水白

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8/29/2024, 2:52:56 PM

○○PP ○Nグランプリお題:
『「言葉はいらない、ただ・・・」を使った例文を作るとしたら?』


・P.N.エヌ さんの回答:
『謝罪の言葉はいらない、ただ・・・誠意を見せてほしいんですよ』

「初手からエグいねえ」
「うーん、シンプルにこわい!」
「言ってるのはやくざ屋さんかなあ?」
「いえ、前の職場で上司が言っていた言葉です」
「100%ブラックじゃん」


・P.N.はくまいうまい さんの回答:
『言葉はいらない、ただ(・・・)と(・・・)が合えば通じ合えるから!』

「「…?」」
「……あれ、無反応?」
「いや…どういうことですか?」
「ほら、よく見て!(・・・)の部分!」
「点が3つ…だねえ?」
「そう!顔に見えてくるよね!」
「見えてきませんが?」
「えー!?ほら、カッコの中に、目、鼻、目…って並んでるように見えてくるよ!」
「う、うぅん…がん、ばれば…?」
「つまり、目と目が合えば、言葉はいらないって意味だよ!」
「自分で解説してしまいましたね」


・P.N.♡むくぴょん♡ さんの回答:
『値引きや値段交渉の言葉はいらない、ただ・・・すべてタダだ!持ってけドロボー!!』

「なんとかお題の意図から離れようと奮闘してキャラ変わってますよ」
「だってぇこういうのってぇ、想定されてる答えと真逆だったり、予想外の回答をしたくなるんだもん!」
「ただ・・・は、接続詞じゃなくて、無料って意味で使われてるんだね」
「ネタを解説されるのって恥ずかしいからやめてもらっていい?
ほら、昔『うってかわって〜』を使って例文を作りなさい、みたいなネタあったでしょお?それを参考にしたんだあ」
「うわっ懐かしい!」
「じゃあ懐かしいついでに!」


・ 貴方 さんの回答:

                    』

「さぁ回答を、どうぞ!」




【言葉はいらない、ただ・・・】

8/28/2024, 3:09:09 PM

「あっ」

突然の君の訪問は、いくつになったって慣れない。


*****

「いじっちぃぃ!!助けて助けてたすけて〜!!」
一人黙々と自習をしていた伊地知のいる教室に駆け込んできたのは、一つ上の先輩だった。
「くっ、来曲先輩!?どどどうしたんですか!?」
救助を求める言葉に、思わず声と椅子がひっくり返る。

「ぼくらの教室にぃ!襲来したの!……襲来?というよりセールス?」
「は、え?」
「訪問販売…押し売り?みたいな?今日ななくんもはーくんもいなくてぼくひとりなのにぃ…!」
「えっ……な、何がでしょうか?」
珍しくパニック状態の来曲は支離滅裂で、伊地知には何かが教室に侵入したらしい、ということしかわからない。
しかし、要塞レベルのこの学校に一体何が入れるというのか。侵入できてしまう、ということはそれ以上の……
伊地知は自分の想像に体を震わせる。

が、椋の話の続きで流れが変わった。
「いきなり求愛してきてぇ!!」
「は、はいィ!!?」
「びっくりして逃げてきたのぉ!助けていじっち!!」
「いや、」
「とりあえず来て!」
「ええええまっ待ってくださ…あっ鉛筆…」
意外にも力強く腕を引っ張られ、転がった鉛筆も拾えないまま教室から連れ出された。


学年が変わろうと代わり映えのしない教室の前。
特に何かが起きているようには感じない、いつもの景色。
「…扉は閉まっているようですが。……この中にいるんですか?」
「いるよぉ!!だって聞こえるじゃん!」
「聞こえる…?」
耳を澄ましても物音などは全く聞こえない。
窓を開けているのだろうか、自分の教室にいた時より蝉の鳴き声がずいぶん大きいくらいで、特に変わった様子はないし、気配もない。
「何も聞こえませんが…」
「うそぉ!!だってこんなにおっきい音でミンミンミンミン言ってるじゃぁん!!」
「………ミンミン?」

