SHADOW (めちゃくちゃ不定期)

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5/3/2024, 11:24:05 AM

二人だけの秘密

 ー数十年前ー
「ねぇ!約束しよ?」
               『ん?何の約束?』
「将来私の事忘れないでね…」
                 『ん?いいよ』
「約束だよ…絶対忘れないでね…」



 「ん…もう朝か…起きたくねぇな…」
と言いながら携帯のアラームを止める。
時間を見ると8:00を表示していた。暫く思考停止をしていたが、今日は自分の家に友人が集まる日だった。
「やばい…急いで着替えないと…!」と慌てて着替え朝食を済まし、身支度を整えた。
色々な作業が終わったのと同時に、玄関のチャイムがなった。
慌てて玄関の戸を開けると、見知らぬ女性が立っていた。『あの…×××って人知っていますか?』と自身の名を言っているが、少し怪しいと思い知らないと答えた。すると女性は悲しそうな表情を浮かべて『すみません』と言い帰って行った。
俺はその後ろ姿を呆然と見送った。

 俺が突っ立ていると後ろから友人達が「さっきの美人のネーチャン誰だよwもしかして彼女w?」と茶化してきたが、知らんと一喝した。友人達はつまらなそにしていたが、俺は今もずっと考えている。さっきの女性はなんで自分の名を知っていたのかと。
そんな事はどうでも良くなって、友人達を自宅に上げた。
遠くから女性がこちらを見ていたことも知らずに…。


 「やっぱり…覚えてないもんね…」と女性は悲しそうにロケットペンダントの写真を見た。
少し古い写真には、男の子と女の子のツーショットが写っていた。女性はそっと写真を撫でた。
「そうだもんね…だって私は小学生の時に海外に転校して以来、連絡なんて取れなかった。今みたいにスマホと持ってなかったから、手紙も何日後とかのが届くからいつの間にか辞めちゃった。」
女性は涙を流しながら、昔転校する前に男の子と一緒にタイムカプセルを埋めた公園に向かい地面を掘り返して、タイムカプセルを開いた。
「懐かしいな…
“二人だけの秘密”って言って埋めたよね…」
女性はその場に踞り、声を殺して泣いた。

5/2/2024, 11:21:38 AM

優しくしないで

 やっぱり諦められないよ。
本当はお兄ちゃんより、誰よりも好きだった。
だけど、あの人が選んだのはお兄ちゃんで、私のことなんて兄の妹でしか見ていなかった。
いつも優しく接してくれるから、好きなのかなって勘違いしてしまった。
だから、優しくしないでよ。兄と接したいからって、優しく接しっても嬉しくない。
分かっていたはずなのに、僕から溢れ出す涙は止まらない。
いや、本当はあの人に止めて欲しかったのかも。
家の中で泣いてしまった。止める人なんていない。
お兄ちゃん以外の家族なんてもういない。互いに好きな人と蒸発してしまったから。
こんな広い家で一人で泣くって、なんて無様んだろうか。本当に情けない。お兄ちゃんがいないと何も出来ない。分かっていたはずなのに、認めたくない。
自分の大事な人がいなくなっていく感覚が…。
だんだんと意識が遠のいていく…。
最後に見えたのは、黒色の服が似合う人しか見えなかった。
嗚呼結局はお兄ちゃんでもなく、あの人でも無いんだな……。

 
 目が覚めたらベットの上にいた。
起き上がって周りを見渡しても誰もいない。
混乱している頭を整理していると扉が開いた。
入って来たのは、お兄ちゃん達のリーダー的存在の人だった。(え?なんでいるの…。)と困惑していると、彼は話し始めた。

お兄ちゃんは結局あの人と付き合ったらしい。
だけど、お兄ちゃんは僕が好きだったのを知っていた。だから最初は付き合うことに躊躇していた。でも好きって気持ちには叶わなかった。そして付き合った。だけどやっぱり、僕のことが脳裏に過ぎった。
帰って報告したい気持ちもあるけれど、僕に嫌われたく無いから、彼に代わりに行ってもらった。
彼が家に着いたら泣き声が聞こえて、何か言っているのが聞こえたと思ったら、倒れる音が聞こえて急いで駆け寄った。

