど一緒にどうだい?お友達も」
いいんですかと言うように目をキラキラさせる友人を横目に冷や汗をかく
ブンブンと首を横に振り断る
「いやいや、いこうよ!絶対楽しいよ」
無理無理…正装とか、堅苦しすぎて無理……
ああいうのは正装で敬語で堅苦しくて息ができない
「別にそんなのは必要ないよ」
「えぇ、楽にしていてください、お近づきしたかったんですよ?」
そう言われて嬉しかったがやはり断った

友人は1人でルンルンに向かっていった
教室からその薔薇園の一角をじっと見ている
楽しそうにお嬢様や御曹司の人と話している友人はやはりフレンドリー
僕には絶対できない御業だ
「おや?行かなかったんですか、楽しそうにしていますよ」
ビクッと肩が跳ねる
ギギギッとカチコチな動きで後ろを振り向く
このクラスで1番の御曹司
話しかけてくるなんて恐れ多い……
ふらっと香る香水と風に乗ってくる紅茶や焼き菓子の匂い
「では、一緒にお茶はどうですか?教室で」
付け加えられた言葉は僕を逃がそうとしない
は、はい……
引きながらもその言葉にのる

「前々からあなたのこと気になってたんですよ」
その言葉にお茶を吹き出しかける
あの、あの御曹司、様が……僕に興味を…?
頭の上にハテナを並べている僕を見て楽しそうに微笑む御曹司様
心が飛び跳ねる感覚とドキッと言う感覚

紅茶と香水の香りが混ざった教室
落ち着く匂いに息をそっと吐く
紅茶を口に運び1口飲む
ふわっと香る紅茶の匂い
きっとこの一時は一生の思い出になるだろう
僕の心は彼に奪われた

あの紅茶の匂いを纏った彼に

10/27/2022, 1:39:41 PM