突然の訪問者の正体は、蝉、というオチに、伊地知は肩の力がガクリと抜けた。
教室の前方、黒板の上に掲げられた校訓の額縁に、大声で鳴く蝉が止まっている。
来曲の言い方があまりに紛らわし過ぎるのは、おそらく、否、絶対わざとだ。
口には出せないが、恨めしさを目に乗せて後ろを振り返る。
伊地知を楯にして肩にしがみつく来曲には上手く伝わったようで。
「だってぇ、あぁ言う言い方したら来てくれるかなって思って」
しれっと言い訳を返される。
こういうところは、二つ上の先輩に似ているなと現実逃避していると、来曲に肩を揺さぶられ、現在に戻ってくる。
「ね、セミ追い出してくれる?…掴める?」
「えっ、それはちょっと」
恐ろしい侵入者に比べれば大したことはないが、蝉だって極力関わりたくはない。
「何か、長いもので飛ばせて、窓の方に誘導しては?」
今二人がいるのは、蝉から一番遠い対角線の、後ろの扉の前。
ななめ後ろのロッカーに掃除用具があるはずだ。
箒の柄などを使えば、と伊地知はアドバイスをしてみるが、猛反対を食らう。
「えー!あいつ飛ぶ時なぜか人の方に向かって飛んできがちなんだよぉ!?しかもセミっておしっこかけてくるらしいしぃ!?こっち来たらどうするのぉ!絶対やだぁ!!」
ゴホッと咽ながら無駄に詳しい蝉情報を披露して嫌がる来曲をなだめていると、なんの前兆もなく、ミン……と突然鳴き声が止まった。
なぜか2人も動きを止めてしまう。
蝉の挙動をじっと見つめること30秒。

飛んだ。
威嚇かと思うような音を立てて、しかもこちら目掛けて。
「ぴゃあああああ」
「うわあああああ」
さながらゾンビに見つかった生存者のごとく、扉をガタガタ揺らしながら勢いよく開け放ち、廊下に転がり逃げる。
が、来曲が扉を開けてすぐ、黒い壁にぶつかった。
その勢いで跳ね返り、それに巻き込まれる形で伊地知も尻もちを付く。
「おい、うるさいぞ。何をしている」
壁……ではなく、ガタイの良い教師の胸板を呆然と眺めていると、そこに追い掛けてきていた蝉が飛んできて。

「「あっ」」


*****

その後、しれっと蝉を掴んで窓から逃がした先生―夜蛾に説教をされたなぁ、と伊地知は懐かしく思う。
なぜそんな回想をしているのか。
それは、あの時のように、突然の訪問に見舞われているからだ。今、現在。

車内に響き渡る大音量の鳴き声。
外に出ようと動こうものなら、その反動でこちらに飛んでくるかもしれない。あの時のことがトラウマとして蘇る。
音の方向的に後部座席のどこかにいるのは間違いないのに、バックミラーで様子を伺ってもどこにいるのか発見できず、ますます恐怖心が煽られる。

もっとひどい目になんて山ほど遭っているのに、どうして蝉ごときに。
あの日、来曲に思ってしまったことが、ブーメランとして己に返ってきて、心の中で来曲へ謝罪する。
そして一言、情けない声が漏れた。

「たすけてください夜蛾学長ぉ…」



【突然の君の訪問。】

8/27/2024, 3:54:23 PM

青年は、雨の中に佇んでいた。
傘を差さない雨の日は、想像以上に静かだった。
頭を、肩を、濡らしていく雨は、シャワーとは少し違った感触で不思議だ。
スラックスは肌に張り付いて、なんなら下着にも雨が浸透しているだろう。もはや境目もわからない。
足踏みをするとぐしゃぐしゃと鳴る水音に、幼児用のプープー音の鳴る靴を思い出して、青年が笑いそうになっていると、前から男が歩いてきた。
こんな大雨の中だ、他には誰もおらず、必然と目が合う。