最後まで聴き終わるとなんとなく自分が惨めにしか思えなかった。僕が言っていたことも聞かれたし、好きだったってことも知られてしまった。
僕が俯いていると、彼は僕の顎を掴み自身と目を合わさせて言った。
『そんなに彼奴の事が忘れられないんだな?なら俺と付き合うか?彼奴以上に君を愛すぞ。彼奴より俺の方がいいと言えるぐらい、ドロドロに愛してやるぞ。』
そんなことを言われた僕は恥ずかしくって、顔を背けた。彼は笑っていたけれど本気らしい。
なんとなく僕は彼と付き合えば幸せになれると思った。そして彼に言う。
「最後まで愛してくれる?優しくしないでね?そういう哀れみの言葉はいらないから。取り消すなら今のうちだよ?」そう僕が言うと彼は口角をあげて言った。
『俺は欲しいものは絶対に手に入れたい男だ。そう簡単に手放すわけ無いだろw』
そう言った彼の腕の中に収まり彼に言った。
「じゃぁ。一生かけて僕の事アイシテ?」
『勿論だ。絶対に離すわけない。』
そう言う彼らは幸せそうだった。

5/1/2024, 11:32:28 PM

カラフル

 俺がいつも見ている世界は、モノクロだ。
何を見ても白黒の世界だ。映画、趣味、動画…。何をしても、色なんてついていなかった。
別に面白く無いとかでは無いんだけど、なんとなくつまらなかった。

 ー数日後ー
スマホにメッセージが届いた。
『今度久しぶりに会わない?皆会いたがっているよ?俺も久しぶりに会いたいよ。時間あれば、リーダーの家に集合ね。よろしく。」
と俺が密かに、想いを寄せている人からだった。
メッセージを見た後、少し考えてから返信した。
『そうだね。暫く皆に会ってなかったから、行こうかな。仕事も今は落ち着いているし、今度有給取って行くよ。』と返信すると、『やった!皆に言っとくね!』と帰ってきた。
なんとなく彼の喜ぶ顔が浮かんで嬉しくなった。
だけど、同時に悲しみも出てきた。
俺は彼のことが好き…だけど同性愛なんて気持ち悪いに決まってる。彼は皆にネタでゲイって言ってるだけで、本当は嘘に決まっている。彼はただ単に楽しんでいるだけで、俺のことなんてただの友達にすぎない。
勝手に苦しんでてなんて情けないんだろうか。皆に会いたいのは本当の気持ちだけど、彼の顔を見たら気持ちを押し付けてしまう。俺はなんて最低な人間だろうか。
そう思いながら、メッセージを再度確認した。友人同士のグループチャットには、彼が俺のことを話していた。俺は入っていながらもそこまで、発言しない。
だからただの閲覧者にしか過ぎない。
彼はやっぱり楽しそうだった。

 ー当日ー
いつも以上に服装に悩んでいる自分がいた。
皆からはいつもオシャレで羨ましいと言われるが、今だけは何を着て行こうか、悩み過ぎている。
刻々と時計は時間だけを刻んでいく。早くしないと間に合わないのにってより焦る。
悩んでいると、部屋の戸が開いた。
振り返ると立っていたのは、妹だった。
妹は俺の悩んでいる姿を見ると、ニヤニヤして言った。
「お兄ちゃんw何悩んでるの?もしかしてぇ、デート?www」と茶化してくる。
俺が「違う」と即答すると、妹はつまらなそうな顔をしていた。
「久しぶりに皆に会いに行くけど、服が決まらないだけなんだ。」と言うと、妹は目をキラキラさせていた。なんとなく俺は良からぬ事を考えているのかと思っていると、妹は俺の方にやって来て言う。
「じゃぁ、僕にやらせてよ。服選ぶの。」
俺は予想外の事を言う妹に戸惑っていると、妹は服を選び始めて、あっという間にかっこいい感じに仕上げた。
「はい。これ。お兄ちゃん着て。」と言って俺の方にずいっと服を押し付けて来た。
俺が着替えていると妹は言った。
「せっかく好きな人に会うってのに、ダサい格好で行かせられないっしょ。」と言って来たので慌てて妹の方を見た。妹に好きな人のことなんて言っていないのに。
妹は「何年兄妹してると思ってるの?お兄ちゃんのことなんてお見通しだよ。別に恋人が出来ないからって恨んでるわけではないよ。お兄ちゃんが同性が好きでも、異性が好きでも僕は態度を変えないよ。お兄ちゃんが幸せになるんだったら、それが僕にも幸せってこと。今日は二人きりになったら、告白するんだよ?フラれても、僕が慰めるし、次の恋も応援するから行っておいで?」
そんなこと言う妹に感動していると、妹は玄関まで俺を押して行った。玄関まで行くと妹は俺に「さぁ行ってら!」と言ったので、俺は「行って来ます。」と言って家を後にした。