「こんにちは」
「こんにちは」
晴の日だろうと雨の日だろうと挨拶は大切。同じ考えの持ち主のようで少し親近感が湧く。
「どうかされました?」
濡れ鼠になっているのに逃げも隠れもしない青年を不思議に思ったのだろう。男は尋ねる。

「あぁ、これは、子どもの頃やってみたかった事をやってるだけなんですよ」
「やってみたかったこと?」
「はい。やってみたかった事その16の『雨の中佇む』。本当はその3の『台風の中佇む』をやってみたいんですが、なかなかいい台風が来ず…とりあえず派生してその16を体験中です」
「なるほど…」
男は一つ、こくりと頷き、真顔で続ける。
「それは奇遇ですね。実は私も雨を浴びに来たんですよ」
「あっ、だからあなたも傘も差さずに雨の中歩いてらしたんですね」
そう、男も青年に負けず劣らずびしゃびゃになっていた。
安物そうには見えない黒いスーツも革靴も、見るも無惨。

「さっきまで風呂に浸かっていたんですよ」
「お風呂に?」
「はい、服のまま。やってはいけないと思い込んでいたことにチャレンジしようかと思い」
「まぁ、それは素敵ですね!」
「思いの外気持ちが良く、いつ風呂から上がろうか考えていたら、雨が降ってきたので。どうせなら全身ずぶ濡れになってやろうと」
男は水を含みすぎて萎れた前髪をかき上げる。
「本当に奇遇ですね!まさか同じお考えの方にこんなところで会えるなんて嬉しいです」
青年は前髪を伝ってきた雨が目に入りそうになり、びしゃびゃの手で拭う。

「あの…実は、本当はその7をやるために今日は出てきたんです。もしよかったらご一緒しませんか?」
びしゃびゃの手をそのまま組んで、青年はちらと男を見やる。
「子どもの頃やってみたかった事その7、ですか?」
「えぇ、その7は『夜の学校のプールに忍び込んで満喫する』です」
「…だからその大きな浮き輪を持っていたんですね」
実は、青年は雨に佇む傍ら、オーロラ色の下地にピンクの水玉というド派手でドでかい浮き輪を方肩に引っ掛けていた。ここにツッコミ役は存在しない。

「しかし、忍び込む、ですか…」
浮かれた浮き輪を見ても崩れなかった男の表情が、思案に変わる。
「あっ、忍び込む、と言っても、ちゃんと許可はいただいているんです。人様に迷惑をかけるのは本意でないので」
青年は両手を左右に振り、説明を続ける。
「ちょっと手助けをしたことがある学校さんにお願いをしたら、ちょうど昨日で水泳指導が終了したそうで。ちゃんと塩素も入れておくから、なんなら今日昼から使ってくれと言ってくださったんですが。
ぼくが入りたいのは夜の学校のプールだったので」
「それは――素晴らしいですね」
思案顔が晴れて真顔に戻る、いや、少しだけ微笑んでいるようだ。
「それなら、やってよい『やってはいけないこと』だ」

「でもやりたかったことは『忍び込む』なので忍び込む体で行きます。…もちろん鍵もお借りしているんですけどね」
「では、お言葉に甘えて、お供させてください」
「やった!こちらこそありがとうございます」
勢いよくお辞儀をして飛んだ水滴が、男のスーツに付いた金の天秤柄バッジにぶつかり、弾けた。

「私、着衣泳好きだったんですよ」
「実はぼく、着衣泳やったことがなくて」
「じゃあまずは実践ですね。私がやり方をお伝えしますよ」
「ありがとうございます!助かります」


吹っ切れた青年と、ぶち切れた男。
頭の大事な糸が切れた二人を見ていたのは、俯いて雨に佇む向日葵だけだった。



【雨に佇む】

8/27/2024, 9:02:03 AM

一コマ空きを挟んでから、必修のゼミ。
急遽の休講だったせいで、特にやることも思い付かない私は、大学内のコンビニで甘いお菓子を買って、重い足を動かし一足先にゼミの教室へ向かっていた。

授業をよく受ける大規模な教室が多い第一棟から少し離れた特別棟、こじんまりした部屋がいくつか並ぶ3階の一番奥。そこが毎回必修ゼミの教室だ。
早めに到着している同志がいないか期待していたが、扉を開けた先は、ガランと静まり返っていた。
「…ちぇ」
せっかく暇潰しができると思ったのに。

別に席が指定されているわけではないが、毎回使っている私の固定席に座りながらスマホを取り出そうとうつむくと、机の中になにか入っているのに気付く。
「あれ?」
今年この教室を使っているのはこのゼミだけのはず。
そしてこの席は私の席といっても過言ではない。
ということは…私の忘れ物?

引き出しから見えた影を取り出すと、それは日記帳だった。
上品さが香る濃い赤色のベロア生地に、「Diary」と金色の刺繍が施されている左綴じの日記帳。
私の日記帳だ。
なんとなく見返してみようか、とさっき買ったお菓子の袋を開けながら、パラパラと捲る。

−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
○月□日(△)天気:雨
天気予報では晴れだったのに、夕方、突然の大雨で新しくおろしたばっかのカバンがびしょびょになった、最悪。
てかゲリラ豪雨と夕立の違いってなに?
−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−

そうそう、先週ゲリラ豪雨に遭遇して散々だったんだ。
結局2つの違いについては調べていない。
ページを捲る。

−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
□月△日(●)天気:晴
お気に入りのパンプスのヒールが折れた。こんなドラマみたいな折れ方ってマジでするんだ。一周回って笑う。
代わりにセールで夏用の靴買うか、早めに秋靴買うか迷うところ。
−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−

片方だけボキッと根元からいってしまったので、泣く泣く捨てたパンプス。
明日は授業終わるの早いから靴見に行こうかな。
またページを捲る。

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△月●日(■)天気:晴
✕✕のSNSに私の悪口が書かれてた。コメ付けてやったら私のことじゃないって言ってきたけど、どう見ても私のことじゃん。ムカつく。私も✕✕のことってわかるように呟いてやったし。
あーあ、明日のゼミで✕✕に会うのだる。
−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−

そうだ、なんで忘れてたんだろ。だから今日ゼミの教室へ向かう道のりもなんか憂鬱だったんだった。
でもアイツなんかのせいでモヤモヤするのもムカつくし。
腹いせにチョコ菓子を口に投げ込んで思いっきり噛み砕く。
「……おいしくない」
次のページに、早々と今日のことでも書こうかと右のページに目をやると、そこにはすでに文字が並んでいた。

−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
■月▲日(●)天気:曇
授業は休講になって時間無駄にしたし、買った新作のお菓子はおいしくないし、良いことなんもない。
最近悪いことばっかでやだなー。
−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−

今日の日付。
あれ?なんでもう書いてあるんだ?
私いつの間に書いた?でもこの日記帳はさっきまで机の中にあって。
でもこれは間違いなく私の筆跡で。

「…え」
改めて自分の字をじっくり見ていると、裏側からうっすら文字が透けていることに気付く。
次のページ、ということは、明日の日記、ということ。
なぜ未来のはずの、明日のことが書かれている?
一体何が書かれているのか。
私は、次のページを――――


「だーめ」
「ひっ!?」
捲ろうとした指ごと日記帳を押さえられ、心臓が跳ねる。
顔を上げると、いつの間にか見知った人物が立っていた。

「びっ…くりしたぁ!!椋くんいきなり何!?」
「何回か声かけたんだよお?」
同じ学部の、大学一かわいいと有名な“男の子”の椋くん。
心臓がバクバクしてるせいか、今日は一段と浮き世離れして見える。