僕がお兄ちゃんが行ったことを確認すると、スマホを開いて、例の人に電話した。
「お兄ちゃんの事よろしく。」
電話の向こうで笑い声が聞こえた。
『はい。君のお兄さんはこちらで幸せにします。』
暫く会話した後電話切って、その場で伸びをした。
「お兄ちゃん。今見てる景色は色づいてる?カラフルな世界?そうなら嬉しいよ。これこそ自慢のお兄ちゃんだね…。あの人が選んだのは僕じゃなくて、お兄ちゃんの方だったね。」
僕の頬に冷たい雫が垂れた。

5/1/2024, 2:00:18 AM

楽園

 時は戦争時代。
私は殺し屋をやっていた。
表向きは情報屋を営んでいるが、裏では殺し屋をしている。私は気づいたら有名な殺し屋になっていた。
情報屋だから、色々な情報が入ってくるため、そこで私の情報を知った。

 ある日のことだ。
何時ものように日中情報屋の仕事をしていたら、一人の男が私の元に訪ねてきた。
「いらっしゃいませ。どんなん情報が欲しいですか。」とお決まりのフレーズを口にすると、男はフードを脱ぎ言った。
『ここらで有名な殺し屋の情報はあるか?』と言った男はこの国の総統だった。
私は驚いたが、お客様の頼みを断ることは出来ないため、身バレをしないように話した。
一通り話し終えた辺りで、私は相当に質問をした。
「申し訳ないですが…何故総統直々にいらっしゃたのですか…?」と聞いてみたら、総統は暫く考えた後答えた。
『いや…。特には無いが、有名な殺し屋だ。どんな奴か知りたかったし、運が良ければ、こちらの軍に勧誘しようかと思ってなw』と笑いながら言った。
私は暫くポカンとしていた。
(この総統大丈夫か?)
『むっ。私は大丈夫だが?』
「え?私口に出してましたか?」
やばいと思っていたが、大丈夫そうだった。

 そういえば、情報屋をやっているから総統や軍の情報も知っているが、凄い忙しいと聞いている為、書類とか仕事はやらなくていいのかと聞いてみた。
案の定今目の前にいる総統は、目線を逸らした。
暫く無言の時間が流れたが、私は意を決して言った。
「あの…黙っていましたが、多分貴方が探している殺し屋は、私だと思います…。」
そういうと、分かってましたと言わんばかりに総統は笑顔で言った。
『知っているぞ。だから我はここに来た。だからこの国を楽園にしたいが為、お前が欲しい。我の仲間になって欲しい!』と言われた。
私は暫く考えたが、この人が造る楽園が見たいから、この人について行こうと思って、答えを言った。

「はい。貴方に付いて行こうと思います。」









 数十年後…
 この国は本当に強くなった。
《負け知らず》と呼ばれるくらいの国になった。
本当にこの国に暮らす人からは、“楽園”と呼ばれるくらい住みやすいと言われた。

4/30/2024, 8:11:14 AM

風に乗って

 どこからか、歌声が聞こえる。
風に乗って、俺が居る場所まで聞こえてきた。
俺はその声に恋をした。
透き通った綺麗な歌声。
俺はその歌声を頼りに、声の持ち主を探した。
学校や公園、ありとあらゆる場所で探した。
だけど、手がかりすら見つからなかった。
少し悔しかったのを覚えてる。

 とある日のことだ。
授業をサボって、屋上で昼寝をしていた。
そしたら、またあの歌声が聞こえてきた。
微かに聞こえるあの歌声。
俺は歌声が切れる前に、見つけないと思っていた。
どこだろう。そう思っていると、向かいの病院の屋上で、車椅子に座っている女の子が歌っていた。
多分これが俺の初恋だったんだろうな。
俺はその子と話がしてみたかった。
俺は次の日から行動を始めた。

 俺は何時もの通りに屋上に向かった。
病院の屋上に、あの子がいる事を確認して、カバンから紙とペンを取り出した。
そして紙に文字を書いて、その紙を紙飛行機の形にした。
俺は出来上がった紙飛行機を持ち、あの子がいる方に狙いを定め、あの子に届くように願いを込めて飛ばした。

 紙飛行機は風に乗って、あの子のいる場所に届いた。
紙飛行機は意思を持っていたように、あの子の足元に落ちた。
あの子は、紙飛行機を拾い開いていた。
あの子が紙を見ている時、俺は鼓動が止まらなかった。
あの子はクスクスと笑っていたけど、ポケットに入れてあったペンを取り出し紙に何かを書き込んで、丁寧に紙飛行に戻し、俺の方に飛ばした。
俺は急いで紙飛行機を拾い、開いてみた。
紙に書いてあった文字は…。

「貴方に惚れました。付き合ってください。」

『勿論。宜しくね。』

俺は小さくガッツポーズをとった。
向こうであの子は微笑んでいた。

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