「ってか、どーしたの?椋くんこのゼミ取ってないよね」
私の質問には答えず、椋くんは日記帳をパタンと閉じて、何かを閉じ込めるかのように押さえる。
「この先は、見ない方がいいと思うよお?」
「え?」
白魚の手と、その下にある日記帳の深紅がやけに目を引く。
「いやでもコレ私の日記帳だから、」
そんなの私の勝手じゃん、という言葉を遮った椋くんの一言で、私は凍りついた。

「でもキミ、日記なんて付けてないでしょ?」



【私の日記帳】

8/24/2024, 4:39:58 AM

任務が終わった後に残ったのは、一時的な閉鎖のため人っ子一人いない海岸と、テトラポッド、その先に光るオレンジ色の海に手が届きそうな夕日だけだった。

どこか懐かしくも、胸が締め付けられるような光景。
太陽の眩しさに目を細めながら、椋が口を開く。
「こういう時って、海のバカヤローって叫ぶんだよね?」
「情緒どこにやったんですか」
「うーん、実際やっている人は見たことがないよ!」
灰原は素早いレスポンスを心掛けたが、七海のツッコミの方が一足早かった。
「たしかにそうなんだけどぉ…一回やってみたかったんだよねぇ!誰もいない今がチャンスでしょ!」
ニッと歯を見せて笑う椋は、両手を大きく広げ息を吸い込み、海に向かって叫ぶ。

「✕✕✕のばかやろーーーー!!!!!」

「ふぃー…、思ったよりスッキリするかもぉ!」
「海のバカヤロー、じゃないの!?」
「うん、だって海にそこまでの恨みないもん。叫ぶ場所を提供してくれてる海へ罵声を浴びせるのもひどくない?」
「…たしかに。もっともだね」
なんの反論もない椋の意見に頷いていると、隣から大きく息を吸い込む音が聞こえて、

「労働はっっっ!!!クソだーーーーー!!!!!」
七海も叫んだ。

「えっええええ!?な、七海が叫んだ!?!」
こういう時の二番手は大抵灰原で、なんなら半分の確率で七海は不参加のまま終了するのがお決まりだったので、思わず驚いてしまう。
「ハァ…意外と体力持ってかれますね」
普段声を荒げない七海にとっては、大声を出すだけでもHPが減るらしい。
そもそも満身創痍ですでに残りHPが真っ赤だろうし。
逆隣から、遠い目をして椋が囁く。
「ななくん、今日で十連勤の上、ここ5日仮眠しか取ってないって言ってたから…」
「あぁ…」
通りで壊れている訳だ。
灰原を思わず遠い目になりかけるが、まだ自分だけが叫んでいないと気合いを入れる。

「よーし俺も!えーっと……

まっしろなーー!ほっかほかのはくまーーーーーい!!!」

「ふははっ!えー?なぁにそれ?」
「くーくんが、海へ吐き捨てるの悪口ばっかりでひどいって言ってたから、たまにはおいしいものがいいんじゃないかなーって!」
くぅ、と隣から聞こえた控えめなお腹の音が、波音でかき消される。
「…私たちもほかほかの白米食べに帰りますか」
「そだね!お腹空いてきたあ!」
「あ、じゃあ俺行きたいお店あるんだ!釜で炊いたごはん出してくれる店なんだけど!」
「いいですね」
「はーくんのせいでもう白米の口になちゃった」

海岸を後にしながら振り返ると、海は先ほどと何も変わらず、キラキラと輝いている。
これだけ広大で、今まで無駄な罵声を受け止めていた海のことだ。少しいい気分になってくれたらいい、なんて考えても許してくれるだろう。

もうすぐ、夕日がしずむ。



【海へ】

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